2013 Fiscal Year Research-status Report
生態系の物質循環特性に基づく都市緑地の「自然らしさ」の評価手法に関する研究
Project/Area Number |
24510092
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高橋 輝昌 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (20291297)
|
Keywords | 緑地 / 物質循環 / 持続性 / 葉面積指数 / 土壌微生物活性 / 自然らしさ / 生態系 |
Research Abstract |
都市緑地の「自然らしさ」の評価基準を作るため、安定した物質循環系を持つと考えられる関東地方の落葉広葉樹林において、葉面積指数(LAI)と土壌微生物活性(FDA活性)の関係を調査した。安定した物質循環系を持ち、持続性を備えた緑地生態系では、植物による有機物生産活性と土壌生物による有機物の無機化活性が一定のバランスを保っていると考えられるからである。本研究では、LAIが植物による有機物生産活性を、FDA活性が土壌生物による有機物の分解活性を指標すると仮定している。 前述の落葉広葉樹林内の数カ所に調査区を設置し、樹木の樹種の同定・サイズの測定・落葉量測定・地形(傾斜)調査・土壌調査・LAIとFDA活性の測定を行った。LAIの測定に用いた計測機器は、樹幹や枝の影も「葉」として認識するため、着葉量が最も多い夏季と、落葉後の冬季にそれぞれ測定を行い、両者の差をLAIとした。 試験地の土壌型は弱乾性褐色森林土~適潤性褐色森林土であった。土壌の酸度は急傾斜の調査区で高かった。LAIは落葉量と概ね正の相関関係にあった。LAIは、傾斜20度以下の調査区ではFDA活性と高い相関関係にあった。傾斜が大きいと表層土壌の攪乱を受けやすく、LAIとFDA活性の関係が不明瞭になると考えられた。様々な土壌深のFDA活性とLAIの関係を調べたところ、土壌深0~20cmのFDA活性の平均が最もLAIと高い相関関係を示した。 本研究でLAIとFDA活性の関係がみられたことから、今後、細かい修正を加えることで、緑地の「自然らしさ」を評価する基準をつくることは可能であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
比較的平坦な地形であれば、樹林地での着葉量と、土壌微生物活性の間に一定の関係を見いだせることが判明し、緑地の「自然らしさ」の評価基準を作る可能性が示された。落葉量とLAIの関係、土壌の化学性とFDA活性の関係も調査し、理に適った結果が得られている。得られた成果の信頼性は高いと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで調査した調査区のLAIが比較的似通っているので、LAIが小さい調査区(例えば草地など)を設定し、同様の調査を行い、さらに信頼性の高い「自然らしさ」の評価基準を作る。これまで落葉広葉樹林のみを調査対象としてきたが、常緑広葉樹林や針葉樹林、さらには、それらの混交した緑地でも調査を行い、様々な緑地での「自然らしさ」評価についても検討する。また、実際に都市域に造成された緑地を対象に、「自然らしさ」の評価を試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品を予定よりも安く購入できたため 調査旅費および調査用具等の消耗品費として使用する
|
Research Products
(2 results)