2014 Fiscal Year Research-status Report
分布型光ファイバひずみ計測の高性能化についての研究
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24510225
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
成瀬 央 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60402690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立田 光廣 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (30282445)
三島 直生 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30335145)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光ファイバ / ひずみ計測 / ブリルアンゲインスペクトル / 形状解析 / 時間的線形ひずみ / 観測区間長 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフラ設備や構造物に生じた変状を検出するための技術は、安心で安全な社会に向け、重要なものとなってきている。その技術の一つに、光ファイバをセンサに用いたひずみ計測技術がある。この技術はひずみの長距離・分布計測が可能であり、光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光スペクトルすなわちブリルアンゲインスペクトル(以下BGSと略す)がひずみに比例して周波数シフトする現象を利用している。本研究の目的は、ひずみ計測のもととなるBGSの観測技術の向上にある。本年度は、これまでの2年間の研究を発展させるとともに、新たな課題に取り組んだ。その主な研究実績は以下のとおりである。 一般的に、構造物には空間的また時間的に変化する不均一なひずみが生じる。そこで、時間的不均一ひずみの典型例である(時間的線形ひずみ)を取り上げ、このひずみ下の光ファイバで生じるBGSの形状変形を、理論と実験の両面から検討した。まず、これまでの研究によってその妥当性を明らかにしてきた空間的不均一ひずみ下のBGS形状解析と同様にして、本ひずみに対するBGS形状を導出した。次に、実際に時間的線形ひずみが形成されている光ファイバのBGSを観測した。導出されたBGSと観測されたBGSの形状はよく一致することを確認した。これにより一例ではあるが、時間的不均一ひずみ下のBGSの形状変形に対する解析の妥当性を明らかにすることができた。 これまで構築してきたブリルアン散乱光パワー観測システムに、新たなハードウェアやそれらの制御用に開発したソフトウェアを追加した。それにより、BGSが分布観測できるシステムに発展させた。このシステムを用いて、幅が異なるパルス光を別々に光ファイバに入射し、それらのパルス光で分布観測されたBGSの差分を用いることによって、BGS観測区間長を短くすることができる。実験によって、この基本的なBGS観測特性を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、時間的不均一ひずみによるBGS形状の解析について、理論的かつ実験的に研究を進めた。申請段階の研究計画では、片端固定真直梁の自由振動で生じる、正弦波状に時間変化するひずみを検討例としていたが、それを、理論的に解析解が得られる時間的線形ひずみに変更して、BGS形状の解析、導出を行った。導出されたBGS形状を与える関数において観測時間を観測区間で置き換えると、置き換えられた関数は空間的線形ひずみ下のBGS形状を与える関数に一致することを明らかにした。この時間と空間のBGS形状変形への影響の類似性に着目すると、空間的不均一ひずみ下のBGS形状についての研究を基に、時間的不均一ひずみ下のBGSの形状やひずみ計測誤差の特性を推定することができる。時間的線形ひずみの場合、ひずみ変化が大きくなるにつれてBGS形状は平坦化し、ひずみ計測誤差が大きくなる。 また、幅が異なるパルス光を用いたBGS観測区間長短縮については、幅50と60 nsの(観測区間長5と6 mを与える)2つのパルス光を入射し、それらによって観測されたBGSや両者の差分BGSの特性を調べた。異なる光ファイバを融着接続することによってひずみが擬似的にステップ状に変化する場所をつくり、そこでのBGSのステップ応答を調べた。BGS観測のためのフィルタ帯域が広くなるほど、個々の周波数で観測されたBGSの値は光ファイバに沿ってステップ的に立ち上がるのに対し、周波数軸では観測されたBGSは広がった。幅10 nsの単一パルス光のBGSより差分BGSの方が、信号であるBGSの大きさは大きく、スペクトルの広がりは小さかった。ひずみはBGSの広がりに比例し、信号対雑音比の1/4乗に逆比例することから、性能向上が見込めることがわかった。 このようなことから、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も、昨年度の課題に引き続き取り組む。時間的不均一ひずみ下のBGS形状変形については別の例として、時間的に正弦波状に変化するひずみ(時間的正弦波状ひずみ)を取り上げ、このひずみが生じている光ファイバのBGSの形状を調べる。まず、理論的解析に基づく数値計算によって時間的正弦波状ひずみ下のBGSの形状を求めるとともに、昨年度構築したシステムを光ファイバにこのひずみが形成されるように変更し、BGSの形状を観測する。そして、この場合についてもBGS形状の解析が妥当であることを確認する。さらに本研究の結果を、これまでの研究によって明らかにされている空間的正弦波状ひずみ下のBGSの形状と比較し、時間的、空間的不均一ひずみのBGS形状の類似性についてさらなる検討を行う。 今年度構築したBGS観測システムでは、周波数差が11 GHz程度の2つの光(入射光と、それから11 GHz程度離れた、光ファイバから戻ってきたブリルアン散乱光)が合波され、それが電気信号に変換される。そして、この電気信号に含まれる、上記の高周波数帯域にあるBGSが観測される。本システムで観測されたBGSには、大きな雑音成分が含まれていた。この雑音低減のためにはBGSの観測回数を相当増やす必要があり、時間観測が非常に長くなる問題がでてきた。その克服のために今年度は、光源からの出射光をパルス化する際に同時に単側波帯搬送波抑圧変調を行い、BGS観測に必要な2つの光の周波数差を低減することを検討する。このような構成については本研究申請時には想定していなかったが、自助努力によって費用を捻出し、装置の構築やそれを用いた研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
物品の購入にあたっての購入価格値引き交渉などにより、実際に使用した額が予定していた使用額より少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用予定額と実使用額との差額を、次年度の研究における物品購入に使用することを計画している。
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