2013 Fiscal Year Research-status Report
広域連携による産業集積地域の事業継続計画とイノベーション創出に関する実証研究
Project/Area Number |
24510223
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小浦方 格 新潟大学, 産学地域連携推進機構, 准教授 (30401772)
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Keywords | 地域間連携 / 地域イノベーション / 産学連携 / 相互支援協定 / 地域産業構造 / 減災 |
Research Abstract |
経済センサス、工業統計、国勢調査等の統計データを用い、抽出した項目に主成分分析を適用し、さらに得られた主成分得点の変動パターンから相互相関係数により2地域間の産業類似性を求めた。特に製造業に経済を大きく依存する各地域において、遠隔地同士であっても似た産業構造を有する場合には、非常時における早期経済活動の復旧に地域間相互支援の枠組みが大きな役割を果たしうると考えられる(結果は学術論文として掲載予定)。このように、客観的な手法による好適な地域間パートーナーシップの形成可能性は示唆できたものの、距離の壁は連携主体となる企業経営者、自治体、ほか商工会議所等の公的支援機関にとって乗り越えることは容易ではない。これまでに実施した各企業、自治体等への聞き取り調査によっても、さらには企業グループ同士の「超域」連携に関する事例調査においても、いわゆる「お互い様BCP」に関して必ずしも積極的、肯定的な結果は得られていない。 一方、本研究のもう一つの側面には、「似て非なる地域同士」の平時からの連携が、これまでに得難かった技術や情報、知識の面的交流を促し、言わば超域イノベーションへの発展につながる可能性を検証することにある。新潟県内の中小企業経営者らに実施した聞き取り調査によれば、イノベーション探索のための地域間連携に対しては大いに関心を示すことが明らかとなりつつある。 しかしながら、県境を越えての連携、中間支援機能(機関)の介在、大学等高等教育研究機関の関与、短期的連携テーマ設定の要否、継続連携のための長期ビジョンの適否など、地域間連携の成否に寄与する要因は判然としない。今後は、あるケースを試行することにより、これらの要因を精査し、さらに「超域クラスター」成立への一般化を模索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初には、小千谷市を主と考え、同市と県外(特に長野県)地域との連携可能性を考慮していたが、上記のように県境を越えての地域間連携には種々の困難さが観察される。同じ新潟県内にあって、小千谷市とは隣接しない燕市は古くから金属加工の集積地として知られる。燕市と小千谷市は、既に個別の企業同市のビジネスは少なからずあるものの、各企業、あるいは産業グループが渾然一体となることにより期待される知の外部性を期待できるには至っていない。これまで、燕市の製造業中小企業の中でもリーダー的な存在である数社の経営者からは、小千谷市との産業連携に対して大きな関心を示されており、定期的なグループ間交流への参加にも前向きな意思表示を得ている。小千谷市内の中核企業数社からも、本研究で提案する地域間連携への取り組みについてはその趣旨を理解されていることから、ケーススタディとしての具体的な連携体制構築への準備は概ね整ったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
具体的には、小千谷鉄工電子協同組合の若手経営者グループと、燕商工会議所工業部会・正副会長らが参画する「地域間ものづくりネットワーク研究会(仮称)」を立ち上げ、従来は疎であった両地域間の連携濃密化を図る。そのために、相互事業所訪問や共通課題探索、合同研究会をシステマティックに実施する。これらの事業実施前後には、各参加企業に対して聞き取り、あるいはアンケート調査を実施することで、連携形態や相手先地域への期待または憂慮、グループ同士や地域間で連携することに対して考えられるメリット、デメリットを抽出する。同時に、長野県の某地域との連携可能性について調査を継続し、研究期間内において多地域間ネットワークへの発展性とそのメリット、デメリットをも考慮する。ただし、これらグループ同士で連携することは、ともすると参画各企業同士による受注の奪い合いとなりうることも懸念される等、結果として地域間ネットワークは必ずしも成功するとは限らない。そもそもイノベーションには開かれたシステム、ネットワークの広域性が重要な要因であるはずであるが、本研究計画が順調に推移しないとなれば、少なくとも地方都市における地域イノベーションの限界を自ずと示すことになると言える。その場合には、地域イノベーション創出のボトルネックを抽出する事例としてのケーススタディと捉え、将来の地域政策への示唆としたい。
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Research Products
(3 results)