2013 Fiscal Year Research-status Report
量子化学計算による理論予測に基づくテロ爆発物の高感度で網羅的な検知
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24510227
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今坂 智子 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教務職員 (90193721)
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Keywords | 危機管理 / 爆発物検知 / 理論計算 / 超短パルスレーザー |
Research Abstract |
1.爆発物の励起エネルギーとイオン化エネルギーの量子化学計算による予測・・爆発物TNT, RDX, HMTD, PETN, HMX, TATPに関して、TD-DFT法により第1~40励起状態までを求め、振動子強度と垂直吸収エネルギーを0.333 eVの半値半幅を持った一連のガウスピークに適合させて和をとりUV-Visスペクトルを求めた。すでに求めたイオン化エネルギーと合わせて、余剰エネルギーや吸収ピークの大きさも考慮して効率の良いイオン化が期待できるレーザー波長を予測することができた。また、精度向上と比較のため、diffuse関数も含めたさらに大きな基底関数(aug-cc-pVTZ)で同様の計算をTATPに対して行った。また、爆発物と同様にテロに利用される神経ガスであるサリン、ソマン、VX、タブン、マスタードガスとその合成副産物や代謝物等15種類の化合物についてもB3LYP/cc-pVDZ, B3LYP/cc-pVTZ, wB97XD/cc-pVTZ(wB97XDは長距離相互作用も考慮した方法)でUV-Visスペクトルの予測を行い、1色か2色か、1光子か2光子か、共鳴か非共鳴かなどの効率の良いイオン化についての知見を得た。 2.超短パルスレーザーを用いる質量分析・・TATP、HMTD、TNT、RDX、PETN等の爆発物をガスクロマトグラフ/レーザーイオン化質量分析計により分析した。超短パルスレーザーの波長を267, 241, 219 nmに変化させて測定したところ、TATPとHMTDは2光子エネルギーがイオン化エネルギー以上になると分子イオンが観測された。また、TNTは1光子エネルギーが共鳴励起と一致するところで分子イオンが増強された。一方、RDXやPETNは分子イオンが観測されず、フラグメント信号も小さかった。これらは理論から予測される結果とよく一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
爆発物や神経ガス類の励起エネルギー予測を進展させ、UV-Visスペクトルを求め、レーザー波長などのイオン化条件を、さらに詳細に予測することができた。 超短パルスレーザーを用いるガスクロマトグラフ/多光子イオン化質量分析については、連携研究者や研究協力者が開発中の超短パルスレーザーを光源とする装置を用いた測定を引き続き行った。よりパルス幅の短いレーザーの測定による分子イオンピークの増大を目指した研究も理論と実測の両方から進めている。それらの成果はAppl. Physics B: Lasers and OpticsやOpt. Commun.に掲載され、4th AOMSC and 10th TSMS Annual Conference (Taipei)やASIANALYSIS XII (Fukuoka)およびthe 44th Winter Colloquim on the Physics of Quantum Electronics (Snowbird)などの学会で発表された。
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Strategy for Future Research Activity |
爆発物や神経ガスおよび代謝生成物の励起エネルギーやイオン化エネルギーに関する計算については進めていく予定である。超短パルスレーザーを用いる質量分析の測定については、いくつかの爆発物や神経ガス等で行う予定である。また、引き続きパルス幅測定に関する研究も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
費目別収支状況等「次年度使用額(B-A)」が「0」より大きい理由としては、国際会議による外国への旅費や、計算機使用料が最初に見積もられた額より少なかったことなどが挙げられる。 翌年度分の使用計画としては、当初予定していたものに加え、国際会議や国内の学会へのより多くの参加を加える予定であり、実験用品やデータ処理、成果発表、アウトリーチ活動などをより充実させる費用に充てたい。
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Research Products
(7 results)