2012 Fiscal Year Research-status Report
低線量放射線の最初期過程観測を目指した光結晶加速器の設計基盤の確立
Project/Area Number |
24510120
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 和義 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (40357041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上坂 充 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30232739)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 誘電体加速器 / 放射線生物学 / マイクロビーム / 電子ビーム |
Research Abstract |
光結晶加速器の設計に当っては、結晶中のレーザー光伝播に影響が大きいレーザー波長や強度、パルス幅も同時 に考慮する必要がある。そのために、レーザーに関しては、他の研究課題から得られるファイバーレーザーの知見を反映させ、Erファイバー(波長1.55ミクロン)を第一候補として設計研究を行った。 光結晶加速器の基礎的指針を得るために、解析的手法によって各種パラメータと物理量の関係を明らかにした。この結果は、国内外の学会において発表した(国外3件、国内4件)。その後、数値計算によってレーザーの電界計算分布を計算し、電界の対称性のズレによって電子の整合条件から外れていても電子加速が可能な事を示した。この結果は加速器を一定の格子定数の構造で作れ、製作が容易になる事を示している(25年度に発表)。計算結果では、光学破壊の閾値を文献にある平坦な試料での値と同じ1e13W/cm2と仮定すると、最高加速電界は600MV/mに達する。しかし、格子構造がある場合は、反射・回折による電界集中で破壊閾値が低下する事が考えられるので、実験による検証が必須である。 光学破壊の閾値と加速電界の分布と強度を同時に測定するため、東京大に設置してあった12TWレーザーをKEKに移設した。KEK側の受け入れ体制の遅れと機器の故障のために測定実験までは至らなかったが、年度末までにレーザーの再稼働を可能にした。また、理研の助力を得て、様々な試験片をリソグラフィーによって製作するために必要なフォトマスクを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東京大に設置してあった12TWレーザーを、本課題の他の研究でも使用するために、KEKに移設して、その後に光学破壊の閾値と加速電界の分布と強度を測定する計画であった。しかし、受け入れ側(KEK)の施設整備の遅れと、レーザーの組み立て途中で明らかになった機器の故障に対処したために、当初予定していた測定実験までは至らなかった。 しかし、年度末までに、レーザーは再稼働することができ、フォトマスクも完成する等、照射実験を残す段階まで遅れを取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
光結晶加速器での粒子加速には、加速器の単位寸法の応じた最適な初期速度が存在し、加速勾配は達成できるレーザー電界強度によって左右される。しかし、実際の構造では理想状態からの電界の歪みが速度整合条件に影響し、整合条件からはずれた遅い速度の電子でも加速が可能である事を数値計算で明らかにした。この成果は国内外での学会発表および論文発表を通して国内外に発信する。 試験機の設計に必要な誘電体の破壊限界と加速電界分布測定は、H25年度の夏までに実施して基礎データを得る。なお、照射試料はリソグラフィー法によって試作中である。 一方、小型で集束性が良い初期電子ビーム供給のために、小型電子銃の設計を行う。電荷量は0.1fC以下で良いので、直流電圧印加、紫外線励起フォトカソードを基本とし,マイクロバンチ化はスリットと電圧掃引の組み合わせを、第一候補としている。 平成26年度には、電子銃から加速空間、照射実験部までの要素を吟味して,光結晶加速器の設計指針を確立する。それを基にして試作機の設計を行い具体化につなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
光学損傷試験用レーザー(他の研究にも使うために移設した)のKEKへの移設が計画よりも遅れたために、当初予定していた測定が遅れた。それに伴い、実験装置の準備が遅れたために「次年度使用額」が発生した。 次年度は,遅れを取り戻すためと対外発表のために、以下のように使用することを計画している。 ○加速器の構造を試作した石英結晶の光破壊耐力と加速電界強度および分布の測定を行うために必要な光学部品(干渉計用反射鏡、対物レンズ)を購入する(20万円)。 ○リソグラフィーによって試料を作成するための作業費(30万円)。 ○数値計算を行うためのソフトウエア購入(20万円)。 ○国内外の学会で発表のための旅費。(80万円)
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