2012 Fiscal Year Research-status Report
生物を利用した医薬品等由来難分解性化学物質(PPCPs)分解処理技術の開発
Project/Area Number |
24510093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
田中 靖浩 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (50377587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠山 忠 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (60431392)
森 一博 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (90294040)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環境浄化 / 水生植物 / 微生物 |
Research Abstract |
本研究では環境中に放出されたパーソナルケア製品(Pharmaceutical and Personal Care Products; PPCPs(医薬品、化粧品、日焼け止め、芳香剤等))をターゲットとした微生物単独あるいは微生物と水生植物のコラボレーションによる生物学的処理技術の開発を目的としている。平成24年度はPPCPsを分解できる微生物の取得と系統解析、優れた浄化能力を有する水生植物の検索を実施した。まず、PPCPs分解菌の取得に関しては、医薬品や化粧品の乳化剤や皮膜形成剤として用いられるポリオキシエチレンアルキルエーテル(POE-AE)、沈痛剤のフェネチジンとアセトフェネチジンの原料で、指示薬、殺菌剤として利用されている4-ニトロフェノール(4-NP)を効率よく分解できる微生物を本研究グループ独自の培養手法により取得することに成功した(POE-AE分解菌;計15株、4-NP分解菌;計5株)。これらの分解菌を16S rRNA遺伝子をベースとした系統解析に供したところ、POE-AE分解菌にはNovosphingobium属、Sphingobium属、Pseudoxanthomonas属、Pelomonas属、Prosthecomicrobium属細菌に加え、既知菌種との相同性が88%と新規性の高い菌株も含まれていた。一方、4-NP分解菌はPseudomonas属、Nocardioides属、Rhodococcus属のいずれかに属していることが分かった。 次に、優れた浄化能力を有する水生植物の検索に関しては、栄養塩吸収能を指標とし、浮遊性のウキクサ、コウキクサ、抽水性のミソハギ、ヨシについて各植物の浄化能力を測定した。その結果、ミソハギは他の供試植物に比べて低濃度条件でも高い比生育速度が得られ、広い濃度条件で高い浄化作用を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、①PPCPs分解菌の分離・培養、②PPCPs分解菌の系統解析、③リン・窒素吸収能の高い水生植物の検索を研究実施目標としていたが、それぞれについての達成度は次の通りである。 ①PPCPs分解菌の分離・培養:本年度はまず、難分解性とされる鎮痛解熱剤のメフェナム酸、ジクロフェナク、医薬品や化粧品の乳化剤や皮膜形成剤として用いられるポリオキシエチレンアルキルエーテル(POE-AE)をターゲット物質とし、これらを分解できる微生物の検索を試みた。その結果、メフェナム酸、ジクロフェナクの分解菌については取得できなかったものの、POE-AEを高効率で分解する菌株の取得に成功した。メフェナム酸、ジクロフェナクの代替ターゲット物質として、沈痛剤のフェネチジンとアセトフェネチジンの原料として利用されており、難分解性化合物として知られる4-ニトロフェノール(4-NP)を新たな候補とし、これを分解する微生物の分離・培養を試みたところ、本研究グループ独自の微生物分離培養法を駆使することにより、当該物質を分解する微生物の分離・培養にも成功した。従って、本項目に関してはおおむね順調に進展していると判断できる。 ②PPCPs分解菌の系統解析:取得したPPCPs分解菌の系統解析はすべて終了している。従って、本項目についてもおおむね順調に進展しているといえる。 ③リン・窒素吸収能の高い水生植物の検索:複数の水生植物の中からミソハギを当該候補植物として見出していることから、本項目についてもおおむね順調に進展している。 以上より、現在の進捗状況を総合的に判断して「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断できることから、今後の研究推進方策としては当初の予定どおりとする。すなわち、取得したPPCPs分解菌を用いた浄化技術を開発すべく、「取得したPPCPs分解菌の微生物製剤としての有用性評価およびその利用法の検討」、「リン・窒素吸収能の高い水生植物の根圏への当該分解微生物の導入による新たな処理システムの開発」を目標として研究を推進する予定である。具体的な研究計画としては、平成25年度は取得した分解菌のPPCPs分解経路を代謝産物の解析、遺伝子レベルの解析等によって明らかにしてゆくとともに(代謝物として毒性を有する化合物を産出しないかのチェックのため)、可能であれば、他のPPCPs分解菌(例えば、本年度に取得できなかったメフェナム酸やジクロフェナクの分解菌)の取得も継続して進める予定である。さらに、水生植物根圏へのPPCPs分解菌の導入条件についても検討する。これらの計画を円滑に進めるため、現在の研究メンバーに加え、学部学生2名の協力を得るなどの対策を施す予定である。最終年度の平成26年度には、平成25年度の進捗度合いにもよるが、①取得した分解菌の微生物製剤化と評価、②根圏浄化機能強化水生植物を用いた植生浄化ユニットの開発を試みる予定である(①に関しては現段階で分解菌の取得はできているため、確実に実施できるものと考えている)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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