2012 Fiscal Year Research-status Report
カエル後期発生における奇形と変態遅延に関するトリアジン系除草剤の比較毒性学的研究
Project/Area Number |
24510088
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Prefectural Institute of Public Health and Environment |
Principal Investigator |
坂 雅宏 京都府保健環境研究所, 水質課, 主任研究員 (80419192)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 除草剤 / トリアジン / カエル変態試験 / ネッタイツメガエル / 成長遅延 / 発生遅延 / 催奇形性 / 甲状腺 |
Research Abstract |
1.本研究課題において研究対象とされる7種のトリアジン系除草剤について、その化学分析法を高速液体クロマトグラフの使用により確立した。確立された分析法により、カエル幼生を用いた以下の毒性試験において、試験液中の被験除草剤の濃度を定期的にモニターすることが可能となった。 2.ネッタイツメガエルによる28日間のカエル変態試験を行うための予備試験として、96時間の急性毒性試験を7種のトリアジン系除草剤について実施した。この予備試験により得られた96時間半数致死濃度を目安として、カエル変態試験における暴露濃度が決定された。 3.7種のトリアジン系除草剤のうち、アメトリンとプロメトリンの2物質について、カエル変態試験を実施した。これら2つの除草剤によるカエル幼生への影響は、本研究課題の先行研究において見いだされたシメトリンの慢性毒性影響と概ね共通することが判明した。アメトリンは、96時間半数致死濃度の1/100の濃度レベルで有意な発生と成長の遅延をもたらした。さらに、96時間半数致死濃度の1/10の濃度レベルでは有意に高い出現頻度で脊椎のわん曲も引き起こした。プロメトリンは、96時間半数致死濃度の1/10の濃度レベルで有意な成長の遅延をもたらした。なお、統計的には必ずしも支持されなかったが、脊椎わん曲を呈する幼生も若干数観察された。以上の影響が発現した濃度と影響の程度を比較すると、環境中でのリスクは、発生と成長の遅延に関してはシメトリン>アメトリン>プロメトリンの順に、脊椎の奇形に関してはアメトリン>シメトリン>プロメトリンの順に高いことが推測された。 4.先行研究による成果は科学論文として公表されていなかったため、本研究課題による成果発表の布石とすべく、2報を国際的学術誌に投稿した。1報は受理・掲載済みであり、もう1報も24年度内に受理され、25年度に掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
24年度実施予定の試験のうち、プロメトリンの試験において、対照群で正常な成長が認められなかったため、再試験の実施を余儀なくされた。このため、計画の遅れが危惧されたが、再試験では順調に結果が得られたうえ、再試験時に過剰のカエル幼生が得られたため、予定を繰り上げ、アメトリンおよびプロメトリン以外のトリアジン系除草剤についても化学分析法を確立し、予備試験である急性毒性試験も済ませることができた。したがって、全体的には予定よりもやや進んで研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
7種のトリアジン系除草剤のうち、カエル変態試験が未実施である5種の物質について、試験を随時実施する。予定では25年度内に3物質の試験を終了し、最終年度には2物質の試験を実施予定とする。また、試験が24年度に終了したアメトリンおよびプロメトリンについて、供試個体はすべてホルマリンに浸漬した状態で保存されている。観察された発生や成長の遅延について、甲状腺機能の異常が原因であるかどうかを確認すべく、甲状腺の組織学的観察も25年度から随時行うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.25年度より、供試個体の甲状腺について組織学的観察を行うため、その組織切片を作成するために必要な回転式ミクロトームを購入する。 2.24年度に実施された試験では、供試個体の形態的な観察が中心に行われたため、デジタル顕微鏡での観察時には低倍率のズームレンズのみで対応できたが、甲状腺の組織観察には高倍率のズームレンズが不可欠であるため、これを新たに購入する。 3.購入予定の高額備品は以上の2点であるが、これらの他に、被験物質となる除草剤の標準品、化学分析用試薬類、組織切片作成用試薬類等を購入する。 4.物品費以外では、国内学会参加費およびその旅費(研究代表者および連携研究者の2名分)として研究費を使用する。
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