2013 Fiscal Year Research-status Report
酸化的塩基損傷を修復するタンパク質の同定と放射線や活性酸素に対する防御機能の解析
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24510071
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
秋山 秋梅 (張 秋梅) 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00260604)
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Keywords | 酸化的塩基損傷 / 塩基除去修復 / 突然変異 / 活性酸素 / 酸化ストレス防御 / 線虫 / OXR1 / NudX |
Research Abstract |
細胞にとって最大の脅威である酸化は活性酸素によって起こされる。放射線や活性酸素はDNAに強い酸化反応をひき起こし、鎖切断や多様な塩基酸化体を生じ、それらは突然変異や発がんを起こす原因になる。DNAに生じた塩基の酸化的損傷はおもに塩基除去修復(BER)によって修復される。BERでは、損傷塩基をDNAから除去するDNA glycosylase、生じたAP部位でDNA鎖を切断するAP endonucleaseが順序よく働く。また、細胞にはDNA poolで酸化を受けたnucleotideを修復する浄化機構も存在する。昨年度は、(1)申請者が発見したDNA glycosylase活性を持つタンパク質KsgAが酸化thymineの向かい側に挿入したcytosineをDNAから除去するglycosylase活性に加えてcytosineの酸化損傷体を認識する活性も持つことを見いだした。(2)線虫C.elegansのNdx2の基質特異性を解析した。Ndx2はDNA pool中の8-oxodGDPとNdx1とともにRNA poolの8-oxoGDPを認識してそれらを分解する活性を持つこと、C.elegansのNdx1, 2および4を多重欠損(RNAi knockdown)すると、線虫のcheck point機構が誘導されることを見いだした。さらに、これらのタンパク質が個体発生、成長に強く関わることを発見した。(3)線虫の酸化ストレス防御タンパク質CeOXR1を欠損する変異株では寿命が短くなること、CeOXR1を導入した大腸菌mutMmutY, mutT 変異株の突然変異が抑制され、スーパーオキシドによるsodA遺伝子の発現誘導が抑制されること、OXR1欠損線虫は酸化ストレス高感受性を示すことを見いだした。C.elegansのsod2、sod3二重変異株の寿命変化から、OXR1が酸化ストレス防御において重要な機能を果たしていることが分かった。(4)線虫のDNA mismatch修復タンパク質は多様な損傷を認識することを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 当初に予定した酸化DNA損傷塩基5-hydroxycytosineを含むoligomerを合成し、大腸菌KsgAがこの損傷を認識してDNAから除去修復する活性を見いだした(その成果を2013年度日本分子生物学会で発表した)。②新規nucleotide分解酵素Ndx1とNdx2を精製し、それぞれの基質特異性を決定した。さらに、これらの酵素の線虫の酸化ストレス感受性、checkpoint機構での機能を明らかにした、またXPAがDNA中の8-oxoGを認識する可能性を見いだした。(Sanada and Zhang-Akiyama. Mutagenesis, pp107-114, 2014で論文を発表しました)。③線虫C.elegans oxr1遺伝子の構造と機能について解析し、国際学会および総説で発表した(Zhang-Akiyama, SFRRI, 2014, Kyoto; Matsui, SFRRI, 2014, Kyoto; 宮路将弘et al. 放射線生物学研究 Vol. 49, No. 2, 2014 in press)。④線虫C.elegansのDNA mismatch修復酵素が多様な損傷DNAを認識すること、さらに、非分裂細胞でも損傷応答に関与していることを発見した。(その成果は、2012年度の放射線影響学会workshopで講演しました、2013年日本分子生物学会で発表しました)。
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Strategy for Future Research Activity |
①ヒト細胞には、Dim1とmTFB1の2つのKsgAホモログが存在していることが分かった。これらのタンパク質にDNA glycosylase活性があるかどうか明らかにする。突然変異の抑制および精製した酵素のin vitroでの修復活性を検討する。さらに,それらのドメイン構造をKsgAと比較する。KsgAはこれまでr-RNA methyltransferaseとして研究されてきたが、この酵素活性のドメイン構造との比較検討を行う。②線虫、ヒト細胞のOXR1タンパク質細胞内での動態と機能の解析を行う。線虫のOXR1と他のストレス防御遺伝子との多重変異株を作成、解析を行い、その生物学機能を明らかにする。ヒト細胞のOXR1のストレス応答と防御機能も解析する予定。③線虫のAP endonuclease活性を持つExo-3タンパク質の機能と生殖、寿命との関係を解析する。他の塩基除去修復酵素との二重変異株の解析も行う予定。④ホヤのAP endonuclease活性を持つCiAPEX1の同定と発生への影響について確認、解析し、論文公表に向けての確認実験を行う予定。⑤ Mismatch修復酵素のDNA修復、ATMなどのストレス応答遺伝子としての機能について線虫で解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①本年度1318,345円の繰越金が生じました。 ②次年度請求額110万円と合わせて合計2,418,345円の使用計画として、1.物品費(1,618,345万円);本研究ではタンパク質の精製、酵素活性の測定、DNAの合成などに必要な試薬、RI標識化合物(主に32P-dATP)、ゲル、タンパク質分離用のカラムなど、更に線虫、ヒト細胞、大腸菌培養に必要なシャーレ、各種チューブ、血清などを購入する。2.旅費(40万円);主に研究発表の際の教員と大学院生(10名)の旅費と研究打ち合わせの旅費である。3.人件費、謝金(15万円);遺伝子の解析、タンパク質の精製などの実験補助に対する謝金である。4.その他(25万円);論文発表に伴う投稿料に使用する。
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