2013 Fiscal Year Research-status Report
新規生分解性バイオポリエステル設計のための関連酵素の構造―機能研究
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24510114
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
久野 玉雄 独立行政法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 専任研究員 (20312267)
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Keywords | 環境調和型材料 / 生分解性 / バイオポリエステル / 微生物酵素 / 構造と機能 |
Research Abstract |
ポリアスパラギン酸は生分解性をもつ非天然の水溶性高分子で、非生分解性の水溶性合成高分子であるポリアクリル酸の代替物質として注目されている。Pedobactor sp. KP-2由来のポリアスパラギン酸分解酵素はポリアスパラギン酸のβ-βアミド結合を加水分解してアスパラギン酸オリゴマーを生成する酵素である。ポリアスパラギン酸分解酵素とβ-βアミド結合をもつ高分子基質との相互作用様式を明らかにするために、本酵素のX線構造解析を行っている。本酵素の結晶構造を前年度に明らかにしている。本酵素はアミノ酸265残基からなる単量体酵素である。主鎖構造はα/β hydrolase foldの特徴を持ち、8本のβストランドからなるβシートとその周りの8本のαヘリックスで構成される。活性部位を構成する触媒3残基および基質結合領域の構造が明らかになった。本年度は基質との複合体の結晶構造解析を行った。 本酵素のS125A変異体の結晶を作製し、それを基質を含む溶液に浸漬したのち、SPring-8放射光を用いて回折データ収集を行った。構造解析の結果、活性部位近傍に、β-アスパラギン酸2量体と解釈可能な電子密度が観測された。野生型酵素、変異体酵素、変異体酵素ーβアスパラギン酸複合体の構造を比較したところ、大きな構造変化は見られなかった。 βアスパラギン酸2量体が基質結合領域に結合していたことから、本酵素は少なくともサブサイトを2つ持つことが判り、それらにおける結合様式が明らかになった。特にサブサイト1ではArg214が基質側鎖のカルボキシル基と静電相互作用することが判り、サブサイト1におけるβ-アスパラギン酸ユニットに対する特異性が高いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリアスパラギン酸とポリヒドロキシアルカン酸は主鎖構造が非常に似ているが、側鎖の親水性に関して大きな違いがある。今年度の研究成果によって、それぞれの高分子が基質となって対応する分解酵素に結合する際、両者の主鎖コンフォメーションがよく似ていることが判った。このように、両分解酵素のアミノ酸配列の保存性がほとんどないにも関わらず、全体構造および基質結合様式の共通点が見られたことは、両酵素になんらかの進化的な関連の可能性を伺わせる。一方、高分子基質側鎖が親水性か疎水性かの違いにより、基質側鎖と酵素アミノ酸側鎖との相互作用様式に違いが見られた。このような知見は、分解酵素の基質特異性を理解し、その改変を検討する際に重要である。今後はマルチドメイン構造を持つポリヒドロキシアルカン酸分解酵素の基質認識機構も明らかにすることにより、基質特異性改変に向けてより多くの構造情報を収集する。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリアスパラギン酸分解酵素およびポリヒドロキシアルカン酸分解酵素について現在のところ、両者とも高分子基質結合におけるサブサイト1、2の存在が明らかになった。酵素の基質特異性のより深い理解のためにはサブサイト-1における基質認識機構の解明が不可欠である。これらの酵素において基質がサブサイト-1に結合するような複合体の結晶の調製を目指す。またポリヒドロキシアルカン酸合成酵素の結晶化・構造解析を成功させ、合成酵素における基質認識機構の解明を目指す。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Introduction to Protein Crystallography
Author(s)
Tamao Hisano, Tomohiro Hiraishi, Kosuke Minami, Eriko Masuda, Hideki Abe, Mizuo Maeda, Yoshitsugu Shiro
Organizer
Introduction to Protein Crystallography A Hands-On Workshop
Place of Presentation
Universiti Sains Malaysia, Penang, Malaysia
Invited