2012 Fiscal Year Research-status Report
選択的ガス吸着を示す多孔性配位高分子におけるゲスト-ホスト相互作用の解明
Project/Area Number |
24510154
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
久保田 佳基 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50254371)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 選択的ガス吸着 / 粉末未知結晶構造解析 / 精密電子密度解析 / マキシマムエントロピー法 / 放射光粉末回折法 / Metal-Organic Framework |
Research Abstract |
高い構造柔軟性を持つInterdigitate型多孔性配位高分子はゲートオープン型吸着挙動を示し、吸着開始圧の違いを利用したガス分離材への応用が期待されている物質である。最近、CO2/CH4分離材の候補として[Cu(dhbc)2(L)]n(L=bpy, dpa, dptz)が合成された。合成直後のbpy化合物は、隣接するdhbc分子間のπ電子相互作用により分子が積層した結晶構造を持ち、結晶内に大きさがおよそ3.6Å×4.2Åのナノ細孔を持つ。これらの物質へのCO2吸着量は、配位子Lの長さに応じて増加することが期待されるが、実際にはdpa化合物の吸着量が予想以上に多い。そこで、dpa化合物が持つ高いCO2吸着能を理解するために放射光粉末回折実験ならびに粉末未知構造解析を行った。 粉末回折実験はSPring-8 BL02B2において大型デバイシェラーカメラとガス・蒸気圧力制御システムを用いて行った。構造決定にはシミュレーテッド・アニーリング法による実空間法やMEM/Rietveld法を用いた。 始めにdegas状態での結晶構造解析を行った。Rietveld解析による構造精密化の信頼度因子はRwp=2.62%、RI=5.44%であった。得られたdegas状態の結晶構造は、分子間の隙間を埋めるように充填した、細孔がない状態のいわゆるClosed-form になっていることがわかった。一方、CO2吸着状態の結晶構造解析は、指数付けを経て、現在構造決定のプロセスを進行中である。今後、この構造精密化の後、精密電子密度解析を行い、ゲスト-ホスト相互作用の観点から特異的なCO2吸着の機構を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はInterdigitate型多孔性配位高分子 [Cu(dhbc)2(dpa)]nのdegas状態の結晶構造を明らかにした。しかし、CO2吸着状態については、当初目標として掲げている精密電子密度解析や静電ポテンシャルまでは完了していない。 本研究では構造柔軟性を示す新規物質を扱う場合が多く、基本的に粉末未知構造解析が必要である。多孔性配位高分子は、配位結合や有機分子が持つ構造の柔軟性に起因した多自由度の構造を持つため構造決定において独特の難しさがある。 現在までの研究においていくつかのデータの解析を行っているが、質の高い粉末回折データを測定することはできているものの、指数付けや構造決定の段階でつまづいて解析を先に進めることができないケースがみられる。本研究課題を遂行するためにはこの困難を克服することが是非とも必要であり、ソフトウエアや大容量計算のためのコンピュータといった道具立ての整備をしながら研究を進めている。 以上より現在まで研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の[Cu(dhbc)2(dpa)]nおよびその類縁化合物については静電ポテンシャル解析までの一連の解析を完了し、得られた知見より選択的吸着能について考察する。それと同時に今後はさらに、選択的吸着を示す種々の多孔性配位高分子に研究を展開する、例えばテレフタル酸を配位子とするある多孔性配位高分子は相互貫入型の構造を持ち、骨格同士がスライドすることにより細孔が生成・消滅する。この系も選択的吸着を示すことが知られており、構造柔軟性との関係が注目される。テレフタル酸の多孔性配位高分子については放射光粉末回折実験をすでに行っており、今後結晶構造解析を進めていく予定である。また、上記が順調に進んだ場合は、同系の化合物に対して金属や配位子の置換が構造柔軟性や吸着特性に及ぼす影響を調べ、選択的吸着機構の解明につなげていきたい。 一方、粉末未知構造解析の手法については、これまで、シミュレーテッド・アニーリング法を用いた実空間法を採用しているが、多孔性配位高分子のような多自由度の系に対しては遺伝的アルゴリズム(GA)も効率的な構造探索が可能な有望な方法と考えられる。GAについてもソフトウエアを作成・整備し、実際の解析に適用しながらノウハウを蓄積する。そして、指数付けも含めた一連の粉末未知結晶構造解析法を確立し、本題である多孔性配位高分子の精密結晶構造解析を加速させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に引き続き次年度は、選択的吸着を示す種々の多孔性配位高分子に展開し、そのdegas状態およびガス吸着状態の結晶構造を電子密度レベルで明らかにし、ゲスト-ホスト相互作用の観点から選択的吸着の機構を議論する。次年度研究費は以下のように使用する計画である。 新たな物質について,ガス吸着状態を含めた粉末回折データ測定のためにSPring-8など放射光施設への出張旅費に使用する。 また、実験に要するキャピラリーなどの消耗品の他に、指数付けや構造決定のための計算用コンピュータ購入に用いる。指数付けや構造決定の計算は、多数の回折データの解析に対してパラレルで計算可能である。つまり、コンピュータの数が増えればそれだけ多くの探索、計算が可能となり、より効率的かつ迅速に解析が行えると期待される。 さらに、研究成果の発表については論文発表とともに学会や研究会で積極的に発表して行く。そのための出張旅費に使用する。
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Research Products
(10 results)