2012 Fiscal Year Research-status Report
水素爆発予知のための包括的反応モデルの構築と高圧化学反応追跡法の確立
Project/Area Number |
24510232
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
高橋 和夫 上智大学, 理工学部, 准教授 (10241019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久世 信彦 上智大学, 理工学部, 准教授 (80286757)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水素爆発 / 水素着火 / 酸水素反応モデル / 高圧衝撃波管 / 高圧着火特性 / 着火誘導期 / 急速圧縮機 |
Research Abstract |
水素は石油や天然ガス等の化石燃料に比べて質量あたりのエネルギー密度が非常に高く,地球温暖化の原因物質である二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーとして注目されている。将来的には水素が二次エネルギー源の主役となる可能性は十分に考えられるが,そのためには高圧縮充填した高圧水素を貯蔵・運搬する際の爆発・火災に対する安全対策が施されなくてはならない。また,東日本大震災に伴い福島第一原発で起こった水素爆発は,原発事故被害を重篤化させた。このような水素爆発による事故を未然に防止するためには,爆発条件を定量的に予測しなくてはならない。このような背景のもと,本研究の最終目的は水素の高圧爆発(着火)限界を正確に予測することのできる包括的な酸水素燃焼反応モデルを構築することにある。 研究初年度にあたる平成24年度は,まず水素の高圧着火実験を行い,現行の反応モデルの問題点を洗い出した。高圧衝撃波管を用いて,全圧が2atm(低圧),25atm(中圧),50atm(高圧)において着火誘導期を測定し,各条件において既存の酸水素燃焼反応モデルの妥当性を検討した。その結果,水素が比較的薄い条件では,現行の反応モデルは高圧でも実測をよく再現できることがわかった。しかしながら,実際の事故で重要となる高圧かつ水素が濃い条件においては,現行反応モデルは着火誘導期の実験値を大幅に過大評価してしまい,事故の定量的予測に応用できないことがわかった。詳しく解析した結果,上述した高H2濃度・高圧条件におけるこの不一致は,単に現行反応モデルの不適合性だけでなく,実験装置として用いた高圧衝撃波管の流体力学的非理想性に起因する誤差も含まれていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度にあたる平成24年度の主な達成目標は,水素の高圧着火実験を行って現行の酸水素燃焼反応モデルの問題点を把握することであり,高圧衝撃波管を用いて当初の計画通り研究を実施した。その結果,高圧かつ水素が濃い条件においては,現行反応モデルは着火誘導期の実験値を大幅に過大評価してしまい,事故の定量的予測に応用できないことがわかった。 本来ならば,反応モデルを最適化してこの不一致を改善し,包括的反応モデルの構築を目指す。しかしながら,今回の実験結果について詳しく解析したところ,上述の不一致はただ単に反応モデルの不適合性によるものだけでなく,高圧衝撃波管内の流体力学的非理想性に起因する誤差も含んでいることが示唆された。そこで,反応モデルの妥当性と実験誤差とを切り分けるため,異なった実験手法を用いた再検証が必要となり,次年度も現行反応モデルの妥当性の検討を継続して行うことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したとおり,高圧衝撃波管とは異なる実験手法を用いて水素の高圧着火特性を再評価する必要性が生じた。そこで研究2年目にあたる平成25年度は,当初の計画を変更して,衝撃波管と並んで着火研究に欠かせない代表的装置である急速圧縮機を新たに製作し,この装置を用いて反応モデルの再検証を行う。勿論,高圧衝撃波管と同様,急速圧縮機にも装置特有の誤差要因が伴うが,その誤差内容は高圧衝撃波管と異なる。したがって,同じ実験条件で2つの実験装置を用いて測定することにより,反応モデルの不確定性と実験誤差とを切り分けることができる。 このようなダブル実験の結果として得られた『真の反応モデルの問題点』を把握した上で,包括的反応モデル構築に向けての最適化を行ってゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度後半の時点で急速圧縮機(反応部)が急遽必要であると見込まれたため,同年度に予定していた素反応追跡用真空紫外分光器の購入を見合わせた。この未執行予算に平成25年度分研究費の一部を合算し,高圧急速圧縮機(反応部)の設計・製作費用に充てる。尚,今回購入を見合わせた素反応追跡用真空紫外分光器は,現在別の目的で使用している研究室既存の装置を流用する。 その他に,国際研究協力関係にあるドイツのAachen工科大学およびDuisburg-Essen大学に大学院生を派遣(3ヶ月程度)するための費用を支出する。
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Research Products
(12 results)