2012 Fiscal Year Research-status Report
C5・C6糖を並行発酵可能な新規担子菌を利用した食品廃棄物からのエネルギー生産
Project/Area Number |
24510099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
岡本 賢治 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80283969)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 食品廃棄物 / エタノール / 担子菌 / 発酵 |
Research Abstract |
バイオマス原料の一つである食品廃棄物の新たな利活用技術の基盤構築を目的に、多機能な発酵能を持つ担子菌による食品廃棄物からのバイオエタノール生産について研究を進めている。これまでに調べた担子菌類の中で、デンプンに対して有効な発酵性を示す白色腐朽菌Trametes versicolor(和名:カワラタケ)に着目した。各地で採集した複数のT. versicolor野生株におけるデンプン発酵試験の結果、供試した全ての菌株で直接エタノールの生産が認められたことから、本性質は同種内で共通に存在すると考える。コーン、ポテト、米、小麦由来の各デンプンからのエタノール生産能に顕著な差はなく(どれも理論収率に対し8割)、4種を混合した場合でも良好な変換であった。また、デンプン発酵過程で生産される酵素について調べたところ、グルコアミラーゼならびにα-グルコシダーゼ活性が検出され、本菌では主にこれら糖質加水分解酵素が機能していることが示唆された。 T. versicolorにおいて、身近に存在する食品廃棄物の発酵基質としての利用適性の検討を目的に、麺類の茹で汁、消費期限切れの麺類を対象とした発酵試験(窒素源は無添加、pH調整なし)を行った。その結果、酸や酵素などの糖化処理をしていないにもかかわらず、本菌はデンプンを分解しながら速やかにエタノールへ変換しており、茹で汁、うどんやパスタ麺において8割前後の収率を得た。このように、T. versicolorは麺類などのデンプン質原料を直接エタノールへ変換できる有望な特性を有しており、食品廃棄物からのエタノール生産への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食品廃棄物からのエネルギー生産を行う上で、効率的な変換能を有する菌株を選抜する必要がある。そこでまず、幅広い基質に対して発酵可能な担子菌の絞込みとその変換能力の把握を優先課題とし、各種デンプンならびに身近な食品廃棄物に対する発酵適性について検討を行った。その結果、T. versicolor野生株において、コーン、ポテト、米、小麦由来のデンプンのみならず、消費期限切れの麺類などを比較的良好な収率でエタノールへ直接変換できる性質を有していることが明らかとなった。野生の酵母やカビでは認められない、このような担子菌の特性は食品廃棄物の利活用を推進する上で有望なものと考えている。当初のタイムスケジュールから多少前後した部分があるものの、計画内の課題に着手し、興味深い成果をいくつか得るに至っていることから、上記の達成度と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
食品廃棄物をエネルギー資源として着目し、C5ならびにC6糖を高収率で発酵可能な担子菌を用いた食品廃棄物から直接的にエタノールを生産する技術の基盤を構築する。昨年までの検討で、T. versicolor野生株がデンプンから比較的良好な収率でエタノールを生産すること、その際にグルコアミラーゼやα-グルコシダーゼなどの糖質加水分解酵素を主に分泌していることを認めた。今後、当該担子菌がデンプン等の糖質を分解ならびに発酵する際にどのような遺伝子を発現しているか特徴を明らかにすることで、安定した発酵条件の設定へつなげる。具体的には、(1)担子菌の発酵時の特異的発現遺伝子の解析、(2)各種条件(pH、塩濃度、脂質含量など)変化が及ぼす発酵への影響、(3)生ごみと他バイオマス混在化での発酵、(4)最適発酵条件の設定等に取り組む予定である。以上の検討を通して、これまで未解明であった担子菌に潜在する発酵能力を掘り起こし活用した、食品廃棄物の効率的なリサイクルシステムの確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(B-A)の400円は旅費(日本農芸化学会2013年度大会での研究発表)の事務処理手続きの関係で年度末に発生したものである。これと次年度の助成金110万円とを合わせた計110万4百円の使用内訳予定を以下に記す。 消耗品 49万4百円(試薬、ガラス器具など) 旅費 9万 円(日本農芸化学会2014年度大会の参加&発表) その他 10万 円(英文校正) 42万 円(遺伝子発現解析)
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Research Products
(6 results)