2012 Fiscal Year Research-status Report
災害時における人間の動作を精密に考慮可能な集団避難行動シミュレーションの開発
Project/Area Number |
24510234
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
柿崎 隆夫 日本大学, 工学部, 教授 (10586556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 央 日本大学, 工学部, 助教 (50547825)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大規模避難シミュレーション / デジタルヒューマン |
Research Abstract |
本申請課題は,大規模災害時における避難を確実にするため,集団避難行動の高精度な3次元シミュレーション手法の開発を目的としている.このために建物から避難する健常成人,子供および高齢者や負傷者などからなる混合避難モデルの開発(平成24年度),空港における大規模災害を想定した集団避難シミュレーションの開発(平成25年度以降)の研究を計画している. 平成24年度の研究においては当初の計画通り,混合避難モデルの開発およびそれの集団避難動作モデルへの応用を実施した.具体的にはデジタルヒューマンモデル作成ソフトウェア CAS-Station を用い,健常成人だけで無く,負傷者およびそれの搬送者を含んだ階段昇降時の避難動作シミュレーションを構築した.そのシミュレーション結果から混合避難時の時間遅れや,負傷者や搬送者の避難動作による健常成人への影響などを考察した. まず,混合避難モデルの構築のため,デジタルヒューマンモデルに適用する避難動作のパラメータを同定した.具体的には階段昇降および平地移動の健常成人とその他の状態での時間比率をパラメータとし,実地での計測実験を通して同定した.ここで計測対象を脚部負傷時,脚部負傷(松葉杖移動)時,負傷者背負い搬送,負傷者協同搬送(左右),負傷者協同搬送(前後)などを対象とした.なお,これらの搬送状態などは消防庁のガイドラインを参考とした. 計測実験により得た動作に基づきデジタルヒューマンモデルを構築し,その移動へ同定したパラメータを適用したシミュレーションを作成した.シミュレーションは階段および平地での移動が含まれる,踊り場が複数有る階段を対象とし,その昇降運動動作の解析,考察をした.想定されるとおり,健常成人と負傷者協同搬送などが複合されると,移動速度の遅い搬送者などがボトルネックとなり,全体の避難時間が延長されることが確認出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題実施初年度である平成24年度は,研究計画のとおり実施されており,順調に進展していると言える.具体的には計画していた建物から避難する健常成人,子供および高齢者や負傷者からなる混合避難モデルの構築を実現した.実際には負傷者やその搬送者の避難動作モデルを実測に基づくパラメータを用いて作成した.子供や高齢者の避難動作に関しては健常成人の四肢のパラメータを変更する事により実現可能であることが分かっており,これと複合することにより混合避難モデルを構築可能となる. また,これらの混合避難モデルを用いて階段における避難動作シミュレーションを実現した.これについても計画通り実施されている.具体的には負傷者を介助および搬送する健常成人のモデルや負傷者の避難動作モデルを健常成人モデルと統合的に用いる事により混合避難動作シミュレーションを実現した.当初の予定通り,健常成人のみのシミュレーションと比較することにより,狭隈部や階段部などにおいて負傷者やそれを介助および搬送する者の後に健常成人の渋滞が発生するという問題を確認した. これらの実施結果により,平成25年度以降取り組んでいく空港における大規模災害や震災などを想定した大規模集団避難シミュレーションの開発が可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の実施結果である,混合避難シミュレーションを拡張し,平成25年度は空港における大規模災害を想定した集団避難シミュレーションの開発を行う.また,混合避難モデルのパラメータ同定の継続と,混合避難シミュレーションと実際の避難との整合性の検証をする. まず,平成24年度の混合避難モデルにおいて動的オブジェクトを考慮する.具体的には空港における大規模災害時において,避難者の生存に関わる避難者以外の要素である,救助者や消防・救急車両およびトリアージ施設などをモデル化する.また,混合避難シミュレーションにおいては避難動作のみを考慮していたが,これに脱出や処置のモデルを導入する.これらにより空港における大規模災害のシミュレーションプラットフォームを構築する. 次に,上記の動的オブジェクトのモデルパラメータ同定のための計測実験だけでなく,平成24年度に同定したパラメータ同定を継続し,より精度の高いシミュレーションモデルの構築を実現する.これらのパラメータを簡単なシミュレーションに適用し,実際の実験と照合することにより整合性を議論する. これらのシミュレーションプラットフォームおよびパラメータを用いて,空港における大規模避難シミュレーションを開発,実際に大規模災害を想定したシミュレーションを行う.また,部分的実験検証をとおして,シミュレーションの妥当性を評価する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大規模避難シミュレーション作成にあたり,モデル製作のために3Dモデリングソフト(SiltoolsおよびCAS-Station)のライセンスを購入する必要がある.また,モデルを元にした大規模シミュレーションインフラモデルの作成およびシミュレーション構築を外部へ委託するために研究費を支払う.また,モデル作成のための動作記録や大規模避難シミュレーションの検証実験記録のためのビデオカメラおよびその周辺機器の購入が必要である. 旅費などに関しては,昨年度成果の国際学会(ASME DETCなどを予定)での発表や,国内の学会(機械学会年次大会など)での発表のための旅費および投稿料に使用する.また,モデルおよびシミュレーション開発委託企業との打合せのためにも用いる.
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Research Products
(2 results)