2012 Fiscal Year Research-status Report
放射線量の差により細胞外と核内で異なる防御応答を示すシャペロンとその結合タンパク
Project/Area Number |
24510065
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
喜多 和子 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80302545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅谷 茂 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90334177)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Annexin II / シャペロン / 放射線 / UV / ストレス / 癌細胞 / シグナル伝達 / DNA修復 |
Research Abstract |
申請者は、シャペロンとその結合タンパク質が、「細胞外・表面からの作用」と「核内での損傷DNA修復過程への関与」の異なる機構により、細胞を放射線抵抗化すると考えている。この機構の存在を明らかにするために、本年度は、HSP27とその結合タンパク質annexin IIや他のシャペロン(GRP78,GRP94など)について、1)線量別ストレス曝露後のシャペロンとその結合タンパク質の代謝変動の解析 2)細胞外での機能の解析 3)核内の損傷DNA修復過程への関与の解析を行った。 1)では、細胞外への放出を調べ、低線量X線照射後、annexin IIの放出を認めた。GRP78とGRP94の放出は認められなかった。同時に行った種々の細胞間のannexin II放出量の比較検討において、膵臓癌細胞がannexin IIをより多く放出していることが明らかになった。そこで、膵臓癌細胞を用いて、2)の機能解析を行った。膵臓癌細胞培養液やrecombinant annexin IIをHeLa細胞や他の癌細胞の培養液に添加すると、抗癌剤抵抗性が増加した。さらに、annexin IIがPI3KやMEKシグナルを介して抗癌剤によるアポトーシスの誘導を抑制することも明らかになった。以上の成果をPancreas 41:1247-1254, 2012に発表した。 annexin IIはUVCだけでなくUVBに対する抵抗化にも関わることを見出した。そこで、3)では、annexin IIの発現量を増減させた細胞について、UVCとUVBによる損傷DNAの修復能力を調べた。その結果、発現量の増減に応じて損傷修復能力が増減したことから、annexin IIの修復過程への関与が示唆された。この成果をBiosci.Biotech.Biochem., 77:307-311,2013に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞外培養液中のタンパク質の検出方法を、より少量の培養液で可能となるよう改変し、感度も改善した。この改良により、培養液中に放出される因子の解析がより簡便になった。同時に行った種々の細胞における放出量の比較検討において、膵臓癌細胞では放出量が多いことが明らかになった。膵臓癌細胞を用いることで、annexin IIの細胞外機能を検出しやすくなったと考えられる。その理由として、膵臓癌細胞では、細胞外annexin IIのリガンドが存在するなど、作用を発揮しやすい環境が整っているためではないか推察される。細胞外機能の研究に加え、当初、平成25年度に予定していた機能発揮の機構の解析も進み、annexin IIが、細胞外からのアポトーシス抑制シグナルを活性化しストレス抵抗化を増加するとの示唆を得た。この成果を得ることができた理由は、すでにrecombinant annexin IIの作製が済んでおり、recombinant annexin IIを添加するというシンプルな実験系にしたことで、他のタンパク性の因子の影響を少なくできたためと考えられる。 損傷DNA修復能力の解析では、紫外線感受性の異なる同系派生株細胞を用いたことで、annexin IIの発現量の増減による修復能力の変化を、より顕著に検出できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
膵臓癌細胞を用いて、平成25年度に予定していた細胞外annexin IIの機能発揮の機構解析を24年度に行い、成果を得た。そのため、24年度に予定していた細胞内での局在変化の解析は、一部のタンパク質の解析のみにとどまった。また、細胞外放出の解析では、培養ヒト細胞において、低線量放射線照射後annexin IIが放出されることを見出した。 そこで、今後は、1)線量別ストレス曝露後のシャペロンとその結合タンパク質の代謝変動の解析では、tag融合annexin II分子を発現させ、ストレス依存的放出であることをより明確に解析するとともに、細胞外のannexin IIの修飾状態や、シグナル伝達阻害剤の放出への影響などを調査することで、細胞外放出の機構を重点的に解析する。2)細胞外機能の解析では、annexin IIがX線や酸化ストレスなどに対する抵抗性にも関わるかを調査する。3)核内の損傷DNA修復過程への関与の解析では、修復系酵素類の量と局在の変動を調査する。また、それらの修復酵素の損傷DNAへの集積も免疫染色後共焦点顕微鏡で調べる。同時に、損傷部位へのannexin II, HSP27の集積も調べる。 変更点として、当初、マイクロ電磁波の影響調査を予定しており、電磁波発生装置として120万円を計上していた。しかし、電磁波の専門家である首都大学の多氣昌生先生や本学工学部の岩坂正和先生から、簡便な装置では温度変化の影響などを回避できないこと、また、電磁波装置を共同使用可能とのとコメントをいただいたため、設置は中止した。今年度は、予備実験として直流磁場の影響を調査し、シャペロンとその結合タンパク質の細胞外への放出は認めなかったが、DNA損傷が起こることを見出した。今後、電磁波による損傷DNA修復過程に、シャペロンとその結合タンパク質が関与するかを調べる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に電磁波発生装置設置用として120万円を計上していたが、他の研究室との共同研究が可能となり設置が不要となった。このため、1,132,895円が未使用となった。これに、平成25年度の請求金額1,100,000円を加え、2,232,895円が今年度の研究資金となる。 特に備品の設置は予定せず、物品費として、薬品類に100万円、器具類に80万円を使用する予定である。薬品類にうち主なものは抗体類(約40万円)であり、器具類のうち主なものは細胞外培養液濃縮装置(約30万円)である。また、研究補助員(細胞培養とタンパク質解析補助)の人件費(約30万円)使用を予定している。そのほかに出張費(5月に大分で開催される小児神経学会で発表予定)と論文作成費使用を予定している。
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Research Products
(10 results)