2014 Fiscal Year Research-status Report
生命地域を基礎とした持続可能な開発のための教育(ESD)のモデル構築に関する研究
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24510060
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
古澤 礼太 中部大学, 中部高等学術研究所, 准教授 (70454379)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 持続可能な開発のための教育 / ESD / 生命地域 / bioregion / 流域圏 / RCE / ESDユネスコ世界会議 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年は、国連「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」の最終年度であり、愛知県では、「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」(以下、「ESDユネスコ世界会議」と呼ぶ)が開催された。本研究の対象である、中部ESD拠点(国連大学認定ESD地域拠点[RCE: Regional Centre of Expertise on ESD]のひとつ)は、ESDユネスコ世界会議において発表することを目標に、伊勢・三河湾流域圏(愛知県・岐阜県・三重県)における持続可能な社会づくりをめざした学習および教育のモデルを構築してきた。筆者は、中部ESD拠点の事務局長の立場も兼ねて参加型調査を行ない、ESDの推進手法である「流域圏(生命地域)ESDモデル」の構築およびその普及の過程の研究を行った。 平成26年度は、中部ESD拠点が3年計画で実施してきた、ESDの推進モデル構築事業「中部ESD拠点2014年プロジェクト」の取り纏めを行った。過去2年間で、セクター別分科会(企業/NPO、学校教育、高等教育)および横断的テーマ別(伝統文化、国際協力)の分科会活動を進めてきたが、最終年に入り、これらを統合してひとつのESD推進モデルをつくるべく、3回の合同ワークショップを開催した。さらに、伊勢・三河湾に注ぎ込む主要12河川の上流・中流・下流においてESD講座を実施し、流域圏単位で持続可能性を考える機会を設けた。筆者は、これらの活動の運営に携わりながら、モデル構築の誘導およびその手法の参与観察を行った。 また、国際的なESD調査として、ガーナ共和国における調査を行ない、ASP.netスクールの調査および、食文化を通じた地域の持続可能性に関する調査を行なった。ESDユネスコ世界会議では、ユネスコから任命されて、公式ワークショップのコーディネーターを務め、情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、2014年11月に開催された「ESDユネスコ世界会議」において、生命地域を基礎単位としたESDの推進モデルを発表することを目的とした中部ESD拠点(RCE中部)の活動を研究対象としている。中部ESD拠点は、3年間の活動を通して、流域圏単位で持続可能な社会を実現することを目的としたESDの推進手法である、「流域圏(生命地域)ESDモデル」を構築した。また、活動計画通り、ESDユネスコ世界会議においては、複数のサイドイベント(併催イベント)を開催し、国内外に向けて、開催地提案としての「流域圏(生命地域)ESDモデル」を発表した。本研究では、上記のESD推進モデルの構築プロセスの参与観察を行ったが、概ね研究計画通りに研究を進めることができたと考える。また、筆者は、ユネスコから、ESDユネスコ世界会議の公式ワークショップのコーディネーターに任命され、「地域主導で進めるESD」のテーマで分科会の運営を行った。この業務の実施を通して、各国のESD推進事例を学ぶことが出来たため、本研究にとっても有益であった。 一方で、当初計画では、本研究の最終年が、ESDユネスコ世界会議の開催年であったため、当該会議の成果をも含めて、研究を終える予定であった。しかし、2014年11月に開催された世界会議の成果の取り纏めには時間を要し、研究計画にも若干の変更が求められた。また、当初計画していた国際シンポジウムが、ESDユネスコ世界会議の公式サイドイベントとしての選定から漏れたため、実施に至らなかったことなどからも、研究期間の延長を申請し、承認されたため、引き続き、次年度に研究を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、上記の理由から、補助事業期間を延長を依頼し、承認されたため、昨年度のESDユネスコ世界会議の成果を踏まえて、ポスト「ESDの10年」における「流域圏(生命地域)ESDモデル」の発展に関する追加調査を行なう。 平成27年度は、ESDユネスコ世界会議の成果を踏まえた上で、「流域圏(生命地域)ESDモデル」の国際的な応用の可能性について研究を進める。当該モデルの応用に関する国際的な対話の実現のために、最貧困国(LDC)のネットワーク等との情報交換、特にアフリカにおけるESDの発展の可能性の研究、また、国際博覧会におけるモデルの発表等を予定している。さらに、現在世界135カ所認定を受けている国連大学認定のESD地域拠点(RCE)のポスト「ESDの10年」の動向についても引き続き調査を行なう。 地域内においては、流域圏内の上下流交流や流域間交流、また、異なる分野間の連携によるESD事業の実施を誘導し、それらの成果について考察を行う。具体的には、矢作川流域圏における上下流交流の事例や、三重県鳥羽市の答志島の漂着ゴミ問題等に着目し、ESDの事例として調査を行なう。 また、研究最終年度であるため、研究成果の取りまとめを行い、論文の執筆を行うと同時に、国際シンポジウムを開催する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、2014年11月に愛知県名古屋市で開催された「ESDユネスコ世界会議」において、中部ESD拠点協議会と連携して、計画に沿って、併催イベント(オープンなサイドイベント)として複数のシンポジウムを開催した。しかしながら、計画のひとつであった南北間対話に関する国際シンポジウムが、ユネスコの公式サイドイベントの枠の不採択となり、実現に至らなかった。また、ESDの地域拠点の国際的研究においては、ナイジェリアのRCEカノを訪問し、調査する予定であったが、エボラ出血熱の影響で断念した。こうした理由により、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
補助事業期間延長を行うため、次年度は、「ESDユネスコ世界会議」の成果を踏まえて、研究対象である、中部ESD拠点が構築した「流域圏(生命地域)ESDモデル」の発展に関する研究を継続する。具体的には、「ESDユネスコ世界会議」の成果文書である「あいち・なごや宣言」に盛り込まれた、最貧困国(LDC)等との対話によるESDの発展や、伝統知・市民知を用いた地域主導のESDの深化などについて、「流域圏(生命地域)ESDモデル」との関連において研究を行う。国際的には、南北間対話に加えて、国際博覧会等における当該モデルの発表・交流も予定している。また、研究対象の中部ESD拠点は、ユネスコが主導する「グローバル・アクション・プログラム(GAP)」の主要パートナーとしてユネスコから認定を受けた。ESD推進の手法として、「ESDの10年」のフォローアップ事業であるGAPの動向にも着目して研究を行う。
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Research Products
(11 results)