2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24510110
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
野田 和俊 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (60357746)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パーティクル / 微小粒子状物質 / 水晶振動子 / 微量天秤法 |
Research Abstract |
大気中の浮遊粒子状物質(SPM)、特に「PM2.5」などについて水晶振動子を利用した微量天秤測定手法(QCM)の応用を行い特別な付加装置を使用することなくSPM を電極表面へ付着させるリアルタイム計測手法の検討を行った。 今年度は、SPM が付着しやすい高分子膜の作成とその評価を行った。SPMが吸着しやすい高分子薄膜をプラズマ重合やスピンコート法などで作成して成膜条件を求めた。膜厚が厚くなるほど吸着表面積が大きくなるが、湿度に対する影響も大きくなるため、約10000ng程度(ポリテトラフルオロエチレン)が本条件では最適であることを明らかにした。エタノール、アセトンなどのVOCに対する検知感度は小さく、湿度に対する影響も小さいことが分かった。測定流量に対する影響も小さかった。走査型電子顕微鏡(SEM)での表面観察の結果、小さな凸凹はあるが全体を見ると比較的フラットな形状が確認された。この他に、スピンコート法による成膜も同様な特性であった。 この結果から標準的なSPM 試料(中心粒径4.7~54μm:90%)を利用してQCM検知特性を求めた。試料を単独で発生させた実験では、SPMの付着によって生じる周波数変化は、発生量と正の相関関係を明らかにした。表面に付着したSPMをSEMで観察した結果、2.5μm程度以下の粒子も付着しており、本測定法の有効性が確認された。付着割合と検出感度の関係では、市販のレーザ式粉じん計の測定結果とQCM周波数変化もほぼ正の相関関係が示された。 高感度検知では、逓倍波を利用しなくても基本周波数の高周波数化(9→20MHz)により、約5倍程度高感度化が可能なことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検知膜作成とその特性評価では、SPM を付着しやすい高分子膜の作成とその評価を行ったが、当初検討していたポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール等の高分子薄膜をプラズマ重合で作成し、その付着特性を各種実験とSEMの観察で求めることができた。また、この他にスピンコート法による成膜後焼成した膜の検知特性やセルロースを主成分とした検知膜についても検知特性評価を行い、それぞれの比較検討を行った。これらのデータをもとに、環境に対する影響度、流量などの影響についても調査し、一部特性を明らかにした。一体化しない一定以上の粒径の物質が付着しても周波数変化にほとんど関与しないことについても、50μm以上の粒径を含んだ試料を利用した実験を行い、その有効性を一部明らかにした。試料の種類が少ないため、その種類を増やし引き続き調査検討を行う。 標準的なSPM 試料を用いて、各種試料濃度に対する水晶振動子の発振周波数変化の関係を求めたが、検知可能な付着割合と検出感度の関係については試料の種類が少なかったため、種類を増やし引き続き調査検討を行う。 SPM 濃度、測定流量、温度、湿度などの条件による検知特性では、試験装置の都合で温度、湿度の変化域が狭かったことから、試験方法なども含めて引き続き調査検討を行う。SPM 付着濃度に対する周波数変化の依存性については、比較的良好な結果が得られ、今後も試料の種類を変えながら調査検討を行う。 逓倍波を利用した高感度化よりも基本発振周波数の高周波数化による高感度化は概ね順調な結果であったため、今後は高周波素子を中心に成膜を行い引き続き調査検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
各種試験条件によって得られたデータをもとに最適な検知薄膜を作成するため、改良を進める。特に検知膜では、今回使用した材料以外の他の高分子材料についても検討を引き続き行う。また、成膜方法もディップ法など簡便で利用しやすい成膜法の検討を行い、最適な検知膜を引き続き検討する。試料の種類についても、無機、有機物などの比率の異なったものなどを増やし、各試料に対する検知特性を明らかにする。特に、微小粒子、PM2.5に対する検知特性について引き続き調査検討を行う。ここでは、SEMと成分分析が可能なEDXを利用し、QCM検知膜表面に付着した粒子の大きさと成分特性を求める。 検知システムでは、既存のSPM測定手法、成分測定マニュアルを参考に、本QCM検知手法のシステム化を検討する。具体的には、SPMをQCM検知素子表面に付着させる導入部について効率的な付着が可能となる内部構造、形状や距離などを検討する。本測定手法は、特別な付加装置を使わないことから、浮遊しているSPM全量を検知素子に付着させることは難しいため、その付着比率を明らかにすると共に、その割合が大きくなるような最適な測定条件を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は当初計画予算よりも145159円余剰となったが、主な理由は人件費が当初計画よりも少なかったためである。今年度はこの予算を有効活用すべく、成膜や試料の種類を増やし、検知用SPMセルの試作などを中心に予算を使用し研究を加速させる。
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