2012 Fiscal Year Research-status Report
省エネルギー型液晶表示を実現する革新的複合ナノ粒子の開発
Project/Area Number |
24510158
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
白石 幸英 山口東京理科大学, 工学部, 准教授 (60289303)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
液晶表示素子(LCD)は、身近な製品に使用されているが、応答速度、消費電力等に課題が残されており、その解決が望まれている。近年、その解決策として液晶に様々なナノ材料を添加することで、機能改善が試みられている。本研究では、マイクロ波/超音波照射法と加熱還流法の異なる合成法により、PβCyDで保護したZrO2ナノ粒子を調製し、これを添加した液晶の電気光学特性について比較検討した。 PβCyD-ZrO2ナノ粒子の調製は、PβCyDを保護剤に用い、ジルコニウム(IV)エトキシドのテトラエチレングリコール溶液を加熱還流および、マイクロ波/超音波照射することにより行なった。ZrO2ナノ粒子の平均粒子径は、1.6 nmで、シングルナノオーダーの均一な粒子であった。一方、加熱還流法を用い反応温度240 ℃で調製したものは3.7 nmであった。調製したナノ粒子添加液晶の駆動電圧は、ナノ粒子未添加の1.16 Vに対し、若干の低電圧シフトを示した。応答時間は、液晶に電圧をかけて立ち上がり始めてから暗表示になるまでのtonと、電圧を切り液晶が元に戻り始めてから明表示に戻るまでのtoffで評価した。加熱還流法で調製したZrO2ナノ粒子は、応答時間の改善は観られなかったのに対し、マイクロ波/超音波照射法で調製したものは、ton+toff の値が62.4 msec で5CB単体(73.8 msec)と比較し、15.5 %応答時間が短縮した。この調製法の異なるZrO2ナノ粒子のXRD測定を行なった結果、加熱還流法で調製したナノ粒子は菱面体晶と立方晶との混合物であったのに対し、マイクロ波/超音波照射法で調製したものは正方晶であった。マイクロ波/超音波照射法は、均一な種粒子が一瞬に生成するものとしてナノ粒子合成に極めて有効であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノ粒子を合成する特注のマイクロ波/超音波照射装置が故障し、装置の改造・ナノ粒子の再現性などに時間を要した。現在は復旧したので、来年度以降、新規ナノ粒子を合成し、これを添加した液晶の電気光学特性について、今年度以上のスピードで評価していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 平成25年度以降は、ナノ粒子の保護剤を種々の包接化合物(カリックスアレーン、ククルビットウリル、シクロファン等)に拡大する。直近の研究で、ククルビットウリルを保護剤に貴金属イオンを還元するとナノワイヤーが得られることを見出した。物質が液晶状態をとるためには、その物質が異方性を示す形をしていることが重要であるため、ナノワイヤーは、その異方性によりナノ粒子にない新奇な効果が期待される。 2) 電気光学的特性は、ナノ粒子を液晶に添加したねじれネマティックタイプ液晶表示素子を作成し、その電圧/透過率曲線および応答速度で評価する。ナノ粒子添加による消費電力の低減や応答速度の向上は、ナノ粒子を添加することで、液晶の配向構造に乱れを生じ、系が柔軟になっているためと予想される。ナノ粒子添加液晶の、回転粘性率、弾性率、誘電率、などの諸物性を測定し、ナノ粒子添加液晶系の機構解明を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、ナノ粒子の調製を行うマイクロ波と超音波とを同時に照射する装置の超音波発生部分の改造とナノ粒子の再現性に時間を要したため、予算執行が当初より遅れる形になり、それに従い予算の執行も遅れる形となった。しかし、現在は、再現性にも目途がたち、当初目標のナノ粒子調製まで進んでいる。このまま、再度問題が起こらなければ、平成25年度は、順調に進行するものと考えている。平成24年度の繰越金1,297,277円と平成25年度の1,300,000円を合算した2,597,277円が平成25年度の予算となる。このうち、2,300,000円を物品として執行を考えている。本研究で、使用する液晶セルは、通常のテストセル(5μm)は1枚504円であるが、液晶の高速応答用の3μmセルは、2600円/1枚で大変高額である。1回の測定に5枚を測定し平均値を求めているため、半年で、72万円(1年で144万円)を消費する。残りを試薬・溶媒に46万円、石英製の反応セルなどを含めた実験器具に40万円を予定する。旅費は、日本化学会年会等での国内学会発表として20万円、その他の予算として、残り97577円を計画している。
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Research Products
(16 results)