2013 Fiscal Year Research-status Report
レーザー誘起磁気円二色性STMによるフタロシアニン分子のスピン分布マッピング
Project/Area Number |
24510159
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
高木 康多 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (30442982)
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Keywords | 走査トンネル顕微 / スピントロニクス / 磁気円二色性 |
Research Abstract |
本年度は375nmのレーザーとその波長に対応したポッケルスセルおよび前年度に購入したポッケルスセルドライバーを用いて円偏光変調法による測定を行うための装置開発を行い、レーザー誘起磁気円二色性走査トンネル顕微鏡(STM)像の取得を試みた。レーザーを用いた光路のセットアップやレーザー照射下での単結晶表面のSTM像測定には成功しているが、まだ円偏光変調法による有意な磁気円二色性を示す像の取得には成功していない。レーザーや光学機器の調整等およびSTM像の測定条件などのいろいろ変えながら像の取得を目指しノウハウを蓄積しているところである。 また既存のレーザーの375nmの波長が磁気円二色性走査STM像の取得に適切でない可能性もあるために新たに266nmの波長を持つ紫外の固体半導体レーザーの導入を計画しその仕様を検討した。既存のレーザーの光路が375nmのレーザーと兼用できるようにレーザーの本体の大きさが既存のものとあまり変わらず、また出力が大きいものという条件でTeem Photonics社のパッシブQスイッチピコ秒レーザーを選定購入し、今年度末に納入された。またそれに伴いポッケルスセルも266nmの波長用のものを購入し、新たに266nm用の光路を準備した。これらの性能評価およびレーザー誘起磁気円二色性走査トンネル顕微鏡へ適用して磁気円二色性を示す像の取得のための測定を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
レーザー誘起磁気円二色性走査トンネル顕微鏡において既存の375nmのレーザーを用いて円偏光変調法による磁気円二色性を示すSTM像の取得を目指したが現状では、まだ安定して像を得ることが出来ていない。光学機器の調整やSTM像の取得条件の問題の他にレーザーの波長が適切でない可能性もあるため、より波長が短く高いエネルギーで励起できる266nmの半導体固体ピコ秒レーザーを選定し購入した。また波長が変わるとポッケルスセルも変更する必要が出てくるため新しく266nm用のものを購入し、レーザーの光路を準備した。レーザーの納品が年度末になってしまったため、まだ266nmのレーザーを用いての本格的な磁気円二色性を示すSTM像の取得に取り掛かっていないが、光路の立ち上げが終わりレーザーの性能評価が完了次第、磁気円二色性の測定に取り掛かる予定である。 今年度は既存の375nmのレーザーを用いたが、当初の予定どおりの満足する磁気円二色性が得られていない。しかし、この波長で得られた経験は266nmのレーザーを適用するときに生かせるため、266nmのレーザーを用いた装置の立ち上げは順調に進むと予想される。X線磁気円二色性によるフタロシアニンの測定などの他の予備実験は順調に進んでいるため、今後266nmのレーザーを用いることによって磁気円二色性のSTM像が得られれば、そこから鉄フタロシアニンの測定にはいることは難しくなく最終的な目標の達成は十分可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に購入した266nmの波長の固体半導体レーザーおよびポッケルスセルを用いた光路を、既存の375nm用のものと入れ替てSTM装置に導入し、レーザー誘起磁気円二色性走査トンネル顕微鏡の円偏光変調法による磁気円二色性のSTM像を安定して取得できる技術の確立を行う。今年度の375nmレーザーを用いた測定によりレーザー照射下のSTM像を取得するための経験は得られているため、ON/OFFの周波数、照射方法など条件を変更しながら266nmのレーザーに適した磁気円二色性のSTM像を取得するための条件を確立する。磁気円二色性のSTM像が得られた後は、375nmのレーザーの結果と比較し励起レーザーの波長による違いをより詳しく分析する予定である。その後、フタロシアニン分子のMCD像測定に移り、当初の予定の分子内の磁気マッピングの測定に着手する。STMやXMCDによりフタロシアニン分子の特性は十分に調べられているためフタロシアニン分子の磁気円二色性のSTM像の測定へは比較的簡単に移行できると考えている。 一方、フタロシアニン分子の物性測定のためのXMCD測定は引き続き行う。特にフタロシアニン分子が下地の磁性薄膜に与える影響を重点的に調べる。レーザー誘起磁気円二色性走査トンネル顕微鏡による下地表面の測定と合わせて強磁性金属基板の磁気的相互作用についてより詳しく考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に必要な光学機器について、現状で所有しているものが流用できたために、予定していた費用の一部を今年度中の物品の購入に充てる必要がなかった。 次年度は266nmのレーザーおよび375nmのレーザーをともに使い、より詳しい実験を行っていくため、新たな光学部品を購入する必要がでてくると思われる。よってより必要度の高い光学部品を購入する予定である。
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