2014 Fiscal Year Research-status Report
酸化的塩基損傷を修復するタンパク質の同定と放射線や活性酸素に対する防御機能の解析
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24510071
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
秋山 秋梅(張秋梅) 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00260604)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酸化的塩基損傷 / 塩基除去修復 / 突然変異 / 活性酸素 / 酸化ストレス防御 / 線虫 / OXR1 / Exo-3 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞にとって最大の脅威である酸化は活性酸素によって起こされる。放射線や活性酸素はDNAに強い酸化反応をひき起こし、鎖切断や多様な塩基酸化体を生じ、それらは突然変異や発がんを起こす原因になる。塩基の酸化的損傷はおもに塩基除去修復(BER)によって修復される。BERでは、損傷塩基をDNAから除去するDNA glycosylase、生じたAP部位でDNA鎖を切断するAP endonucleaseが順序よく働く。塩基損傷の修復は、突然変異やがん化の抑制、ゲノム安定性維持に関連している。昨年度の実績は以下通り。① 申請者が発見したDNA glycosylase 活性を持つタンパク質KsgAのヒトホモログmTFB1は、酸化DNA損傷塩基5-hydroxycytosineを認識し、修復する活性を持つことを新たに見出した。② 線虫C.elegansの酸化ストレス防御タンパク質CeOXR1を欠損する変異株では寿命が短くなることをいろいろな温度で再確認した。CeOXR1 とSOD2, CeOXR1とSOD3の二重変異株の酸化ストレス感受性、寿命への影響を解析し、それらのタンパク質の相互に重要なつながりが有ることを確認し、その成果を論文にしてFree radical researchで公表した。さらに、DNA修復酵素ung-1, nth-1との二重変異株を作成し、それらの酸化ストレスの感受性、寿命解析を行った。また、ヒト細胞のOXR1 knockdown細胞株を作成し、OXR1遺伝子欠損が細胞のゲノム安定性に影響を与えることを見出した。③ 線虫のAP サイトを修復する酵素Exo-3を欠損すると、線虫の生殖異常が起こり、寿命が短縮されることを見出した。その分子機構をMutation Researchに掲載した。④ 線虫のDNA mismatch 修復タンパク質は酸化ストレス、紫外線、DNA損傷剤MMSなどによる多様な損傷を認識すること、分裂期と非分裂期細胞ではその機構が異なっていることを見出しその成果をまとめた論文を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①当初に予定した通り、大腸菌KsgAのヒトホモログmTFB1が主要な酸化DNA損傷塩基である5-hydroxycytosineを認識し、修復する活性を持つことを見出した(その成果を2014年度日本遺伝学会で発表した)。②線虫C.elegans のoxr1遺伝子の機能について、酸化ストレス防御、寿命・老化への関与を明らかにして、国際誌に論文を発表した(Sanada , Zhang-Akiyama 他5名、Free Radical Research, 48, 919-928, 2014)。③ 線虫C.elegansのExo-3遺伝子を欠損すると、生殖異常、寿命短縮などの影響を与えることを見出し、論文として国際誌に発表した(Kato Y, moriwaki T, Funakoshi M and Q Zhang-Akiyama, Mutation Research/Fundamental and Molecular mechanisms of Mutagenesis 772, 46-54, 2015)。④ 線虫C.elegansのDNA mismatch 修復酵素が酸化ストレス、紫外線、MMS、NaBH4など多様なストレス処理に対して防護作用を持つこと、分裂期細胞と非分裂期細胞の応答が異なっていたことを見出した(論文投稿中)。⑤ホヤのAP endonuclease活性を持つCiAPE1の同定と発生への影響について解析した成果をまとめて論文を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
①投稿中の線虫C.elegansにおけるDNA mismatch 修復酵素の論文について、ATMとの関連性に関する追加実験を行い、それを完成させる。②AP endonuclease活性を持つホヤCiAPE1の発生への寄与について確認実験を行い、論文完成に必要な結果をとる。③ OGG1過剰発現細胞の低線量率放射線に対する感受性の解析とDNA損傷の検出を行い、その成果を国際学会で発表する。
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Causes of Carryover |
平成26年度に、酸化的損傷を修復するタンパク質OGG1の過剰発現細胞の低線量放射線への応答を調べるとともにシンポジウムにおいて発表する予定であったが、低線量放射線の細胞への影響を検出困難であった。そのため計画を変更し、OGG1 過剰発現細胞の低線量率放射線への感受性の解析を行うこととしたため、本年度196,110円の繰り越し金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用計画として、1.物品費(96,100):本研究ではDNA合成、タンパク質精製、酵素活性の測定等必要な試薬、線虫飼育や細胞培養に必要なシャーレなどの購入。2.旅費(50,000):主に研究発表の際の教員と大学院生の旅費。3. その他(50,000):論文発表に伴う投稿料に使用する。
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