2012 Fiscal Year Research-status Report
核分裂中性子の胎児期変異原性と関連毒性に関する研究
Project/Area Number |
24510075
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
藤川 和男 近畿大学, 理工学部, 教授 (90247958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長尾 哲二 近畿大学, 理工学部, 教授 (30351563)
加川 尚 近畿大学, 理工学部, 講師 (80351568)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 核分裂中性子 / 変異原性 / マウス胎児 / 奇形 |
Research Abstract |
核分裂中性子の変異原性効果の研究に適した胎児の発育時期と線量を明らかにする目的で、ICRマウスの妊娠6~13日までの各時期に高線量率X線2Gyの照射を行って、妊娠18日に奇形頻度を測定した。その結果、妊娠9日と10日の照射で最も高頻度で奇形が誘発され、妊娠13日の胎児が最も抵抗性であることが明らかになった。この結果は従来の知見と一致する。 上記の結果に基づいて、妊娠10日のマウスに原子炉放射線、高線量率X線および低線量率γ線の照射実験を行い、得られた線量効果曲線から、それぞれの放射線の0.4 Gy,1Gy, 2 Gyが奇形誘発に関して閾値線量であることを明らかにし、原子炉放射線に含まれる核分裂中性子の生物核的効果比(RBE)は4~5であることがわかった。この値は奇形誘発に関する速中性子のRBEの既報値の範囲内にある。 加えて、突然変異検出用マウス(C57BL×SWRのF1)の胎内照射実験も行い、生存マウスの出生数を基にして、核分裂中性子を一回照射する場合の使用可能な線量域を妊娠10日では0.2 Gy以下、妊娠13日では0.4 Gy以下に定めた。この実験の妊娠13日照射群で得た出生10週齢のマウスを用いて、小腸絨毛表皮の幹細胞に生じている突然変異の検出を行ったところ、この時期の胎児では核分裂中性子の線量と突然変異誘発頻度の関係の解析が充分可能であることが明らかになった。過去、胎児期照射による高LET放射線の突然変異誘発の報告例はないので、この実験で得られた成果は原子力学会で口頭発表した。 以上,本年度の研究において、胎児期マウスの照射による核分裂中性子の変異原性効果の調査の成否に影響する奇形誘発と生存出生児数について調査して、照射可能な線量域の設定など,次年度に本格的に実施する突然変異誘発実験に必要な情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究は核分裂中性子の変異原性効果と関連毒性に適した照射時期と線量の決定のために実施した。この目的は充分に達成した。その理由は下記の成果にある: ①奇形誘発に最高に感受性時期と抵抗性時期をそれぞれ妊娠10日と13日であること、それぞれの照射時期で使用可能な最高線量が0.2Gyと0.4Gyであることがわかった。 ②奇形誘発に関する核分裂中性子のX線に対するRBEを4-5と推定した。この値を参照して、胎児期照射による突然変異誘発に関するRBE値を特徴づける途が開けた。 ③奇形誘発の抵抗期における核分裂中性子の有意な突然変異誘発効果を明らかにし、この時期の照射では突然変異誘発に関するRBEの推定が可能であることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、核分裂中性子,高線量率X線,低線量率γ線による胎児体細胞の突然変異誘発実験を行い、核分裂中性子による突然変異誘発効率とRBEを求める。比較のため、出生後10週前後の成体マウスの照射実験も行い、核分裂中性子に対する胎児体細胞の突然変異応答を特徴づける。 この目的達成に支障となるのは胎児照射に使用可能な最高線量が、成体マウスに使用可能な線量の1/4~1/3である点にある。この問題を克服して妊娠10日前後の胎児の突然変異応答を定量的に明らかにするためには、反復照射実験を行う。このような照射法によってX線の総線量2 Gy、核分裂中性子の総線量0.4Gyの突然変異応答が検討できると予想している。もう1つの問題解決法として、p53遺伝子欠損の突然変異検出用マウスの使用を予定している。これは、妊娠10日前後の胎児は器官形成期にあるため、放射線の細胞致死効果に高感受性である事実とp53欠損が細胞致死を抑制する事実を考慮している。 妊娠13日の胎児の突然変異応答に関しては、すでに核分裂中性子0.2Gyに有意な効果が認められているので、他の放射線も含めて線量効果関係を明らかにすべく、異なる線量で照射実験を行う。 加えて、最終年度に予定している小核誘発実験の予備的検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究ではICR、C57BL、SWRの3系統のマウスを使用する。そのうちSWR系統以外のマウスは、8週齢前後の雌雄の成体として業者から購入する。これらのマウスと飼育関連の経費、および変異クローンの検出に使うペルオキシダーゼ結合フジマメレクチンをはじめ、奇形の組織免疫科学的検討と小核検出実験に関連する一般試薬などの消耗品に、795千円の研究費を費やす。 奇形の高感受期(胎齢10 日)と抵抗期(胎齢13 日)における、低線量率ガンマ線による突然変異の線量効果関係を調べるため、産業医大のCs-137線源を用いて妊娠マウスの照射実験を行う。このための出張費用として150千円を費やす。 研究をスムーズに進めるため、研究補助として1名を採用する。時間給0.95千円として900時間、855千円の研究費を実験補助に充てる。主要業務は解剖補助と突然変異検定用標本の作成である。
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Research Products
(1 results)