2012 Fiscal Year Research-status Report
女性における荷物取り扱い作業時の身体的負担に関する研究
Project/Area Number |
24510215
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
佐藤 望 近畿大学, 社会学部, 准教授 (60268472)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 荷物取り扱い作業 / 生体負担 / 性差 / 労働衛生 |
Research Abstract |
単独で荷物取り扱い作業を行う際の身体的負担における性差を明らかにするために、以下の方法で実験を遂行した。 対象者は成人男性12名(平均年齢22.58歳)、成人女性11名(平均年齢20.73歳)であり、書面により同意を得た上で実験に参加してもらった。対象者には、縦32.5cm、横43cm、高さ23.5cm、重さ6㎏の箱を用いて持ち上げ作業、持ち下げ作業、移動作業、運搬作業を行ってもらった。持ち上げ作業では床面に設置された箱を持ち上げ、高さ70cmの台上に置いてもらった。持ち下げ作業では高さ70cmの台上に置かれた箱を持ち、床面に置いてもらった。移動作業(体幹の捻りを伴う作業)では対象者の正面から右に30°および左に30°の方向に高さ70cmの台を2つ設置し、左右いずれかのに台上に箱を置いた。対象者は箱を持ち、もう一方の作業台に移動させた。運搬作業では床面に置かれた箱を持ち上げ、上肢を伸ばした姿勢で保持し、5m直進し、高さ70cmの台上に置いてもらった。測定指標として表面筋電図(上腕部、肩部、背部、大腿部)、心拍数(胸部誘導)、負担感(Borg scale を使用)を計測した。 筋電図の結果より、男性と比較して女性では全ての作業において、肩部の負担が高いこと、持ち上げ作業、運搬作業において上腕部の負担が高いことが明らかになった。また、同じ作業において、背部の負担が高くなる傾向が認められた。心拍数については男女間に作業負荷による有意差は認められなかった。負担感は移動作業以外で女性の方が有意に高いことが明らかになった。 全ての作業において女性の方が肩部の筋負担が高くなった理由の一つとして、女性は男性よりも身長が低いため、箱を台上に置く際や箱を台上から降ろすために把持する際に、肩部を男性よりも挙上させる姿勢となっていることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究目的は単独で荷物取り扱い作業を行う際の身体的負担を筋電図、作業姿勢の画像、心拍数、負担感から評価することであった。このうち、画像による作業姿勢の評価については予備実験において画像を測定し確認したところ移動作業、運搬作業等で解析に耐え得る精度の高い画像の撮影が困難であると判断し、評価指標から除外した。この点以外は、概ね、研究目的に沿って順調に実験を遂行することができた。 しかしながら、当該年度の研究では、安全上の配慮から荷物の重量を6kgに設定したが、この重量は女性対象者の多くが比較的負荷が軽く感じられる重量であり、一部の指標を除いて、当初想定したような荷物取り扱い作業における生体負担の性差は顕著に現れなかった。したがって、25年度の研究においては、安全性に十分配慮した上で、男女間の負担の違いを鋭敏に検出できる負荷(荷物の重量、作業時間等)を再検討し研究を遂行する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は複数で荷物取り扱い作業を行う時の身体的負担における性差を明らかにするために以下の方法で実験を遂行する。 対象者は20歳代の男性および女性各10名程度とする。参加条件は平成24年度と同様とする。男性群および女性群それぞれの中で身長差5cm以内の範囲で2人1組のペアを作る。運搬する箱の側面に持ち手を設け、持ち上げ作業、持ち下げ作業、運搬作業下を2名で行ってもらう。測定指標・実験手順は概ね24年度と同様とするが、箱の寸法、重量、作業時間等については予備実験を行い再検討した上で決定する。 平成26年度は荷物取り扱い作業時の身体的負担に関する過去の研究についてメタアナラシスを行い、複数の研究結果を集約する。平成24、25年度の実験結果とメタアナラシスの結果とを比較・検討し、研究を総括する結論を導き出すために以下の方法で文献調査・分析を実施する。 まず、文献・データの収集を行う。インターネット上に公開されているデータベースを用い、荷物取り扱い作業に関連したキーワードをを検索語として検索を行う。抽出された論文を精査し、本研究と関連性の強い論文を分析の対象とする。次に対象とする論文にメタアナラシスを適用し、荷物取り扱い作業の種類別に身体的負担の評価指標について研究結果を統合し、まとめ値を算出する。その値に基づいて過去の研究で得られている知見の全体的な傾向を把握し、本研究で得られた結果との相違点を比較・検討する。 26年度は3年間の研究結果を総括し、荷物取り扱い作業について、我が国の就労女性の形態的・生理的特性に適合する作業要件を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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