2014 Fiscal Year Research-status Report
ナノサイズの多孔ゲルマニウム表面の形成と触媒機能を付与する表面修飾プロセス開発
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24510179
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
柳澤 淳一 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (60239803)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ多孔構造 / ナノ微細構造 / ゲルマニウム / インジウムアンチモン / シリコン / イオン照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
100keV程度の高エネルギーの集束ガリウムイオンビーム(Ga FIB)を単結晶ゲルマニウム(Ge)基板表面に照射することで形成されるナノサイズの多孔構造の作製と制御について研究を進める中で、微細構造形成機構を解明するために、Ge以外の材料としてインジウムアンチモン(InSb)表面へのイオン照射により形成されるナノ突起構造の形成について詳細に調べた。これとは別に、単結晶シリコン(Si)基板に低エネルギーでGaイオン照射を行なうことでナノサイズの針状構造が表面に形成されることが見出された。用いたイオンの照射エネルギーは異なるものの、ナノサイズの構造形成という点では一致し、構造形成の機構解明やその応用に重要な知見が得られると思われたので、Si表面へのイオン照射についても本年度の研究に加えることとした。 InSb表面へのFIB照射量を7x10^15~7x10^17 cm^-2の範囲で行なったことで、平板状の構造から山脈状の構造を経て、独立した突起構造に成長していく様子が観測された。照射領域の深さは、照射量とともに深くなった。同じ照射量でも、ビーム電流、ビーム走査速度(滞在時間)と繰り返し回数が異なると、掘れる深さも、形成される構造も異なることが確認された。 Si基板については、0.5~4 keVの照射エネルギーでGaイオン照射を行なったが、特に低エネルギー照射の場合に表面荒れが大きく、照射量が大きくなると針状構造が顕著になることが確認された。Si単結晶基板へのイオン照射において、これまでアモルファス化による体積膨張で表面隆起が起こる報告はあったが、表面荒れは報告されてこなかった。半導体の中で工業的に一番良く使われ、特性評価も調べつくされたであろうSiについて、これまでに報告されてこなかった微細構造形成が観測されたことを見出した意義は大きく、さらに詳細に調べる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
半導体表面へのイオン照射で形成するナノ多孔構造の制御を行ない、その表面を光触媒機能を持つ材料でコーティングすることで大きな比表面積を持たせ、光触媒機能の高効率化を行なうことを最終目的としている。これまでにイオン照射によるナノ多孔構造の形成について調べ、Ge表面へのナノ多孔構造の形成については制御性良く行なうことができ、その表面を一様にチタン(Ti)金属でコーティングすることができることを示している。構造制御のためにはその形成機構を明らかにすることが必要と考え、他の半導体材料でもイオン照射を試みている。また、光触媒機能の評価として用いる接触角の測定方法に対し、長時間の測定に耐えられるよう、水滴の蒸発を防ぐような測定方法の改良を行なった。 InSb表面については、7x10^15 cm^-2では表面が盛り上がり、1μm程度の板状の構造が形成され、7x10^16 cm^-2程度で突起状となり、3x10^17 cm^-2から大きくなるにつれて深く掘れながら突起構造が鋭く成長していくことが確認され、イオン照射による構造制御の可能性を示すことができた。イオン照射によるスパッタと再付着によるものと考えられるが、突起構造の組成分析を進める必要がある。 新たに見出されたSi表面の針状構造については、0.5から2 keVのエネルギーで表面荒れが起こり、3 keV以上では滑らかになる。後者については表面から奥深くにイオンが打ち込まれることによると考えられるが、低エネルギーの場合についての考察は課題として残る。 形成したTi金属表面を酸化してアナターゼ型の構造にすることについては、低温プロセスが可能と思われる酸素プラズマによる酸化方法を試みることが今後の課題として残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
InSb表面へのナノ突起構造の形成については、FIB照射面積を変えたときの突起間の間隔や突起構造の周期性の変化を確認し、さらに突起自身の組成をX線光電子分光またはオージェ電子分光法により確認して、イオン照射によってこのような構造が形成される機構について考察を加えていく。 Si基板表面に形成される針状構造については、照射エネルギー、照射量、イオン電流や基板の面方位の違いによる形成の様子をまず明らかにし、構造制御の可能性を調べる。その表面構造の特徴として、表面の濡れ性を接触角測定により明らかにしたり、表面の光反射特性を評価することで、例えば太陽電池パネルのSi表面に加工を施すことで太陽光利用率の向上などへの応用の可能性を探る。 金属Ti表面の酸化については、低温で安定なアナターゼ型の酸化チタンを形成するため、酸化が促進されることが期待できる酸素プラズマを用いた酸化方法を検討する。酸素プラズマによる酸化については、酸化膜形成と酸素イオンによるスパッタとの競合が考えられるが、これまでにあまり報告がないと思われるので、酸化の可能性を実験的に明らかにする。アナターゼ型の確認については、学内から移設するX線回折装置によって、参照試料との比較により評価する。形成された酸化チタン表面の光触媒の特性については、接触角の紫外線照射による変化により確認し、その酸化条件をGe表面にイオン照射で形成したナノ多孔構造にTiをコーティングした試料に適用し、ナノ多孔構造導入による光触媒の機能性向上について確認する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究成果により、これまでの報告にはない現象が見出されたが、これは当初の実験内容と密接に関係する現象なので、この新規現象を確認する研究を行なったため、未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の成果から得られた新しい結果を発展させるための消耗品費と、国内での学会発表のための旅費、学会参加費に充てる。
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