2012 Fiscal Year Research-status Report
戦略的顧客に対する商品設定とサービス提供方策の研究
Project/Area Number |
24510202
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
増田 靖 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10286643)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 経営システム / 経営科学 / 価格設定 / 戦略的顧客 / ゲーム論 / 国際情報交換:米国 |
Research Abstract |
本研究のテーマは戦略的顧客に関する研究にある。 ネット上(ダウンロード方式)で販売されている電子書籍や音楽などのデジタル商品は、流通費用などを含めた変動生産費用が限りなく小さく、また品切れが起こることもない。その意味で、デジタル商品は、通常の物理的な商品(モノの商品)と著しく性質を異にしている。戦略的顧客は商品の値下げを待つことがあるが、売り手の価格戦略と顧客の戦略的購入行動の相互作用は、デジタル商品とモノの商品とでは自ずと変わってくる。平成24年度は、デジタル商品販売における、売り手と買い手の相互作用を部分ゲーム完全ナッシュ均衡の概念をもとに分析した。動的価格設定の分野で過去数十年に渡って積み重ねられてきた研究をベースに、近年重要性を増しつつあるデジタル商品の価格変動の性質を明らかにすることにより、動的価格設定の理論にさらなる知見を加えることができた。さらに、高い利益を出すために、売り手がどのようにデジタル商品を売るべきかについても提案している。なお、本研究は、米国の研究者との共同研究である。 また、テーマパークなどの施設における、顧客の混雑回避の戦略的行動についての分析を深めた。混雑し過ぎているサービス施設の顧客を他の施設に回すことにより、顧客全体に対するサービス品質を向上させることが目的である。顧客を適切に誘導するために、サービスの優先権を使う。このサービス優先権を適切に配布することにより、戦略的な顧客らの均衡行動をコントロールし、施設全体での効率性を上げる方法を提案した。 さらに、競合他社へのライセンス供与のゲーム論的分析と、不透明販売と呼ばれる方法による市場セグメント化戦略の分析も進んでおり、前者に関しては、国内学会で中間結果の報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「デジタル商品販売における戦略的顧客と価格設定の問題」については、平成24年度中に、主要な結果を得ており、学会での口頭発表を行った。本研究は、国際一流学術誌投稿の準備が進んでいる。「優先権配布による混雑制御の研究」は、平成24年度中にすでにまとまっており、国際一流学術誌への投稿の準備がほぼ終わっている。また、平成25年に国際学会での招待講演が決まっている。 さらに、「研究実績の概要」で述べた他の2つの研究プロジェクトについても、順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
「デジタル商品販売における戦略的顧客と価格設定の問題」と「優先権配布による混雑制御の研究」の研究は、ほぼまとまった段階にあるので、これらを最終的に仕上げて投稿する。 また、他の2つのプロジェクトに関しては、分析と数値実験をさらに進める。特に、「不透明販売による市場セグメント化戦略」については、解析が進んでいない部分があるので、その部分を推し進める。「競合他社へのライセンス供与の問題」は、プロジェクトの前半部分は分析が終わっているので、その部分をまとめ上げ、後半に取りかかる。 さらに、「デジタル商品販売における戦略的顧客と価格設定の問題」から派生した問題があるので、それをもとに新しいプロジェクトを立ち上げる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「優先権配布による混雑制御の研究」を、平成25年7月に第26回オペレーションズリサーチ・欧州コンファレンス(EURO-INFORMS)(イタリア・ローマ)で発表する予定である。また、「デジタル商品販売における戦略的顧客と価格設定の問題」については、平成25年10月のオペレーションズリサーチ経営科学学会(米国・ミネアポリス)において、発表を予定している。なおオペレーションズリサーチ経営科学学会(INFORMS)は、経営科学分野の主要な研究成果発表学会である。平成24年度同様に、計算実験も予定している。 研究費は、研究成果発表と計算機上でのモデル実装と計算実験に充当される。
|