2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノサイズの多孔ゲルマニウム表面の形成と触媒機能を付与する表面修飾プロセス開発
Project/Area Number |
24510179
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
柳澤 淳一 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (60239803)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノ多孔構造 / 表面修飾 / 酸化チタン / 光触媒 |
Research Abstract |
高エネルギーガリウム(Ga)イオン集束イオンビーム(FIB)を単結晶ゲルマニウム(Ge)表面に照射することで、ナノサイズのスポンジ状多孔質構造の形成が行なわれることを最初に確認した。イオン照射量により多孔構造のサイズが変わり、また、表面からの盛り上がりの程度が変化することが再現できた。本研究の目的は、このナノ多孔質構造の表面を酸化チタンで覆い、表面積を大きくすることで光触媒機能を高効率化することにあるが、はじめから直接酸化チタンでコートすることは難しいため、金属チタン(Ti)でコートした後、そのTiを酸化させることで酸化チタンを形成する方法を試みる。このため、本年度はナノ多孔構造の表面全域をTiでコートすることを目的に研究を行なった。 通常の電子ビーム蒸着装置でTiを蒸着したところ、蒸発源に面していた方向にのみTiが蒸着され、横方向や裏面の厚さに変化がないことが走査電子顕微鏡(SEM)により確認された。この構造は、本研究の目指すものではない。 次に本年度購入した「プログラマブルスパッタコーター」を用いてGe表面に形成したナノ多孔構造表面へのTi修飾を試みた。SEM観察結果より、プラズマによるスパッタ蒸着時間が長くなるにつれてナノ多孔構造の細い繊維状構造のそれぞれが等方的に太っていくことが確認できた。これは予想をはるかに上回る変化であり、当初心配された微細構造への3次元的な修飾の問題がクリアーできたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単結晶Ge表面への高エネルギーGaFIB照射によりGe表面にナノサイズのスポンジ状多孔質構造の形成が行なわれることを最初に確認した。また、イオン照射量により多孔構造のサイズが変わり、表面からの盛り上がりの程度が変化する過去の実験結果を確認することができた。 これらの結果を踏まえ、本年度は「プログラマブルスパッタコーター」(以下、スパッタコーターと略記)を購入したので、その有効性を検証するため2年目に行なう予定であった研究を前倒しして、形成されたナノ多孔構造の表面をTiで全面コートすることを試みた。一般的にTiの蒸着に用いられる電子ビーム蒸着法によりTiをナノ多孔構造に蒸着することで得られた構造と、スパッタコーターで得られた構造とをSEM観察で比較することにより、ナノ多孔構造の変化に大きな違いが見られた。つまり、電子ビーム蒸着の場合は蒸着源に面した1方向だけに成長し、蒸着量が増すと表面全体がTiで覆われて多孔構造がつぶれてしまうのに比べ、スパッタコーターの場合には細かな繊維状のGeで形成されるナノ加工構造の1つ1つが等方的に、すなわち横方向も裏方向も同じように太っていくことが確認された。しかも、多孔構造は保持されたままであった。 以上の結果により、スパッタコーターで3次元的なコーティングができない場合のために考えていた、イオン照射前にTiを蒸着したGe表面へのイオン照射によるTiでコートされたGeのナノ多孔構造形成の実験を行なう必要がなくなり、多孔構造への3次元的なTi修飾という当初の目的が達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化チタンを、最初から酸化チタンのまま蒸着等で他の微細表面に形成することは難しいため、本研究では微細表面に形成した金属Tiを酸化させることで目的を達成することを狙っている。高エネルギーGaFIB照射でGe表面に形成したナノ多孔構造に3次元的にTiをコートする可能性が示されたため、今後は金属Ti表面を酸化させて酸化チタンを得ることを試みる。また、当初の初年度計画で達成できなかった、Ge以外の基板表面への高エネルギーGaFIB照射による効果も調べ、ナノ多孔構造の形成機構についての知見を得ることも試みる。 金属Tiの酸化には、酸素プラズマ処理を導入する。光触媒機能を持つ酸化チタンはアナターゼ型である必要があるが、この構造は低温で安定であり、高温ではルチル型となることが知られている。酸素プラズマを用いることで、基板温度を上げなくても、活性な酸素ラジカル等による酸化が行なえるため、アナターゼ型の酸化チタンを得ることが期待できる。結晶性の評価にはX線回折を用い、光触媒効果の確認には接触角計を用いる。接触角を評価することで試料表面の親疎水性が評価できるため、紫外線照射前後での接触角の測定から、光触媒効果による親疎水性の評価ができると考える。 平行して、Ge以外の基板としてGaSbやInSb基板表面に高エネルギーGaFIB照射を行なうことでナノ多孔構造を形成し、Ga基板との比較からナノ多孔構造形成機構について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に研究費の残額生じたのは、参加した国際会議が神戸であったため、交通費や宿泊費があまりかからなかったことが大きな要因である。次年度は札幌で開催されるため、当初の計画からは大きく変更されることはないと考えている。 来年度に繰り越すことができた残額は、基板などの消耗品や装置の維持に必要な部品代として有効に使うことができると考えている。
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