2012 Fiscal Year Research-status Report
酸化的塩基損傷を修復するタンパク質の同定と放射線や活性酸素に対する防御機能の解析
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24510071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
秋山 秋梅(張秋梅) 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00260604)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 酸化的塩基損傷 / 塩基除去修復 / 突然変異 / 活性酸素 / 酸化ストレス防御 / 線虫 / Nudix / OXR1 |
Research Abstract |
1.放射線や活性酸素によって生じるDNA塩基の酸化的損傷の生物学的影響とその制御で重大な役割を担う塩基除去修復(BER)の機構およびその機能について、本研究では主に線虫(C. elegans)を用いて研究を行った。線虫の AP endonuclease(EXO-3)を精製し、その機能の生化学的活性を解析したところ、大腸菌のexonuclease III型のホモログであることが分かった。この酵素タンパク質の局在性と欠損変異株の性質を解析した結果から、EXO-3は精巣などの発生における酸化ストレス防御で重要な役割を果たすことが分かった。2.ヌクレオチドプールでの酸化ストレスによってdGTPやdGDPのようなDNAの前駆体の酸化が起こり、これらがDNAに取り込まれる際、CのみでなくAとも塩基対を作るため突然変異が生じる。本研究では、これらの酸化ヌクレオチドを分解して突然変異を抑制する線虫の酵素タンパク質を少なくとも3種類同定した。Nudix(NDX)-1, NDX-2はともに8-oxo-dGDPを8-oxo-dGMPに分解する活性を有しており、一方、NDX-4はカナダのグループが報告しているように8-oxo-dGTPaseの活性を示した。これらの遺伝子を大腸菌mutT変異株で発現させるとmutT株の高頻度の突然変異が強く抑制された。さらに、DNAに取り込まれた8-oxoGがDNA損傷に起因する細胞応答を誘導することを見いだした。3.これまでにヒト細胞で同定されていたOXR1と名付けられた酸化ストレス防御タンパク質(機能は未解明)が線虫でも存在することを発見した。このタンパク質は大腸菌のBER欠損やmutT変異株の突然変異を抑制した。線虫のOXR1を欠損させると活性酸素に感受性が高まること、さらに、線虫の寿命を短縮させることを見いだした。酸化ストレス防御を示唆する結果も得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.種々の酸化的塩基を含むオリゴヌクレオチドの合成およびそれらを基質にした修復酵素の研究は、新規に同定、精製した線虫(C. elegans)、大腸菌、ヒト細胞、カタユウレイボヤ(以下、ホヤと呼ぶ)などの酵素タンパク質の機能解明を目的にしているが、とくに線虫とホヤでの研究が順調に進んだ。2.線虫およびホヤにおける2種類のAP endonucleaseの存在はeukaryoteでは珍しく、それぞれの酵素機能の解析だけでなく相互作用を理解する材料を得ることができた。3.線虫のOXR1タンパク質の同定に成功し、それらが酸化ストレス防御の役割を果たすことをさらに実証できただけでなく、寿命制御にも関与していることが明らかになった。OXR1は大腸菌のMutM MutY 変異株やmutT変異株が示す高頻度の自然突然変異を抑制できるが、その理由は分からなかった。本研究では、少なくとも酸化塩基をDNAから除去するDNA glycosylaseの活性も、さらにMutTの持つ酸化ヌクレオチド分解能もOXR1にはないことを証明して、その機能の解析に向けて一歩進めることができた。4.線虫のNDXタンパク質のいくつかが、酸化ヌクレオチドを分解して、その結果突然変異を抑制する働きをするという作業仮説を立てて研究を行い、予想どおりの実験結果を得ることができた。5.この他にも、線虫の持っているDNAのミスマッチ修復酵素(MMR)の同定に成功し、酸化ストレスに対する防御や寿命制御との関連で研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.これまでに同定した線虫、ホヤなどの塩基除去修復酵素およびDNAミスマッチ修復酵素について、従来どおりの酵素活性を測定するだけでなく、新規の基質特異性、新規の活性・機能について明らかにする。線虫、ホヤなどの研究材料のもつ研究上の利点をうまく使って、酸化ストレスと胚発生、個体発生、老化との関連を解析する。さらに、それらの酸化障害を防御、DNAの酸化的損傷を修復する細胞の基本的な機能の解析から、生物の発生から死の過程における「酸化」の意味をさらに解明する。2.OXR1は最近発見されたタンパク質で、その機能は明らかではない。本研究で見いだしたように、このタンパク質が単独で欠損するだけで線虫は活性酸素感受性が増大し、さらに寿命短縮が起こる。このような意味をもつタンパク質はこれまでに同定されていない。まう、このタンパク質の酵素活性や他のタンパク質(例えば、superoxide dismutase)との分子間、機能的な相互作用を解析する。線虫では複数の種類のsuperoxide dismutaseの変異体がすでに分離されているので、それらのOXR1欠損の関係を解析する。3.大腸菌で発見された8-oxoGをDNAから除去する酵素MutTやヒトなどの機能的ホモログOgg1(8-oxoG-DNA glycosylase)は広く生物界に保持されているが、線虫には存在しない。この酸化損傷の強い生物作用から考えて、線虫にはOgg1以外の酵素が8-oxoGの修復に関与していると予想できる。しかし、その正体はまったく謎であった。本研究では、紫外線でDNAに生じるチミンダイマーなどの修復に働くヌクレオチド除去修復の関与を作業仮説にして、その律速酵素であるXPAタンパク質がDNA上の8-oxoGを除去することを実証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①本年度1,230,610円の繰り越し金が生じました。 ②次年度請求額130万円と合わせて合計2,530,610円の使用計画として、1.物品費(1,780,610円);本研究ではタンパク質の精製、酵素活性の測定などに必要な試薬、RI標識化合物(主に 32P-dATP)、ゲル、タンパク質分離用のカラムなど、さらに線虫、ヒト細胞、大腸菌の培養に必要なシャーレ、各種チューブ、血清などを購入する。2.旅費(35万円);主に研究発表の際の教員と大学院生の旅費と研究打ち合わせの旅費である。3.人件費・謝金(20万円);遺伝子の解析、タンパク質の精製などの実験補助に対する謝金である。4.その他(20万円);論文発表に伴う別刷りに使用する。
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[Journal Article] Mitochondria-targeted superoxide dismutase (SOD2) regulates radiation resistance and radiation stress response in HeLa cells2012
Author(s)
Hosoki, A., S. Yonekura, Q-L. Zhao, Z-I. Wei, I. Takasaki, Y. Tabuchi, L-L. Wang, S. Hasuike, T. Nomura, A. Tachibana, K. Hashiguchi, S. Yonei and Q-M. Zhang-Akiyama
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Journal Title
Journal of Radiation Research
Volume: 53
Pages: 58-71
DOI
Peer Reviewed
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