2012 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体を用いた温度応答性ゲルレジストのナノデバイス応用
Project/Area Number |
24510174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toyama Industrial Technology Center, |
Principal Investigator |
横山 義之 富山県工業技術センター, その他部局等, 研究員 (60416154)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 温度応答性ゲル / レジスト / ナノインプリント / イオン液体 / 微細加工 |
Research Abstract |
これまでに、温度応答性高分子Poly(N-isopropylacrylamide) (PNIPAAm)に光架橋性を付与することで、フォトレジストのように光で微細パターニングでき、さらに、温度によって微細パターンが可逆的に変形する温度応答性ゲルレジストを開発してきた。しかし、このレジストは、水存在下でしか変形できず、加工サイズもμmオーダーと大きいため、細胞チップのようなバイオ分野での利用に限られていた。本研究では、熱ナノインプリント法を用いてnmオーダーの微細パターンを形成でき、水のかわりにイオン液体を用いることで、長期の乾燥・真空下でもパターン変形できる温度応答性ゲルレジストの開発を試みた。これにより、光学・電子分野での利用が期待される。 はじめに、PNIPAAmに熱架橋性を持たせ、熱ナノインプリント法による微細パターン転写と、ゲル化に必要な架橋反応を連続して行える温度応答性ゲルレジストを調製した。このレジストの塗膜に、微細な凹凸を有する金型を加熱しながら押し込み、パターン転写と架橋反応を進行させた。SEM観察により、φ500nmの微細なホールアレイが、良好に転写できていることが確認できた。 次に、微細パターン(φ500nmホールアレイ)上に、イオン液体(1-Ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)を滴下し、温度による形状変化を観察した。イオン液体中では、水中とは逆の(可逆的な)温度応答性を示した。低温側(50℃)ではレジストパターンは収縮し、規則的なホールアレイ構造が現れることで、構造色が見られた。高温側(80℃)ではレジストパターンは膨潤し、全てのホールが完全に閉じることで構造色が消失した。また、用いるイオン液体の種類によって、膨潤⇔収縮が起こる転移温度を制御できることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度の当初の計画どおり、温度応答性高分子Poly(N-isopropylacrylamide)(PNIPAAm) をベースとしたバイオレジストを用いたナノパターン変形を実施することができた。 具体的には、熱ナノインプリントでパターニングでき、転写後も温度応答性を保持し続けられるPNIPAAmベースのバイオレジストを、これまでに開発したフォトレジスト用バイオレジストの化学構造をもとに改良・合成した。さらには、ナノインプリントプロセスによる極微細パターン(50-500nm)の良好な転写条件を探索することができた。最後に、得られたナノパターンを、周囲の温度を制御することによって、イオン液体中で可逆的に変形させることができた。 また、レジストパターンに含ませるイオン液体の種類によって、応答温度や体積変化量が異なるため、実験に適したイオン液体を探索することや、電子顕微鏡で観察しながら、真空下、電子線のスポット照射によるレジストの局所加熱を利用して、特定箇所の可逆的なナノパターンを行う実験も、当初の予定通り行えた。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は、H24年度に取り組んだPNIPAAmベースのバイオレジストとは逆の温度応答性を示すポリ-ベンジルメタクリレート(PBzMA)ベースのバイオレジスト(低温では膨張し、高温では収縮する)を開発し、ナノパターン転写と変形を試みる予定である。 具体的には、熱ナノインプリントでパターニングでき、転写後も温度応答性を保持し続けられるPBzMAベースのバイオレジストを、新たに合成する。次に、合成したバイオレジストを用いて、ナノインプリントプロセスによる極微細パターン(50-500nm)の良好な転写条件を探索する。さらに、得られた微細パターンにイオン液体を含浸させ、レーザーや電子線のスポット加熱を利用した特定箇所のナノパターン変形を試みる。レジストパターンに含ませるイオン液体の種類によって、応答温度や体積変化量が異なるため、扱いやすい最適な応答温度や体積変化量を示すイオン液体を探索する。 また、H26年度以降は、H24~H25年度に得られた結果(PNIPAAmベースのバイオレジストの開発、PBzMAベースのバイオレジストの開発)を基にして、バイオレジストの電子・光学・機械分野でのナノデバイス応用を試みる。具体的には、PNIPAAmレジストやPBzMAレジストの可逆的なナノパターン変形を利用した微小ゲルアクチュエーターを用いて、半導体プロセスへの応用(形成したレジストパターンのホール径の縮小)、ナノ流体チップへの応用(ナノポンプやナノバルブといったナノ流路を制御する機構の構築)、光学デバイスへの応用(量子ドットの捕捉やアレイ化、焦点可変なナノ・マイクロレンズアレイの試作)を行う。 また、得られた結果を取りまとめ、論文投稿や学会発表などの成果発表や、特許出願を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度に、実験用の小型光 ナノインプリント装置を購入する予定であったが、本研究の主要な開発テーマであるレジスト材料の開発の進展に合わせて、H25年度の購入へと計画を変更した。そのため、H24年度に、次年度使用額が発生した。熱ナノインプリントプロセスにおける転写実験に関しては、富山県工業技術センターに既設の熱ナノインプリント装置を利用して実験を進めたが、光ナノインプリントプロセスにおいても同様の検討を行うためには、実験用小型光 ナノインプリント装置が必要不可欠である。 H25年度は、H24年度に生じた次年度使用額とH25年度に請求した助成金を合わせて、上記の実験用小型光 ナノインプリント装置の購入と、当初のH25年度の使用計画どおりの消耗品(温度応答性ゲルの合成原料および溶媒、有機合成に用いるガラス器具類、基板、ランプ・フィルター類)の購入、また、研究成果発表のための旅費と学会参加費への支出を予定している。
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