2012 Fiscal Year Research-status Report
焼却残渣中におけるセシウムの存在形態把握と長期的安全性の評価
Project/Area Number |
24510089
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東條 安匡 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70250470)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 廃棄物処理 / 最終処分場 / 焼却主灰 / セシウム |
Research Abstract |
焼却主灰中に含まれるセシウムの長期安定性について検討するために、人工的にセシウムを高濃度化した灰を作成し、セシウムの溶出特性について検討した。また風化加速試験を実施し、焼却灰の性状変化がセシウムの溶出に与える影響についても検討した。本来、東関東で発生している放射性セシウムを含む焼却主灰を用いることが望ましいが、実際に発生している主灰は放射能濃度が数十から数百ベクレルあったとしても、総セシウム濃度は原子吸光光度計で測定するには低すぎたため、硝酸セシウムをRDFに添加して燃焼させることで高濃度化した焼却灰を得た。 調整灰には約20%の易溶性Csが含まれていたが、L/S=50でほぼ完全に除去可能であった。なお、イオン交換態は含まれていなかった。実際の灰では、難溶性Csが大半であり、その挙動が重要であることから、水洗前処理を施した。pH依存試験において難溶性Csの溶出はpHの低下により増大した。また、pHの低下に伴いSi、AlもCsと同様に溶出が増大する傾向を確認したことから、焼却底灰中の難溶性Csは、何らかのアルミノシリケート化合物、もしくはガラス状の非晶質内に封じ込められている可能性が示唆された。 長期安定性を確認するために実施した風化加速試験において風化系列は、ブランク、乾燥・湿潤、凍結・融解、CO2ガス暴露の4系列とした。Csの溶出は、ブランクでは水洗試料とほぼ同程度の溶出量で8週経過後まで変化しなかった。CO2暴露系では1週で大幅な溶出量の減少がみられ、2週でほぼ検出限界に達した。XRDにより主灰中にcalcite (CaCO3)の生成が確認され、それが易溶性Csの溶出抑制に機能していると考えられた。乾燥・湿潤系、凍結・融解系では1週で溶出量の増加が見られたが、2週以降は両系ともに溶出量が減少し、最終的にブランクよりも少ない溶出量となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
焼却主灰中に含まれる難溶性Csは、pHの低下により溶出が増大する傾向にあることを確認した。同時にSiやAl等の溶出が認められることから、何らかのアルミノシリケートあるいはガラス状の非晶質に含まれる可能性があることがわかった。粒径別の分析においても、小粒径物ほど溶出が大きい傾向にあり、上記のようなマトリックスが崩壊し易いためであることが予想された。化学分析から間接的にこうした傾向がわかったが、今後は、表面分析等を実施して、低pHにより何故Csが出てくるのかを追求することが必要である。ただし、溶出が増大するpHは中性域よりも低く、通常、高アルカリを呈する焼却灰でそのような条件に陥ることは考えがたい。 一方、風化加速試験により、炭酸ガス暴露によるcalcite形成がCsの溶出抑制に効果的であることがわかった。こちらについても、表面で生じた現象についてにSEM-EDXやEPMAによる分析を行い、Cs溶出抑制の原因をより明確にする必要がある。 予定していた長期挙動シミュレーションの構築には現段階では至っていない。理由は、焼却主灰からのCsの溶出が、従来の化学平衡系の計算では困難であると判断されたからである。特定のCs化合物の溶解や乖離では無い可能性が高いため、本年は溶出挙動を丹念に検討した。結果的にNontronite-Csの溶解度曲線と近い傾向を示すことが確認されており、これらのパラメータを溶出計算に組み込めば長期挙動シミュレーションが実現できる可能性がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.難溶性Csの溶出のpH依存性について:難溶解性CsがAl、Siと共に低pHで溶出する現象について、アルミノシリケートのCs化合物が存在しているのか、非晶質内に取り込まれているCsの溶出なのかを明らかにする。そのために、pH依存試験前後におけるCsの存在形態の差異を機器分析から検討する。用いる機器としては、SEM、SEM-EDX、EPMA、XPSを検討している。また、地球科学モデルによる解析も並行して進め、どのような化合物であれば、溶出濃度を再現できるのか検討する。 2.地球科学モデルと埋立地シミュレータの連携によるCs挙動のシミュレーション:これまで作成してきた地球科学モデルと埋立地シミュレータの連成モデルにセシウムの挙動を組み込む。溶出現象を再現することが第一だが、溶出後の固液分配もまた重要である。そのため、セシウム溶液を用いた焼却灰に対する吸脱着試験を行う。 3.風化促進において炭酸化がCs溶出抑制に顕著な効果を示した原因を探求する。現在の仮説は、calciteがCsを覆うように成長したというものであるが、それを微視的な観察、およびpH依存試験から確認する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度未使用額として202,778円が発生しているが、すべてが24年度3月中に消耗品として発注済みであり、納品も既に完了している。これらは25年度に実施する化学分析と実験で使用するために購入した。 具体的な品名は、次の通り:純空気(1本)\45,150、メノウ乳鉢(1ヶ)\80,000、ベルトパーツボックス(1ヶ)\7,405、プラスチックバット(4ヶ)\2,604、プラスチックバット(5ヶ)\4,725、SMコネクター茶(20ヶ)\29,400、SMコネクター青(20ヶ)\29,400、硝酸1級(2本)\4,094
|
Research Products
(1 results)