2013 Fiscal Year Research-status Report
放射線量の差により細胞外と核内で異なる防御応答を示すシャペロンとその結合タンパク
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24510065
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
喜多 和子 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80302545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅谷 茂 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90334177)
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Keywords | Annexin II / シャペロン / 低線量放射線 / UV / ストレス / 癌細胞 / シグナル伝達 / DNA修復 |
Research Abstract |
申請者は、シャペロンとその結合タンパク質が、「細胞外・表面からの作用」と「核内での損傷DNA修復過程」の2つの機構により、細胞を放射線抵抗化すると考えている。この機構の存在を明らかにするために、1)線量別ストレス曝露後のシャペロンとその結合タンパク質の代謝変動の解析 2)細胞外での機能の解析 3)核内の損傷DNA 修復過程への関与の解析を行うことを目的としている。今年度は、1)では、線量別ストレス曝露前後の細胞外への放出を調べた。ストレス抵抗性の細胞では、低線量X線照射後、シャペロンHSP27とその結合タンパク質であるannexin IIの放出が認められた。この細胞外放出は低線量特異的であり、高線量では認められなかった。他のシャペロンGRP78とGRP94の低線量X線依存的放出は認められなかった。細胞外放出は、X線のほかに、過酸化水素処理によっても促進され、抗酸化剤や酸化シグナル伝達分子の阻害剤により抑制された。2)の機能の解析では、これまでに、細胞外のannexin II添加によるUVC抵抗化の機序は、PI3Kシグナルを介するBCl-xL/Bax比の上昇によるアポトーシス抑制であることを明らかにしていた。さらに、XPA発現抑制実験などによって、この作用にDNA修復機構は関与しないことを明らかにした。また、recombinant annexin IIの培養液への添加により、HeLa細胞などがX線抵抗化することを新たに見出した。 細胞内のannexin IIはUVCだけでなくUVBに対する抵抗化にも関わることを見出した。そこで、3)では、annexin IIの発現量を増減させた細胞について、UVCとUVBによる損傷DNA修復能力を調べた。その結果、発現量の増減に応じて損傷修復能力が増減したことから、annexin IIの修復過程への関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞外培養液中のタンパク質の検出方法を、より少量の培養液で可能となるよう改変し、感度も改善した。この改善により、これまで細胞外タンパク質解析用にシャーレ10枚分の培養液を要していたが2枚分で解析が可能となり、培養液中に放出される因子の解析がより簡便になった。平成24年度に細胞材料としてすい臓がん細胞を用いることで、2)の細胞外の機能解析について初期の予定以上に研究が進展し、annexin IIが細胞外からPI3KやMEKシグナルを介して抗癌剤によるアポトーシス誘導を抑制することを明らかにし、その成果をPancreas 41: 1247-1254, 2012に発表できた。理由は、すでにrecombinant annexin IIの作製が済んでおり、recombinant annexin IIを添加するというシンプルな実験系にしたことで、他のタンパク性の因子の影響を少なくできたためと考えられる。 損傷DNA修復能力の解析では、紫外線感受性の異なる同系派生株細胞を用いたことで、annexin IIの発現量の増減による修復能力の変化を、より顕著に検出できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
膵臓癌細胞を用いて、平成25年度に予定していた細胞外annexin IIの機能発揮の機構解析を24年度に行い、成果を得た。平成25年度は、新たに細胞外annexin IIがX線抵抗性に関わることも見出した。また、細胞外放出の解析では、ストレス抵抗性の培養ヒト細胞において、低線量放射線照射後シャペロンHSP27とその結合タンパク質annexin IIがともに放出促進されることを見出した。この放出は低線量に特異的であったことから、低線量放射線照射に特異的なメカニズムが存在する可能性が示唆される。 そこで、今後は、1)線量別ストレス曝露後のシャペロンとその結合タンパク質の代謝変動の解析を中心に、ストレス依存的な放出促進であることを示し、低線量特異的な放出促進のメカニズムを明らかにする。そのために、tag融合annexin II分子を発現させ、ストレス依存的放出であることをより明確に解析するとともに、細胞外のannexin IIの修飾状態や、低線量応答に特異的なシグナル伝達に対する阻害剤の影響などを調査する。一方、細胞内での局在変化の解析は、一部のタンパク質の解析のみにとどまっている。また、3)核内の損傷DNA 修復過程への関与の解析も、紫外線損傷DNA修復に関わることを見出し報告したが、その詳細なメカニズムが未解析である。今後は、修復系酵素類の量と局在の変動、また、それらの修復酵素の損傷DNAへの集積も免疫染色後共焦点顕微鏡で調べる。同時に、損傷部位へのannexin II, HSP27の集積も調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に電磁波発生装置設置用に120万円を計上していたが、他の研究室との共同研究が可能となり設置が不要となったため、1,132,895円が未使用となった。そのため、平成25年度の研究資金が2,232,895円となった。これを、培養液濃縮用の遠心機用の備品や試薬などの物品費(180万円)、研究補助員(細胞培養とタンパク質解析補助)の人件費(30万円)に使用する予定をたてた。しかし、実際には遠心機用のバケットローター(231,525円)とラック(75,600円)などを含めて物品費は1,143,111円の支出であった。一方、人件費は449,499円と当初の予算より多い出費となった。その結果、404,187円が未使用になった。 平成25年度 404,187 円が未使用となった。これに、平成26年度の補助金900,000万円を加え約 1,304,187万円が今年度の研究資金である。特に備品の設置は予定せず、物品費として、薬品類に70万円、器具類に30万円を使用する予定である。薬品類のうち主なものは抗体類(約40万円)であり、器具類のうち主なものは細胞外培養液濃縮装置(約30万円)である。また、細胞培養とタンパク質解析を補助してもらう研究補助員の人件費(約30万円)を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Expression level of sonic hedgehog correlated with the speed of gastric mucosa regeneration in artificial gastric ulcers.2014
Author(s)
Tanaka T, Arai M, Minemura S, Oyamada A, Saito K, Jiang X, Tsuboi M, Sazuka S, Maruoka D, Matsumura T, Nakagawa T, Sugaya S, Kanda T, Katsuno T, Kita K, Kishimoto T, Imazeki F, Kaneda A, Yokosuka O
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Journal Title
Journal of Gastroenterology and Hepatology
Volume: 29
Pages: 736-741
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Downregulation of microRNA-431 by human interferon-β inhibits viability of medulloblastoma and glioblastoma cells via upregulation of SOCS6.2014
Author(s)
Tanaka T, Arai M, Jiang X, Sugaya S, Kanda T, Fujii K, Kita K, Sugita K, Imazeki F, Miyashita T, Kaneda A, Yokosuka O.
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Journal Title
Int. J. Oncol.
Volume: 44
Pages: 1685-1690
DOI
Peer Reviewed
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