2013 Fiscal Year Research-status Report
湖沼に蓄積する難分解性溶存有機物の藻類影響評価試験法の開発
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24510044
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Research Institution | 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター |
Principal Investigator |
早川 和秀 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 専門研究員 (80291178)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 裕子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (40305694)
田中 仁志 埼玉県環境科学国際センター, その他部局等, 研究員 (40415378)
藤嶽 暢英 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50243332)
丸尾 雅啓 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80275156)
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Keywords | フルボ酸 / 琵琶湖 / 急性毒性 / 蛍光スペクトル / COD |
Research Abstract |
昨年度より引き続き、緑藻類クラミドモナスを用いて,水中に蓄積された難分解性有機物が藻類に及ぼす影響について,生体への作用機序に着目した検討を行った。クラミドモナス(Chlamydomonas reinhrdtii)を琵琶湖水フルボ酸の各濃度に曝露させて1,4時間後の再生鞭毛長の長短から影響を評価した。クラミドモナスの鞭毛は,通常,切断後2時間でほぼ切断前の長さに再生し,4時間では安定した長さを保つようになる。本研究の結果,琵琶湖水フルボ酸存在下における鞭毛再生は,最高濃度区(50 mg/L)において1,4時間後の再生された鞭毛長と対照区との間に差は見られなかった。昨年度の結果と合わせて、琵琶湖フルボ酸の植物プランクトンへの急性毒性的な影響はみられないと結論された。 一方、さらに様々な生態影響を調べるため、OECDの化学品テストガイドラインに基づく化学物質の生態影響試験であるヒメダカの急性毒性試験で琵琶湖フルボ酸による試験を実施した。4日間の曝露で琵琶湖フルボ酸によるヒメダカへの阻害は認められなかった。さらに、琵琶湖フルボ酸の微生物分解性を検討するため分解試験を行った。100日間、20℃、暗条件で湖水を振とうして有機物の分解を調べたが、一般的なフミン物質と同様に琵琶湖のフルボ酸も難分解性であることを確認した。 化学的特性では、琵琶湖の溶存有機物の3次元蛍光スペクトルから、統計的な解析(PARAFAC解析)により3つの成分を分離することができた。しかし、これらの成分は、季節や場所を問わず共通に存在することから、琵琶湖の溶存有機物が季節や場所を問わずかなり均質であることを示していた。また、本研究の背景となっている琵琶湖のCOD増加問題について、過去からのCODに関わる指標のレビューと、問題点の改善に向けた新たな有機物管理指標の考察を行い、論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に不足した琵琶湖フミン物質は、本年度には追加で採取し、急性毒性の試験評価を行うことができた。慢性毒性的な評価が今後の課題である。また、化学的な特性評価は、部分的に成果が上がってきたが、知見同士をつなげる全体像がみえていない。スペクトルの結果などに目途がたったので、今後1年間の間に、何らかのまとめができると考えられる。当初の目的としていた藻類への急性毒性的な影響はないことが明らかになってきたけれども、本研究の背景を考え、CODの問題にまで言及する研究成果が得られているので、一部は当初の研究目的をからはずれてしまっているが、十分に成果が上がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
藻類の慢性毒性的な評価を検討中であり、次年度も引き続き実施する。化学的な特性評価は、スペクトルの結果などに目途がたったので、限外ろ過による特性評価を加えながら、これまで得られた部分的に知見同士をつなげ、溶存有機物の全体像につながるような工夫を考える。今後1年間で、さらに化学特性の知見を増やしながら、研究全体をまとめる。また、本研究の成果還元として、当初計画ではH25年度に行う予定であった国際会議での発表を8月の河川湖沼生態学シンポジウムで、また、論文への投稿を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
慢性毒性評価について結果を得られなかったため、次年度まで延長して検討することとなった。技術的な問題から、本年度は試行錯誤を行ったため、今年度予算の執行を抑えられたので、次年度に同試験の消耗品等を購入にあてる。化学特性評価も予定していた限外ろ過膜の購入が遅れたため、研究を延長して次年度まで実施する。延期された消耗品を購入を次年度に行う。また、期待された成果が年度前半に得られなかったため、H25年度に計画のあった国際会議での発表をH26年度へ延期したため、国際会議での発表と論文執筆を次年度で執行を行う。 研究を延長している毒性評価の需用費等に8万円を用いる。同じく延長している化学特性評価の需用費等に5万円を用いる。国際会議は、韓国への出張に2名、30万円を予定している。投稿する論文の英文校閲に5万円を用いる。
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Research Products
(11 results)