2013 Fiscal Year Research-status Report
省エネルギー型液晶表示を実現する革新的複合ナノ粒子の開発
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24510158
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
白石 幸英 山口東京理科大学, 工学部, 准教授 (60289303)
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Keywords | ナノ粒子 / ポリ(シクロデキストリン) / チタン酸バリウム / 垂直配向液晶 / 応答時間 |
Research Abstract |
垂直配向(VA)液晶は、電圧がかかっていない時の液晶分子をガラス基板に対して垂直に配置し、電圧をかけて液晶分子を倒すことで光量を制御する。無電圧時に黒を表現するため、画像のコントラストを高めることができる特徴があり、現在の液晶テレビでは主流の方式である。しかし、低温での応答に課題が残されており、その解決が望まれている。本研究室では、低温高速駆動液晶材料の開発に取り組んでおり、最近ポリ(γ-シクロデキストリン)(PγCyD)保護ZiO2ナノ粒子が有効であることを見出した。一方、BaTiO3は、極めて高い比誘電率を持つことから、セラミック積層コンデンサなどの誘電体材料として広く使用されている。本研究では、PγCyDを保護剤とする新規BaTiO3ナノ粒子を創製し、これを添加したVA液晶の特性について検討した。 PγCyDで保護されたチタン酸バリウム(PγCyD-BaTiO3)ナノ粒子は、Ba(OC2H5)2 とTi(OC2H5)4のテトラエチレングリコール溶液をマイクロ波/超音波照射することで調製した。キャラクタリゼーションは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察と紫外可視吸収スペクトル(UV-Vis)を用いて行った。TEM観察の結果、280 ℃で調製したPγCyD-BaTiO3ナノ粒子の平均粒子径(標準偏差)は3.8 nm(0.9 nm)で、比較的均一であった。Dandらは、最近BaTiO3ナノ粒子の超音波法による合成を報告しているが、粒子径が170 nmとかなり大きく、超音波とマイクロ波を同時に照射する本合成法は、均一なナノ粒子合成に極めて有効である。得られたナノ粒子を実用VA液晶(DIC(株))に添加した液晶デバイス(LCD)を作成し、その電気光学特性を、応答時間とコントラストで評価した。VA液晶 pureの応答時間6.1 secに対し、ナノ粒子添加で、応答時間5.2 secに、改善率は14.8%に達した。この低温における応答時間の短縮は、寒冷地対応車載液晶へのナノ粒子応用の端緒を掴んでいると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究室では、低温高速駆動液晶材料の開発に取り組んでおり、昨年度.最近ポリ(γ-シクロデキストリン)(PγCyD)保護ZiO2ナノ粒子が有効であることを見出し、さらに、今年度BaTiO3ナノ粒子でも有効であることを見出したため。
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Strategy for Future Research Activity |
種々のナノ粒子添加で、液晶の応答時間の短縮を見出したので、この機構解明を行う。ナノ粒子添加液晶の、回転粘性率、弾性率、誘電率、などの諸物性を測定し、ナノ粒子添加液晶系の機構解明を完成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年にナノ粒子の調製を行うマイクロ波と超音波とを同時に照射する装置の超音波発生部分の大幅改造に時間を要したため、H24年に予算執行が当初より遅れる形になり、それに従い予算の執行が遅れる形となった。H25年前半に再現性にほぼ目途がたったが、H25年後半に細かい微調整が必要となることが判明した。なお研究の進捗は、この装置を用いない方法でも種々のナノ粒子合成を手がけており、順調に推移している。 平成25年度の繰越金1,326,092円と平成26年度の1,000,000円を合算した2,326,092円が平成26年度の予算となる。このうち、H25年後半に微調整が必要となることが判明した装置改造を4月下旬に実施する。この費用として397,200円として使用する。残りの1928892円を物品として執行を考えている。本研究で、使用する液晶セルは、通常のテストセル(5μm)は1枚504円であるが、液晶の高速応答用の3μmセルは、2600円/1枚で大変高額である。1回の測定に5枚を測定し平均値を求めているため、72万円を消費する。残りを試薬・溶媒に60万円、実験器具に40万円を予定する。旅費は、日本化学会年会等での国内学会発表として20万円、その他の予算として、残り8892円を計画している。
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