2013 Fiscal Year Research-status Report
分布型光ファイバひずみ計測の高性能化についての研究
Project/Area Number |
24510225
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
成瀬 央 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60402690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立田 光廣 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (30282445)
三島 直生 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30335145)
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Keywords | 光ファイバ / ひずみ計測 / ブリルアンゲインスペクトル / 不均一ひずみ分布 / モデル / 円環 |
Research Abstract |
光ファイバ内で発生するブリルアンゲインスペクトル(以下BGSと略す)の周波数シフトひずみ依存性に基づく光ファイバひずみ計測は、長距離・分布計測が可能であり、インフラ設備や構造物の変状検出のためモニタリングシステムへの応用が期待されている。このシステムでは、センサとして設置された光ファイバのひずみが計測される。本研究の目的は、このような光ファイバひずみ計測の性能をソフト、ハードの両面から向上させることである。本年度は、昨年度(平成24年度)の研究を発展させるとともに、新たな課題に取り組んだ。 空間的不均一ひずみ分布下の光ファイバで生じるBGSのモデル化の研究は前者に含まれ、円環など不均一ひずみ分布が形成される実際の構造物に応用する際の重要な技術課題の一つとなっている。直径2m、厚さ47mmの円環に対し、15mmまでの直径変化を与えながら円環のさまざまな位置でBGSを観測した。観測されたBGSとモデルとがよく一致すること、このモデルを用いて荷重点の直径変化を最大誤差1.6mmで計測できることを実験で示した。またシミュレーションによって、直交する2方向荷重下の円環の直径変化計測誤差の特性も明らかにした。前者のもう一つの課題であるシステムの高性能化を進める中で、光源からの連続光をパルス化する際にパルス光パワーがその幅に依存していることがわかった。これを補正するためのデバイスの追加や計測アルゴリズムの変更を行った。加えて、中間周波数アンプを追加し、ブリルアン散乱光をデジタルオシロスコープで観測できる見通しを得た。 後者の研究については、空間的不均一ひずみ分布下のBGSに対する形状解析を、時間的に変動する動的不均一ひずみ分布下のBGS形状の解析に適用し、この場合のBGS形状をモデル化した。このモデルを用いて、正弦的に時間変化する動的ひずみの最大振幅と中心を求める方法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直径方向に荷重が作用している円環には、その円周上に正弦波状ひずみ分布が形成される。本年度は、円環に作用する荷重、円周上の位置を変えながらBGSを観測し、それが昨年度考案したBGSモデルとよく一致することを確認した。これにより、さまざまな条件の下でBGSモデルの妥当性が明らかになった。また、観測されたBGSから、荷重作用点における直径変化が精度良く計測できることも実験的に確認した。これらの成果は、研究を進めている円環ひずみ分布計測方法の前提となるものである。 また、上記モデルを用いた円環のひずみ分布計測における計算アルゴリズムを見直し、その効果を調べた。その結果、BGS観測区間のオーバーラップが大きいほど得られるひずみ分布の精度が高くなることが明らかになった。また、モデルのパラメータ数を増やしたところ、ひずみの計測精度向上したものの得られたひずみがあてはめ計算の初期値に強く依存するようになり、さらなる検討が必要であることもわかった。 空間的不均一ひずみ分布下のBGSの形状解析方法を用いて、時間的不均一ひずみ分布下のBGS形状を解析しそのモデル化も行った。ひずみの時間的変化がわかればこのモデルを用いてBGSを求めることができ、逆に観測されたBGSからひずみの情報を取り出せる見込みを得た。 さらに昨年度構築したシステムに中間周波数増幅器を付加し、光ファイバ内で発生したブリルアン散乱光をデジタルオシロスコープで観測できるようにした。実験中に、光信号を電気信号に変換するキーデバイスであるダブルバランスフォトダイオードを破損してしまった。この原因解明と修理に時間を要し、BGSの分布観測、そしてひずみの分布計測が可能なシステムにまでは拡張できなかった。 上述したように、課題によって達成度に多少の違いはあるものの、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
円環円周に生じる空間的不均一分布である正弦波状ひずみ分布のモデルに関する研究は、これまでの研究によって妥当性が確認されたので本年度まで一区切りとし、今後はこのモデルを用いた円環のひずみ分布計測方法の開発を進める。前年度、本計測方法の計算アルゴリズムを改良したが、それでも急峻なひずみ変化部分では計測精度の低下が見られた。そこで、ひずみ分布やBGS観測値をより反映するようにモデルのパラメータを変更する、モデルの観測BGSへのあてはめる計算を変更(パラメータの変化に対する評価値の変化情報を利用)するなど、モデル自身の見直しと計算方法の改良を行い、さらなるひずみ計測精度向上を目指す。 時間的に変化する不均一ひずみ分布下のBGS形状についての検討では、正弦的に時間変化する動的ひずみだけでなくさまざまな他のひずみについても解析を行うとともに、センサ用光ファイバに任意の時間的不均一ひずみ分布を精度よく与えることができる新しい実験システムを構築し、モデルの妥当性を実験で確認する。まずは、昨年度検討した正弦的に時間変化するひずみに対するモデルの妥当性の確認から行う予定である。また、シミュレーションによっても計測特性を評価する。 昨年度から構築しているひずみ分布計測システムの研究を進め、光ファイバの長さ方向にBGSさらにはひずみを分布観測できるシステムに発展させる。具体的には、これまでのシステムにローパスフィルタを付加して、周波数と光ファイバ上の位置とをパラメータとしてBGSを分布観測できる構成とし、この観測を実現するために、システム全体を自動的に動作制御するプログラムや観測結果からひずみを求めるプログラムを作り上げる。そして、構築したシステムの基本的計測特性を調べる。また、異なる長さのパルス光を用いてBGSを分布観測し、これによるひずみ計測性能向上効果を調べる。
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