2014 Fiscal Year Annual Research Report
ディーゼル排ガスにより次世代の神経幹細胞に生じる機能障害とDNAメチル化異常
Project/Area Number |
24510085
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Research Institution | Nihon Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
立花 研 日本薬科大学, 薬学部, 講師 (10400540)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トキシコロジー / DNAメチル化 / 環境 / 衛生 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脳神経系の発達の要である神経幹細胞を対象とし、妊娠期のディーゼル排ガス(DE)により産仔の脳に生じるDNAメチル化の変化と神経幹細胞の遺伝的・機能的異常との関連について検討を行った。 DEを曝露した妊娠マウスから生まれた新生仔から神経幹細胞を得た。得られた神経幹細胞のゲノムDNAについてメチル化DNA免疫沈降法およびタイリングアレイを用いてDNAメチル化状態の網羅的解析を行った結果、ゲノム全体にわたるメチル化状態の変動する領域が認められた。また、mRNAレベルでの発現変動についてマイクロアレイを用いて解析したところ、多くの遺伝子に発現変動が認められた。これらの遺伝子についてGene Ontologyを用いて機能グループ解析を行ったところ、神経方向への分化に関与する遺伝子に発現変動が多いことが示唆された。実際に、遺伝子レベルで神経細胞の分化マーカーの発現量に低下が認められた。以上より、妊娠期のDE曝露が仔の神経幹細胞から神経細胞への分化に影響を及ぼすと推測された。また、発現変動した遺伝子の一部では、DNAメチル化の変化も認められており、mRNA発現変動にDNAメチル化が関与している可能性が考えられた。 本年度は、神経幹細胞に対して分化を誘導し、DE曝露による分化能への影響について検討を行った。その結果、DE曝露の有無によって分化能に大きな変化は見いだされなかった。しかし、DE曝露群・非曝露群のいずれにおいても十分な分化が誘導できていないため、分化誘導の条件が不十分である可能性が否定できず、更なる検討が必要である。また、miRNAの発現変動について解析を行ったところ、複数のmiRNAに発現変動が認められ、その標的候補遺伝子にDNAメチル化酵素の1種が含まれていた。以上より、miRNAの発現変動がDE曝露によるDNAメチル化異常の一部に関与している可能性が示唆された。
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