2014 Fiscal Year Annual Research Report
原発由来等のトリチウムが生体に及ぼす影響解明のための定量評価法の構築
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24510067
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
今泉 洋 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80126391)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
狩野 直樹 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00272857)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トリチウム / 有機結合型トリチウム / 自由水型トリチウム / 移行係数 / 放射線加重係数 / 被曝線量 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は、主に以下の(1)、(2)を観測・追究し、最終年度の総括を行った。 (1) 前年度などから得られた結果に基づき、低温インキュベータを用い、主に水素(H)を含む複数の官能基をもつ各種アミノ酸を使って、人体温度に近い35℃付近でのトリチウム(T)とHとの交換反応(T-for-H交換反応)の速度論的観測と50~80℃での同様の観測を平衡して行い、これらの反応で各物質が得たTの放射能を計測した。このようにして得られた観測データを基に、独自の解析プログラムで解析し、各試料物質とTとの交換時の速度定数(k)を得た。(2) 疑似地下浸透水採水装置などを使って採水した降水試料(及び福島県の湖沼水などを継続採取した試料)中のTなどの解析データを基に、環境中のT濃度変化を追究した。その結果に基づき、福島原発事故におけるTの影響の定量評価を試みた。 以上を基に、有機結合型トリチウム(OBT)中の交換可能型OBTと非交換可能型OBTのT-for-H交換反応性を評価した。また、官能基中のHは、官能基の種類や温度などにより、その反応性が異なることが、以前の研究でわかっている。そこで、Tとアミノ酸中のHとの交換反応を速度論的に観測することで、それぞれの官能基中のHの反応性を定量評価した。その結果、自由水型トリチウム(FWT)から非交換可能型OBTへの移行係数は0.000070と算出できた。この移行係数を用いてTの被ばく線量を計算すると、被ばく線量の増加量は0.000000012μSvとなり、現行のモデルを使った場合に比べると、現在用いられている放射線加重係数に、若干の増加が見込まれることがわかった。 以上の結果と解析手法は、水素同位体交換反応の反応性を非破壊的・定量的に明らかにすることが可能であり、さらに、交換可能型OBTと非交換可能型OBTにおける内部被曝算出に有用であることがわかった。
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Research Products
(16 results)