2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24510110
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
野田 和俊 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (60357746)
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Keywords | パーティクル / 微小粒子状物質 / 水晶振動子 / 微量天秤法 |
Research Abstract |
大気中の浮遊粒子状物質(SPM)、特にPM2.5などについて水晶振動子を利用した微量天秤測定手法(QCM)を応用して、特別な付加装置を使用することなくSPM を電極表面へ付着させるリアルタイム計測手法の検討を行った。 今年度は、引き続きSPM が付着しやすい高分子膜の作成とその評価を行った。検知膜を成膜するベースとなる電極金属の種類の違いによっても成膜が異なることから、金電極以外の各種電極を利用しプラズマ重合やディップ法、スピンコート法などで作成して吸着検知特性を求めた。今年度は2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン膜を中心に試験を行った。その結果、昨年度実施したポリテトラフルオロエチレン膜との差はあまりなく、プラズマ重合膜の有効性が示された。この2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン膜もエタノール、アセトンなどのVOCに対する検知感度は比較的小さく、湿度に対する影響も比較的小さいことが分かった。 これらの結果をもとに、SPMが多い作業環境に自然通気状態で一定期間放置し、その吸着特性について調査を始めている。 SPM測定では測定流量が重要な要素となっている。一般的には500ml~1000ml/minが主である。このようにサンプル量が多い場合は問題ないものの、少ないサンプルの場合は課題が考えられるため、測定流量が少ない場合の吸着特性についても検討を行った、その結果、500ml以下では吸着量がかなり少なく、QCM検知が難しいことが示された。測定に利用しているガスセルは、従来のパーティクル測定用のものをQCMで使用できるように改造したものであることから、通気上の流路特性が異なっている可能性もあるため、この点を中心に調査検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検知膜作成とその特性評価では、SPMを付着しやすい高分子膜の作成とその評価を行っている。今年度も昨年度に引き続き高分子薄膜(2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン)をプラズマ重合で作成し、その付着特性を各種実験とSEMの観察で求めた。異なる材料によるプラズマ重合膜の吸着検知特性については、明確な差異は示されなかった。これから、この程度の膜厚レベルでは膜材料の違いが物理吸着や表面形状に現れないことが考えられる。また、使用したSEMによる観察でも同様に表面状態の違いは明確に示されたかった。このよう結果から、今回使用したサンプルや実験条件下では膜材料の影響は明確に示されず、膜表面状態が吸着特性に影響していることが予想される。今回の成膜では膜厚についてはある程度制御できるものの、表面形状を変えることは基本的には難しいため、この点については引き続き調査検討を行う。このようなことから、成膜可能な検知膜の材料についてはある程度の傾向を確認できている。また、干渉ガス等についても同様である。表面形状について異なる条件下での確認が必要となっている。 SPM測定では測定流量が重要な要素である。一般的な測定では500ml~1000ml/minで行うが、QCM測定では高感度検出が可能と考え、QCM測定手法が広く利用されることを想定し、できるだけサンプル流量を少なくして検討を進めてきた。しかしながら、QCMについても流量が少ないほど吸着量が少ない傾向が示された。これから、QCMによるSPM検知でも一定以上の流量での測定が必要であることが示された。この結果は、現在測定実験で使用しているガスセルが既存のSPM測定用のものを改造して利用しているため、QCMに最適な通気構造の測定用セルの必要性が考えられ、引き続き調査検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今まで得られた結果をもとにプラズマ重合膜を含めて最適な検知薄膜について検討、改良を進める。また、表面形状が吸着特性に影響を及ぼすことが考えられるため、この内容についても検討を行う。 ここでは、SEMと成分分析が可能なEDXを利用して、QCM検知膜表面形状を観察しながら吸着量と表面状態との相関関係を中心に検討を進める。 検知システムでは、検討した検知膜を利用して実際の作業環境などで測定試験を進める。特に、個人曝露測定に有効に活用可能となる自動測定記録が可能な小型ロガーを活用し、自然拡散状態でのSPM測定の有効性を調査し、長期間での経時変化などの実用面も考えた総合的なシステムの検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の余剰の主な理由は、実験を主に研究者本人が行い契約職員等をあまり使わなかったため、人件費が当初計画よりも少なかったためである。 今年度はこの予算を有効活用すべく、検知用SPMセルの試作や現場試験などを中心に予算を使用し研究を加速させる。
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Research Products
(2 results)