2012 Fiscal Year Research-status Report
アパタイトの各種形態(粉末、多孔体、薄膜)による放射性物質除去に関する研究
Project/Area Number |
24510111
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
尾関 和秀 茨城大学, 工学部, 准教授 (20366404)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アパタイト |
Research Abstract |
平成24年度は、当初の計画通り、シリコンドープ量0, 10, 20, 30, 40%のシリコンドープハイドロキシアパタイト(SiHA)の作製を行い、その表面積及び各種イオン吸着量(ストロンチウム、鉄)の測定を行った。また、同時に合成ゼオライト(ZSM-5)を用いて、セシウム吸着量及び鉄イオンによるセシウム吸着抑制効果を評価した。 その結果、シリコンドープによるHAの表面積は、シリコンドープ量0%では110m2/gであったのに対し、シリコンドープを行ったSiHA(10~40%)では、160~180m2/gと増加した。しかし、シリコンドープ量と表面積に相関は認められなかった。次に、各種SiHAのストロンチウム溶液中(0.001N)での吸着率は、シリコンドープ0%で73%、SiHAでは65~68%にとどまり、表面積増大によるストロンチウム吸着率の増加は認められなかった。また、鉄溶液中(0.01N)での各種サンプルの吸着率は、全て100%となり、鉄に対するHAの吸着性はシリコンドープの有無に関わらず、高いことが確認された。 ゼオライトのセシウム吸着においては、鉄イオン存在下での影響を評価したところ、純水中ではセシウムの吸着率が84%であったのに対し、0.01Nの鉄存在下では41%と約半分の吸着率に低下することが確認された。次に、各種SiHAとゼオライトを混合し、鉄存在下でセシウム吸着率を測定したところ、吸着率は76~83%まで回復することが明らかとなった。SiHA単体のセシウム吸着率は1~7%と非常に低いことから、単にSiHAのセシウム吸着率が加算されたのではなく、SiHAが鉄イオンを除去することで、ゼオライトのセシウムに対する吸着能が回復したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画では、ハイドロキシアパタイト(HA)へのシリコンドープ、各種シリコンドープHA(SiHA)に対するストロンチウム及び鉄の吸着率の評価、更にゼオライトのセシウム吸着率評価とSiHAの助剤として効果を評価することが掲げられていた。結果はHAに対し、シリコンを0~40%ドープすることに成功した。また、合成した各種SiHAの表面積測定、結晶性の測定、ストロンチウム溶液及び鉄溶液に対する吸着率の測定を終えた。 一方、ゼオライトにおいては、他報告でもある通り、鉄イオン存在下では、セシウム吸着率の著しい低下が起こることが確認され、そして、ゼオライトに各種SiHAを混合することで、半分まで低下したセシウム吸着率がほぼ回復することが明らかとなり、HAがゼオライトのセシウム吸着を助ける助剤として効果が示された。本効果もシリコンドープ量による違いは認められなかったが、HA自体の効果は認められたため、研究の方向性には問題ないことが確認された。以上より、研究は概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、ハイドロキシアパタイトとゼオライトの海水中での吸着率の評価及び多孔化を進めていく。また、平成24年度の結果、HAがゼオライトのセシウム吸着の助剤としても効果が認められたことから、実用上を考慮し、様々なイオンが存在し、ゼオライトの吸着能を低下させる海水中での吸着率の評価を行う。この点は、学会発表時においても、複数の研究者から海水中での評価の必要性を指摘されている。また、近年、ゼオライト以外のケイ酸塩についてもセシウム吸着材として利用できることが報告されているため、ゼオライト以外のケイ酸塩についても評価を行い、HAと混合することによる効果を併せて評価していく。 多孔体化については、実用上、取り扱いの面で必要な性状であるため、精力的進めていく。HAについては、加熱により多孔体化する場合、加熱による表面積低下が起こることで、ストロンチウムや鉄の吸着能の低下を招く恐れがある。このため、焼結温度と吸着能の最適化を図る必要がある。また、気孔率は強度と吸着率に大きく影響を与えるため、吸着率の定量に加え、強度についても定量化を図っていく。さらに、HA単体での多孔体化により、吸着能の確保が困難な場合には、セシウム吸着を担当するケイ酸塩を多孔体とし、これにHAを複合化させる方策も考える。この場合、ケイ酸塩のセシウム吸着能に対する焼結温度の影響を評価すると伴に、強度の定量化も必要と考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方策及び申請書の研究計画に従い、順次使用する予定である。具体的には、ゼオライト以外のケイ酸塩として、モンモリロナイト、カオリナイト等の材料購入、海水、各種試薬、各種材料の分析費用、多孔体の圧縮強度評価を行うための小型卓上試験機の購入を予定している。また、学会発表等も行っておく予定で、それらの費用についても計上する予定である。
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