2013 Fiscal Year Research-status Report
自然災害時の人道援助ロジスティクスにおける在庫モデルの開発
Project/Area Number |
24510184
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
花岡 伸也 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (90467027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 智也 日本大学, 理工学部, 助教 (30705702)
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Keywords | エージェントベースモデル / TOPSIS法 / 欠乏費用 / 緊急支援物資配分計画 |
Research Abstract |
研究実施計画のとおり,平成25年度は災害時における人道援助ロジスティクスのシミュレーションモデルを構築した.加えて,モデルを用いて,東日本大震災をケーススタディとした災害時の緊急支援物資配分計画について検討を行った. 災害後には,救援活動に携わる多くの援助団体や支援物資輸送業者が互いの行動を調整せずに活動しており,それが救援物資の供給不足や供給過多など非効率な救援活動の原因となっていることが過去の国内外の災害事例から明らかになっている.そこで,エージェントベースモデルの理論を用いて,人道援助ロジスティクスの一つとして緊急支援物資配分計画モデルを構築した.配分費用の定式化においては,輸送費用だけでなく,避難所まで支援物資が届かず需要が満たされない状況を欠乏費用(Deprivation Cost)(Holguin-Veras et al., 2012)として考慮した.各避難所へ支援物資を配分する緊急度は,多基準分析の一つであるTOPSIS法を適用した.また,援助団体や輸送業者の活動を調整する「コーディネーション組織」がエージェントの一つとして存在すると仮定した.モデルの解法として列挙法と分解法を適用し,東日本大震災をケースとして分析した結果,列挙法では緊急度を考慮しなかったことで発災後初日と2日目で輸送費用が変わらないものの,分解法では緊急度を考慮し日によって輸送費用が変化することを示した.また,配分に用いるトラック数が増えるほど欠乏費用が低下し,緊急度による輸送費用の差も小さくなった.つまり,トラック配分数を増やすことで配分の緊急度を考慮する必要がなくなることを示した.この分析結果より,災害時の緊急支援物資配分計画の検討において,エージェントベースモデルの適用が有効なことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画において,平成25年度は「人道援助ロジスティクスのシミュレーションモデルの開発」を実施予定であり,その目標を達成した.平成26年度はシミュレーションモデルをベースにケーススタディを実施する予定であったものの,平成25年度中に東日本大震災を対象としてケーススタディを実施した.以上より,現在までに当初の予定を前倒ししていることから,「当初の計画以上に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,平成25年度に構築したシミュレーションモデルに基づき,ケーススタディを追加的に行う.平成25年度で既にケーススタディを実施したが,災害は国や地域によって経済状況,インフラの整備レベル,被害の規模など事情が異なることから,異なる災害を対象にシミュレーションモデルを適用してモデルの汎用性を確認するとともに,災害時の物資配分計画の示唆を得る予定である.また,ケーススタディの結果を見ながら,モデルの改良も実施する予定である.
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