2012 Fiscal Year Research-status Report
金属微粒子を集積化したカラークリスタルの成長過程の単一微粒子検出によるその場観察
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24510141
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Genesis Research Institute, Inc. |
Principal Investigator |
武田 佳宏 株式会社コンポン研究所, その他部局等, 研究員 (80557744)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カラークリスタル / 金属微粒子 / タンパク質結晶 / 集積化 / レーザーアブレーション / 位相差顕微鏡 / ミー散乱光 / ゼータ電位 |
Research Abstract |
タンパク質結晶に金属微粒子を包埋した構造体(カラークリスタル)を作製する方法を開発し、この方法を応用して金属微粒子の集積化、機能化に関する技術を開拓することを目標としている。そのためにまず、カラークリスタルに金属微粒子が集積化されるダイナミクスの解明を行った。まず、様々な金属微粒子のタンパク質結晶への取り込み機構を解明することを試みた。そのため、レーザーアブレーションでロジウム、パラジウム、白金、銀の微粒子を作製し、TEM観察とEDX成分分析を行った。TEM観察結果、各サンプルとも粒子の大きさは一定ではなく、5nm-数10nmと様々なサイズの球形粒子が混在していた。また、EDXの結果、金属微粒子自体は酸化せず、金属の状態で存在していることが分かった。 次に、レーザーアブレーションで作成した金属微粒子を使って、ゼータ電位のpH依存性の異なる2種類の金属微粒子を調整し結晶へ集積化した。その結果、ゼータ電位の値が小さい金属微粒子がより集積化されることを見出した。この結果より、金属微粒子とタンパク質結晶表面との相互作用は疎水性相互作用である、との示唆を得た。 さらに、光学顕微鏡を用いて、金属微粒子の集積化のダイナミクスを調べるために、結晶成長と金属微粒子を検出する顕微鏡システムを作製した。リゾチームの正方晶系結晶の{101}面の単位ステップの検出のために、位相差光学素子を倒立型顕微鏡に組み込み位相差顕微鏡を構築し、位相差像を得ることに成功した。さらに、ガラス表面上に分散させた金微粒子を試験試料として、単一金微粒子からのミー散乱光の検出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光学顕微鏡を用いて、金属微粒子の集積化のダイナミクスを調べるシステムを試みて、順調に光学系を構築することができた。 位相差顕微鏡の構築について 光学顕微鏡の横方向の分解能は光の波長の制限を受け,サブミクロン程度である。しかし、位相差顕微鏡は位相差の小さな物体の検出に優れており、おおよそ1/1000波長程度の光路差まで検出可能である。可視光では、ナノメートル以下の凹凸の検出が原理的に可能である。リゾチームの正方晶系結晶の場合、{101}面では、単位ステップは1分子高さの2.8 nmであるので、単位ステップの検出は十分可能である。そこで、結晶の単位ステップを検出するために位相差顕微鏡を作成した。具体的には、位相差光学素子を倒立型顕微鏡に組み込み位相差像を得ることに成功した。さらに、観察結晶面以外からの反射光を除去するために観察する結晶面に対して結晶底面や観察セル底面を傾けるなどの工夫を行った。 金属微粒子またはその集合体の検出のための暗視野顕微鏡の構築 金属微粒子を使う利点として、1、単一の金属微粒子の検出が容易。 2、集合した金微粒子からのミー散乱は赤方偏移するため、ミー散乱の分光によって金属微粒子の集合離散状態の検出が可能。 3、色素のような退色現象はなく、長時間のその場観察が可能な点が挙げられる。これらの利点を利用して、暗視野顕微鏡による単一金属微粒子またはその集合体からのミー散乱の分光システムを構築を試みた。すでに倒立型顕微鏡に設置済みの分光器とペルチェ素子冷却方式のCCDカメラの動作を確認し、ガラス表面上に分散させた金微粒子を試験試料として、単一金微粒子からのミー散乱光の検出を行った。さらにこの散乱校の分光システムを構築中である。
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Strategy for Future Research Activity |
位相差顕微鏡の構築:これまでに構築した位相差顕微鏡を用いて、リゾチームの正方晶系結晶の場合の{101}面において、1分子高さ2.8 nmの単位ステップの検出を行う。 金属微粒子の検出のための暗視野顕微鏡の構築:暗視野顕微鏡による単一金属微粒子またはその集合体からのミー散乱の分光システムを構築する。具体的に述べると、粒子からのミー散乱光を対物レンズにより検出する。分光に要する時間は数秒以下である。よって十分な時間分解で核形成をモニタリングできる。核形成反応が見えない場合、ペルチェ素子を利用した温度可変の恒温セル内で、強制的に核発生させるため反復回分晶析を行う。 温度可変の恒温セルの作成:ペルチェ素子を使った温度制御可能な結晶チャンバーの作成を行う。ペルチェ素子で温度制御された恒温ステージ上に2枚のカバーガラスを用いて観察用セルを作製する。観察用セルは幅150 マイクロメートル、セル体積50 マイクロリットルの大きさで、この内部で結晶成長を行わせる。この程度小さなマイクロセルであれば、結晶成長をかく乱する対流を抑えることができる。その後、結晶と溶液の自由界面での成長を観察する。核形成や結晶面成長の速度を制御するために0.1℃の誤差で温度制御できるようにする。さらに、セル内の温度を上げることにより、結晶のエッチングを行い、2次元核形成や渦巻成長が起こっている部位の直下にある金微粒子を探し、金微粒子の吸着と結晶表面成長様式の相関を検討する。 複合顕微鏡システムの構築:位相差顕微鏡と暗視野顕微鏡を一台の光学顕微鏡に組み込む。この2つのシステムを切り替えるには、コンデンサと対物レンズを組み替えが必要である。一方、通常のリゾチーム結晶表面の2次元核の成長の速度を抑えれば、位相差顕微鏡と暗視野顕微鏡を切り替えは、時間的に可能である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
顕微鏡のステージ上で結晶を成長させ、リアルタイムで結晶成長過程と金属微粒子取り込み過程を観察するための結晶成長チャンバーに研究費を使用する。 ペルチェ素子を使った温度制御可能な結晶チャンバー:800,000円
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Research Products
(2 results)