2013 Fiscal Year Research-status Report
イオン性液体と液浸対物レンズを用いた新規顕微ユニットの多面的な分光計測への応用
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24510163
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
山田 俊樹 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所ナノICT研究室, 主任研究員 (10359101)
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Keywords | 光学顕微鏡 / イオン性液体 / 単一分子分光 / 高真空 / 表面プラズモン / ラマン散乱 |
Research Abstract |
本研究の目的は、イオン性液体を屈折率マッチング媒体として用い、高開口数(NA:1.3~1.5)の液浸対物レンズを高真空中(~10-6 Torr)に置く光学配置を用いる新規顕微ユニットを様々な分光計測(蛍光検出による単一分子分光、顕微ラマン散乱分光計測、表面プラズモン顕微計測、非線形顕微計測等)への広範な応用を実証していくとともに様々な物質系に適用していくことである。本年度は昨年度に引き続き、蛍光検出による単一分子分光特に単一の蛍光体の双極子放射パターンの観測及び表面プラズモン顕微計測、ラマン散乱顕微分光、非線形光学顕微計測等の計測系の構築を進めた。 自家蛍光が小さく、不揮発性であり、屈折率が1.5でありカバーガラスの屈折率と非常にマッチングが良い、ホスホニウム系のイオン性液体を見出し、そのイオン性液体を利用することにより、高真空及び周囲ガス環境下(高純度窒素中)での単一の蛍光分子(ペリレンビスイミド)のきれいな双極子放射パターンの観測に成功した。 査読付き論文としては、Journal of Physics: Conference Series, Vol.417, pp.012056-1-4, 2013, pp.012056-1-4.が出版された。また国際会議(Collaborative Conference on Materials Research (CCMR) 2013, Jeju island, Korea)では本研究に関して招待講演を行った。 また本研究に部分的に関連する単一蛍光体周りの誘電環境の制御を試み、誘電体の周期構造である2次元フォトニック結晶を作製し、輻射場の制御に関しても発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、蛍光検出による単一分子分光特に単一の蛍光体の双極子放射パターンの観測及び表面プラズモン顕微計測、ラマン散乱顕微分光、また新規に非線形光学顕微計測等の計測系の構築を進めた。 これに伴って、イオン性液体と液浸対物レンズを用いた顕微ユニットの様々な光計測(表面プラズモン、ラマン散乱計測、非線形光学顕微計測)への応用のため、それぞれの計測に必要な様々なイオン性液体の特性評価(屈折率マッチング、自家蛍光、非揮発性の度合い)を行い、イオン性液体の選定を行った。また、屈折率マッチング媒体としてイオン性液体だけでなく、低いガラス転移温度有するポリマー(低Tgポリマー)についても探索を行った。 新規顕微ユニットを用いた蛍光を検出する単一分子分光(蛍光体の双極子放射パターンの観測)について進展がみられた。招待講演、論文発表なども行った。新規顕微ユニットの表面プラズモン、ラマン散乱計測、非線形光学計測系の構築に関しても進展した。一方、表面プラズモン顕微計測、ラマン散乱顕微計測、非線形光学顕微計測の具体的な有機・バイオ薄膜への応用に関しては少し遅れているが、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン性液体と液浸対物レンズを用いた顕微ユニットを表面プラズモン顕微計測、ラマン散乱顕微計測、非線形光学顕微計測を組み合わせた測定系を完成させ、有機薄膜あるいはバイオ薄膜に対し、具体的な系を選定し、高真空中や様々な周囲ガス環境下において、表面・界面微細構造評価を行っていく。 これらを通して、本研究の最終目標である新規顕微ユニットを様々な分光計測(蛍光検出による単一分子分光、顕微ラマン散乱分光計測、表面プラズモン顕微計測、非線形顕微計測等)への広範な応用及び様々な物質系に適用可能であることを実証していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
非線形顕微計測系の構築のためにパルスレーザーを購入した。この比較的高額なレーザーの残額として当該助成金(B-A)51250円が生じた。 次年度の研究費の使途としては、主として液浸対物レンズ、非線形顕微計測のための検出機器として光電子増倍管モジュールの購入を計画している。当該助成金(B-A)51250円は、実験と関連した少額の光学部品または試薬の購入を計画している。
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