2013 Fiscal Year Research-status Report
カエル後期発生における奇形と変態遅延に関するトリアジン系除草剤の比較毒性学的研究
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24510088
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Research Institution | Kyoto Prefectural Institute of Public Health and Environment |
Principal Investigator |
坂 雅宏 京都府保健環境研究所, 水質課, 主任研究員 (80419192)
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Keywords | 除草剤 / トリアジン / カエル変態試験 / ネッタイツメガエル / 成長阻害 / 発生遅延 / 催奇形性 / 甲状腺 |
Research Abstract |
(1) 本研究課題において、カエル変態試験による毒性研究の対象とされるトリアジン系除草剤は7種である。これらのうち、平成24年度に試験が終了したアメトリンとプロメトリンを除く5種の除草剤(ジメタメトリン、シマジン、アトラジン、プロパジン、シアナジン)については、すべて平成25年度に試験を実施した。 (2) 5種の除草剤によるカエル幼生への影響は、本研究課題の先行研究において見いだされたシメトリンおよび平成24年度に試験を行ったアメトリン、プロメトリンの慢性毒性影響と概ね共通することが判明した。シマジンを除く4種の除草剤の場合、急性毒性値(96時間半数致死濃度)の1/100の濃度レベルで、成長・発達の有意な遅延が認められた。シマジンの場合、同様の影響が急性毒性値の1/10の濃度レベルで確認された。 (3) トリアジン核にメチルチオ基を有するシメトリン、アメトリン、プロメトリン、ジメタメトリンによる影響と比較すると、メチルチオ基の代わりにクロロ基を有するシマジン、アトラジン、プロパジン、シアナジンによる影響の方が重篤であり、急性毒性値の1/10の濃度レベルでは、幼生の成長・発達はほぼ完全に阻害された。 (4) これまでに試験された除草剤同様、5種の除草剤によるもう一つの毒性影響として、急性毒性値の1/10の濃度レベルで発現する脊椎の奇形(わん曲)が観察され、その出現頻度は多くの場合、有意に高いものと判定された。アトラジンとプロパジンによる奇形の出現率の高さは統計的に支持されなかったが、幼生の成長・発達が著しく阻害されたため、脊椎のわん曲に至らなかった個体が多かったことによる。 (5) 以上の結果のうち、メチルチオ基を有するトリアジン系除草剤の毒性影響については、関連する国内学会等で3回、口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に購入したインキュベータにより、試験を効率的に実施できるようになったため、平成25年度は予定より先に進んで、残る5種の除草剤の試験をすべて実施した。ただし、シアナジンの試験において、対照群での異常が認められたため、再試験の必要が生じた。このことにより、計画を変更。予定されていた供試個体の甲状腺組織観察の開始を次年度に繰り越し、シアナジンの再試験を先行させた。以上の経過により、研究の進捗状況は概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
7種の除草剤に関する試験で使われた個体は、試験終了後、すべてホルマリンに浸漬した状態で保存されている。平成26年度は、これらの標本を利用した甲状腺組織の病理観察を行う。シメトリンを使った先行研究から、甲状腺組織における病変は認められないことが予想される。標本の包埋・切片作成を効率的に行うため、組織観察は短期間で集中的に行う。組織観察終了後は、関連する学会での発表、市民向けの講演、論文投稿を行い、本研究課題を終了する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1) 大型備品の購入価格が、当初の見積額よりも少額となったため。 (2) 本研究課題で使用する消耗品(試薬類、ガラス器具等)が、他の業務で使用されているものを流用することが可能となったため、これら消耗品の購入価格が、当初の見積額よりも少額となったため。 当該年度の学会発表は国内学会のみとしたが、次年度は、本研究課題に関連する国際学会開催年(開催国:オーストラリア)に該当する。本研究の実質的な作業は、当該学会開催時期(平成26年9月)までに終了する見込みである。以上の理由により、一連の成果を国外で発表すべく、研究代表者及び連携研究者2名の参加を予定し、その旅費として使用する計画である。
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Research Products
(5 results)