2013 Fiscal Year Research-status Report
ビスフェノールのバイオセンシングシステムとバイオレメディエーション技術の創成
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24510091
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
荷方 稔之 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30272222)
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Keywords | 走化性 / Stenotrophomonas / maltophilia / クロロフェノール |
Research Abstract |
S. maltophiliaは12種類の走化性センサー遺伝子を持ち,内分泌撹乱物性が疑われているビスフェノールAをはじめとする様々な芳香族化合物の感知に関与している。これら12種類の走化性センサー遺伝子を網羅的に解析するため、走性センサー遺伝子の破壊株を作製し走化性を測定することにより,感知する化学物質の同定を試みた。 遺伝子破壊株の作製には2回の相同性組換えを別行程に分けて行い,マーカーレスの遺伝子破壊株を作成する手法を用いることで、前年度用いた手法より高効率で取得できた。本手法を用いることによりH25年度において、mcp2, mcp5, mcp6, mcp7, mcp8, mcp10, mcp11の7つの走化性センサー遺伝子の破壊株を作成することに成功した。これらの変異株のうちmcp6およびmcp10について走化性を測定し、感知している化学物質の同定を試みた。 まずmcp6の破壊株Δmcp6について8種の芳香族化合物について走性応答を測定したところ,p-クロロフェノールに対する応答が野生株に比べて63%減少した。このことからmcp6は,S. maltophilia においてp-クロロフェノールを感知していることが明らかとなった。前年度の研究において,mcp5もp-クロロフェノールを感知することが明らかとなっており,走性センサータンパク質Mcp5とMcp6の両者が関与していることが示唆された。 mcp10は緑膿菌の低濃度リン酸イオン走性センサーと相同性を有することから、リン酸イオンに対する走性について詳細な検討を行った。遺伝子破壊株Δmcp10のリン酸飢餓条件下における0.1、0.5mMのリン酸イオンに対する走性応答は、野生株のそれと比較してそれぞれ94, 80%減少した。一方、5mMのリン酸イオンに対しては、両者の応答に大きな差は認められなかったことから、Mcp10が低濃度のリン酸イオンを感知する走性センサーであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
S. maltophilia が有する12の走化性センサー遺伝子の網羅的解析において,H25年度には新たに6つの遺伝子破壊株の作成に成功し,うち2つの走化性センサー遺伝子が感知する化学物質の同定に成功した。H24年度の成果と合わせると,12のうち7つのセンサー遺伝子の破壊株の作製と,3つの走化性センサーの同定に成功しており,着実に成果が得られつつある。しかしながら,残り5つの走化性センサー遺伝子の破壊株作成とビスフェノールAを含む多くの芳香族化合物を感知するセンサーの同定には至っておらず,さらなる研究を遂行する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度の研究において,S. maltophilia の遺伝子破壊株を作製する手法を確立することができた。これによりさらなる効率的な破壊株の取得が期待でき,それらを用いた走化性センサー遺伝子の同定解析を加速することが可能になった。これを踏まえてH26年度には作製済みの破壊株を用いてビスフェノールAを含む芳香族化合物に対する走化性を測定し,本化学物質を感知する走化性センサー遺伝子の特定を行い,発見できない場合には未作製の走化性センサー遺伝子の破壊株を順次作製し,ビスフェノールAを感知する走化性センサー遺伝子の同定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度に作製予定であった11の走化性センサー遺伝子の破壊株のうち,5つの破壊株が未作製であった。これらの作製と,その走化性の測定にかかわる機器利用料および消耗品等に関係する助成金と,H25年度に得られた研究成果の論文発表に関する印刷費相当額を未使用の助成金として繰り越した。 H26年度において,前年度に未作製および未同定の走化性センサー遺伝子を同定するための変異株の作製と,それらの走化性測定にかかわる機器利用料および消耗品として使用する。さらにH25年度の研究成果を論文発表するための印刷費として使用する予定である。
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