2012 Fiscal Year Research-status Report
分子レベルのナノ構造を用いた自己修復性光デバイスの開発
Project/Area Number |
24510180
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
斉藤 光徳 龍谷大学, 理工学部, 教授 (60205680)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 色素 / ポリマー / 光学材料 / 耐久性 / 分子拡散 |
Research Abstract |
発光・変色など優れた光学機能を示す有機色素は、一方で劣化しやすいことが欠点である。この欠点を克服し耐久性のある光デバイスを作製することを目的に、生体のように古い組織が新しい組織に置換される新陳代謝機能を備えた光学素材を開発した。 色素を分散するマトリクスとして、ポリジメチルシロキサン(PDMS、シリコーンゴム)の利用を検討した。PDMSには分子レベルのナノサイズ自由空間が存在し、これを通して分子が固体中を移動することが知られているが、光学機能を示す色素についてはこれまで研究が行われていなかった。ジシアノメチレン(DCM)やジアリルエテンなどの色素を用いて実験を行った結果、これらの色素をトルエンに溶かしてPDMS中に分散させると均質な素材が作製できることが分かった。さらに、トルエンはPDMSオイルをゴム状に硬化させた後でも内部に浸透しやすく、その際に色素分子も同時にPDMS中に拡散していくことが明らかになった。 この拡散現象を詳しく調べるため、トルエンで膨潤させたPDMS中にフォトクロミック反応(光照射による色素の変色反応)を示すジアリルエテンを分散させた試料を作製し、部分的に紫色レーザを照射して色素を赤色に着色させながら、その色素が周囲に拡散していく様子を分光測定によって観察した。その結果、1時間程度で数mmの範囲まで色素が移動することが分かった。全体を均一に着色した試料に緑色レーザを部分的に照射して脱色させる実験(上記と正反対の実験)においても、脱色した色素が周囲に拡散していき、代わりに周囲の着色色素が流入してくることが明らかになった。また、トルエンの含有量を増やすことによって、拡散速度が上がることも分かった。 これらの実験結果より、作製したトルエン膨潤PDMSが、新陳代謝機能を実現する固体マトリクスとして有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PDMS中で分子拡散が起こることは研究開始前から分かっていたが、それが光学的耐久性を高めるのに十分な程度であるか否かは疑問であった。PDMS単独の場合は十分な拡散速度を得ることができなかったが、トルエンを大量に混ぜて膨潤させることによりこの問題を改善できた。このことは、課題を達成するうえで重要な足がかりとなったので、初年時の研究成果としては満足いくものと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
トルエンで膨潤させたPDMSによって十分な分子拡散速度が得られたことを踏まえ、劣化した色素分子を新鮮な分子で置き換える新陳代謝の実験を本格化させる。また、前年度のフォトクロミック色素に加え、蛍光色素についても同様の試料を作製し、レーザ発振時の耐久性向上を目指す。 本研究のもうひとつの目標として掲げている、自己修復性を持つ光インターコネクションについても、前年度に開発した試料を利用できると考えられるので、新たに光学系を組み立てて実験を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品としては、評価実験を行うためのレーザ分光システムを購入する。消耗品は、前年度とほぼ同様に薬品類・実験器具・光学部品などを購入する。長時間にわたる実験を補助させるため、学生アルバイトを謝金で採用する。学会で成果発表を行うための出張旅費、および論文投稿料の出費も予定する。
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