2013 Fiscal Year Research-status Report
企業の成長を決定づける企業規模量に関する研究とその応用としての企業の成長戦略
Project/Area Number |
24510212
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Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
石川 温 金沢学院大学, 経営情報学部, 教授 (90308627)
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Keywords | 経済物理学 / 反転対称性 / ジブラ則 / ベキ分布 / 成長則 / 企業 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本および世界各国の詳細な企業財務データを用い、様々な企業規模量の成長則を明らかにすることである。分析対象とする企業規模量としては、企業の売上・利益・資産・従業員数などに加え、詳細な財務データより計算可能となる、各企業の生み出す付加価値や各企業の技術力を考える。これら企業規模量の成長則を種類別に分析することにより、企業や国にとって最も重要な付加価値の成長が、技術力・資産・従業員数など、どの企業規模量に起因しているかを統計的に明らかにする。 当該年度は、ビューロヴァンダイク社作成の“世界各国の企業財務データベース(ORBIS)”を利用して以下を実行した。 経済学では多くの場合、コブ-ダグラス型と呼ばれる関数で、資産と労働力により生産が決定されると考える。これまでの我々の研究により、それら変数間に観られる準空間反転対称性とジブラ則により、生産関数がコブ-ダグラス型になる理由が説明された。そこでは、2変数の同時分布に観測される準空間反転対称性の対称線は、データの平均値を用いる簡単な手法で決定されていた。今回我々は、地形図の尾根谷を測定する指数(地表開度)を用いる地形学的アプローチにより、より厳密に対称線を決定した。その結果、解析的に導いた同時分布関数の正確な記述が正しいことを、日本を含む12カ国のデータを分析することにより、数値的に確認することが出来た。この手法を3変数に拡張することにより、3変数の同時分布に観測される準空間反転対称性の対称平面も今まで以上に正確に決定することが出来、企業の技術力がより正確に評価可能になると期待される。 また同時に、ビューロヴァンダイク社作成の“世界各国の特許に関するデータベース”を分析することにより、企業の技術と特許出願件数に緩やかだが無視できない相関があることを見出し、企業の技術力に関する理解を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度以前の研究では、詳細で網羅的な日本の企業財務データベースを用い、資産・従業員数データの時間反転対称性・成長率分布の形状・(非)ジブラ則・ベキ則(ベキ指数)・対数正規分布(標準偏差)などを観測し、各分布パラメータの測定分析を終えた。また、各企業の産み出す付加価値・技術力を算出した。 当該年度の研究では、以下を明らかにした。コブ-ダグラス型の生産関数を用いて各企業の技術力を算出するには、コブ‐ダグラス生産関数のパラメータを正確に決定する必要がある。我々の研究では、それは3変数の準反転対称性の対称平面を正確に決定することと等価である。当該年度の研究により、地形図の尾根谷を測定する指数(地表開度)を用い、2変数の準反転対称性の対称線を厳密に決定することが出来ることを示した。これを3変数に拡張すれば、厳密に対称平面を決定できると期待される。 一方、企業が有する出願特許数に関する分析を始め、企業の技術力と出願特許数に相関があることを明らかにした。 以上の2方向の研究は、日本以外の複数の国の企業に対して行われており、当初の計画より進展している部分と遅れている部分が混在している。当初の計画に無かった特許に関する研究も進めていることも考えあわせ、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、様々な企業規模量の成長則を明らかにすることである。これまでの研究では、数年から十数年の短期的な成長則にのみ注目してきた。今後は、これまでの研究に加え、数十年から百年の長期間の企業規模量の成長にも注目することを考えている。そこには短期的なものとは異なった成長則が観える可能性がある。現在、幾つかの新しいデータベースを用い、その分析を進めている。そこでは、企業の年齢や死亡率が重要な変数となってくると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度、一昨年度の体調不良が完全には回復しなかったため、計画通りの研究打合せおよび研究発表を行うことができなかった。そのため、次年度使用額が生じた。 体調は回復してきているので、当該年度に十分に実施することが出来なかった研究打合せおよび研究発表を行うための旅費に充てる。
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