2013 Fiscal Year Research-status Report
選択的ガス吸着を示す多孔性配位高分子におけるゲスト-ホスト相互作用の解明
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24510154
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
久保田 佳基 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50254371)
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Keywords | 選択的ガス吸着 / 粉末未知結晶構造解析 / 実空間法 / 精密電子密度解析 / Metal-Organic Framework |
Research Abstract |
多孔性配位高分子(PCP)の構造柔軟性を利用したガス分子の選択的吸着特性に着目して、PCPのX線結晶構造解析を行ってきた。今年度は酸素分子が吸着したCuCHD (Cu-cyclohexanedicarbo-xylate)ついて論文発表した。酸素分子O2は、分子間力に静電的相互作用と同程度の大きさの磁気的相互作用が働くため、制限された空間内で形成されるO2クラスターの構造と磁性の関係に興味が持たれる。CuCHDに吸着したO2分子は、30KでH型のダイマーを形成し、温度上昇に伴いShifted parallelのS型に配列が変化することがわかった。これらの配列は磁気的相互作用を考慮した計算結果とコンシステントであり、磁化率の温度依存性と強磁場磁化過程のメタ磁性的振舞いをうまく説明した。一方、先行研究で行ったPCP CPL-1の磁化測定のデータと比較すると両者のギャップパラメータは大きく異なっていた。この違いは両物質の骨格の構造柔軟性とO2分子が細孔から感じるポテンシャルに依存し、小林らが提唱したO2分子の磁場誘起再配列機構により統一的に説明できることがわかった。 また、昨年度より行っているInterdigitate型PCP [Cu(dhbc)2(dpa)]n(dhbc=2,5-dihydroxy benzoic acid、dpa= di-(4-pyridyl)acetylene)のCO2吸着状態の結晶構造解析については、吸着ガス分子の精密な位置決定には至っていないが、おおよその骨格構造はわかった。通常のInterdigitate型PCPに見られる配位子同士のπ-π相互作用による結合状態とは異なり、この物質では配位子の間にも細孔が形成され、全体の吸着量が多くなっていると示唆された。吸着分子の位置も含めた結晶構造を明らかにするべく解析を進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、CuCHDに吸着した酸素分子の磁気的状態に対応した分子配列を明らかにし、既報のCPL-1の結果との対比により構造柔軟性と分子配列との関係を説明することに成功した。 一方、Interdigitate型PCP [Cu(dhbc)2(dpa)]nについては、degas状態の結晶構造を明らかにすることができた。CO2吸着状態については骨格構造が明らかになりつつあるが、吸着分子の精密な位置決定には至っていない。 質の高い粉末回折データを測定することはできているものの、指数付けの段階でつまづいて解析を先に進めることができないケースがみられる。構造決定については、種々の粉末未知構造解析法を用いているものの、吸着分子のパラメータが増えることによりさらに難しくなっている。これを解決するためには計算能力をアップすることが必要である。構造決定に成功すれば、構造精密化から精密電子密度解析や静電ポテンシャル解析はスムースに進むものと予想される。 以上より現在まで研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の[Cu(dhbc)2(dpa)]nのCO2吸着構造については、引き続き吸着分子の位置決定を目指して解析を進める。構造精密化ができれば、その後、MEM電子密度解析および静電ポテンシャル解析を行い、骨格構造の変化から選択的吸着能について考察する。 一方、相互貫入型骨格構造を持つPCP [Cu2(tp)2(bpy)]n(tp=terephthalic acid、bpy=4,4’-bipyridine)は高い構造柔軟性を示す。CO2吸着等温線の測定よりゲート吸着効果を示すことが知られており、degas状態から吸着中間状態を経て飽和吸着状態へ至る2段階の構造変化を生じることが示唆されている。Degas状態の結晶構造については、放射光粉末回折データに未知結晶構造解析法を適用して、細孔が閉じたいわゆるClosed-formの状態を明らかにしている。CO2吸着状態については、現在、吸着等温線のステップの位置に対応する吸着中間状態の結晶構造解析を行っている。現在のところ吸着CO2分子の位置までは明らかになっていないが、骨格構造についてはおおよその構造をつかんでおり、degas状態から吸着中間状態への骨格構造の変化が、相互貫入型した骨格同士のスライドにより生じており、骨格の変形は伴わないことが明らかになりつつある。最終年度では、吸着分子の位置決定とともに飽和吸着状態についても同様にその構造を明らかにし、吸着過程全体を通した構造変化を議論したい。 新規合成されるPCPについては随時、放射光粉末回折実験、結晶構造解析を進め、構造柔軟性とゲート吸着機構、吸着特性の関係の統一的理解につなげたい。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Spin-Dependent Molecular Orientation of O2–O2 Dimer Formed in the Nanoporous Coordination Polymer2013
Author(s)
Akihiro Hori, Tatsuo C. Kobayashi, Yoshiki Kubota, Akira Matsuo, Kouichi Kindo, Jungeun Kim, Kenichi Kato, Masaki Takata, Hirotoshi Sakamoto, Ryotaro Matsuda, Susumu Kitagawa
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn.
Volume: 82
Pages: 084703(6 pages)
DOI
Peer Reviewed
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