2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24510063
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
志村 勉 国立保健医療科学院, その他部局等, その他 (40463799)
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Keywords | がん / 放射線 |
Research Abstract |
放射線療法は全身への負担が小さく、臓器の形態と機能温存性に優れている。しかし、日本における放射線療法は欧米に比べいまだに実施率が低く、その有効性の検討が必要とされる。放射線治療における最大の難問は放射線抵抗性のがん細胞の存在であり、治療後のがんの再発の原因となる。がん細胞の放射線耐性は、自己複製能と腫瘍形成能を併せ持つ細胞群、がん幹細胞が重要な役割を担っていると考えられている。申請者はこれまでヒト肝がん細胞株HepG2から放射線を利用して放射線耐性のがん幹細胞を濃縮することに成功した。我々が放射線長期分割照射で濃縮したがん幹細胞では、放射線照射後に細胞の生存に関わるAKTが活性化されることを明らかにした。AKT阻害剤を用いて、放射線照射後のAKTの活性を阻害することで、がん幹細胞の放射線耐性を抑制されることを明らかにした。さらに、生体内でのAKT阻害剤による放射線耐性の抑制効果を、ヌードマウスの皮下にヒト移植片を作製し、AKT阻害剤と放射線の併用効果を検討した。HepG2親株細胞から作成した腫瘍では、X線照射(3Gyx7回)により、腫瘍体積の縮小が観察された、一方、HepG2細胞由来のがん幹細胞を移植した腫瘍では、X線照射による抗腫瘍効果が観察されず、生体内においても放射線耐性を示すことを明らかにした。このがん幹細胞の放射線耐性は、AKT阻害剤と放射線の併用により、抑制されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヌードマウスに作成したヒト移植片の解析により、生体内においてがん幹細胞が放射線耐性を示すこと明らかにした。さらに、AKT阻害剤と放射線の併用により、がん幹細胞の放射線耐性は抑制可能であることを明らかにした。以上の結果から、当初の研究目的が達成され、おおむね順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの我々の解析から、がんの放射線耐性は細胞の生存シグナルAKTシグナル経路の活性化が原因であることを明らかにした。AKTは細胞増殖、細胞死の抑制とともにグルコースの代謝を制御する。このため、がん細胞の代謝経路が放射線耐性に関与することが示唆される。正常細胞では嫌気条件下では解糖系を用いて、エネルギーを産生する。しかし、がん細胞では酸素存在下においてもミトコンドリアの機能不全が原因となり、嫌気的解糖系でエネルギーを産生するWarburg効果が知られている。このように、がん細胞と正常細胞ではエネルギー生産のための代謝経路が異なるので、がん細胞の代謝経路を抑制することで、選択的にがん細胞を殺すことが期待される。グルコース拮抗阻害剤2-デオキシグルコース(2-DG)でグルコースの取り込みを抑制し、放射線耐性の克服が可能であるかどうかを検討する。以上の解析から、がん細胞のエネルギー代謝経路を標的とした、より有効な放射線治療法の開発に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究はおおむね順調に進展しており、最終年度に、得られた研究成果を国際誌に論文としてまとめるため、論文の校正料と掲載量を必要とする。 論文の英文校正量、掲載料と審査過程で要求されると思われる追加実験に必要な消耗品に使用する。
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Research Products
(7 results)