2012 Fiscal Year Research-status Report
放射能除染に適する電気透析装置とそのイオン交換膜の研究開発
Project/Area Number |
24510109
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
陳 進華 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (30370430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 雅春 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究嘱託 (50370341)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イオン交換膜 / 電気透析 / 放射線グラフト重合 |
Research Abstract |
福島原子力発電所の事故により、環境中放射性物質が大量に放出され、その除染作業が急務になっている。汚染水の除染は、蒸発法、イオン交換・吸着法及び電気透析法などが考えられる。電気透析は、イオン交換膜と電力を利用してイオン性物質を分離する。陰極及び陽極の間に、陽イオンのみを透過させる陽イオン交換膜と陰イオンのみを透過させる陰イオン交換膜を交互に配列し、原水を流しながら、イオンの濃縮された部分(濃縮水)とイオンの希釈された部分(純水)とに分けられる。 電気透析の最も重要な構成部材であるイオン交換膜は、主として化学的な方法で作製されているが、特性などはほとんど明らかにされておらず、十分に実用的なものが得られているとは言い難い。我々は、高分子フィルムを基材として、放射線グラフト重合を利用することで、様々な陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜を作製した。また、電気透析用イオン交換膜として必要な性能(イオン交換容量、電気導電性、含水性、イオン透過選択性など)を評価した。更に、0.5N CsNO3水溶液を模擬溶液および電極液として、模擬溶液のセシウムイオン分離効果を評価した。その結果、作製したグラフト型イオン交換膜は、従来イオン交換膜と同様またはそれ以上のセシウム分離性能を有するとともに、従来炭化水素膜より遥かに高い耐久性を持つことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の目標として、機械強度:>40 MPaの引っ張り強度、>20%の伸び率;安定性:>95℃熱水中500時間の耐熱性、>100 KGyの耐放射線性;イオン伝導性:>0.06S/cm (室温、飽和含水状態);およびイオン選択透過性(輸率): >0.97(Cs+/陽イオン交換膜or I-/陰イオン交換膜)を有するイオン交換膜を合成する。 機械強度、安定性及びイオン伝導性を満足するイオン交換膜の合成法を確立した。イオン選択透過性(輸率)については、輸率測定装置が揃わないため、次年度で実施する予定になる。一方、25年度実施予定の電気透析実験については、24年度で実施を行った。その結果作製したグラフト型イオン交換膜は、従来イオン交換膜と同様またはそれ以上のセシウム分離性能を有するとともに、従来炭化水素膜より遥かに高い耐久性を持つことが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、膜合成条件の最適化をするとともに、大面積を有する膜を大量に合成する。合成した陰イオン交換膜、陽イオン交換膜を小型電気透析装置へセットし、模擬放射能汚染水及び放射能汚染水を原水として、その除染効果及び経済性を評価する。また、電気透過実験結果をもとに、電気透析装置の構造を最適化する。さらに、電気透析とイオン交換を同時に進行するために、脱塩室にイオン交換材(無機材または有機材、微粒子または繊維形態で)を充填し、その除染効果を評価する。合成されたイオン交換膜の適用性が低い場合には、相応の市販イオン交換膜を用いて電気透析実験を行い、放射能除染に適用する電気透析装置の設計に専念する。代表者は膜の合成、電気透析装置の設計、放射能除染効率を評価する。分担者は核燃料リサイクル処理の経験を生かし、放射能汚染土壌の除染について、熱・化学的方法を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イオン交換膜の合成に必要な試薬(モノマー、架橋剤、溶剤)、グラフト重合容器及びガラス器具、合成に必要な様々な高分子フィルム基材を購入する。 研究結果をもとに、国内メーカーとの打ち合わせを年2回行うことや、研究の動向調査、研究成果の発表のための学会参加を年2回行う。 除染効果を精密に測定するため、イオンクロマト装置(150万円)を購入する。 設備備品費、消耗品費について、納入実績のあるものは実績で記載した。実績のないものについては2社以上から見積をとり最も安いものを記載した。国内、国外旅費については原子力機構の旅費規程をもとに算出した。
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