2013 Fiscal Year Research-status Report
災害時における人間の動作を精密に考慮可能な集団避難行動シミュレーションの開発
Project/Area Number |
24510234
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
柿崎 隆夫 日本大学, 工学部, 教授 (10586556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 央 日本大学, 工学部, 助教 (50547825)
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Keywords | 避難シミュレーション / 減災 / デジタルヒューマン / 津波 / 航空機事故 / 災害 / 3次元シミュレーション |
Research Abstract |
当該年度に実施した研究成果: 具体的研究内容: 研究計画に基づき空港における大規模災害を想定した集団避難シミュレーションの開発およびそれを実験検証した.まず前年度までに構築した3次元建物から避難する健常成人,子供および高齢者,さらには負傷者を搬送する支援者モデル等からなる混合避難モデル,それを統合し集団の一部として扱う集団的な混合避難シミュレーション手法を用いて,災害現場での緊急車両等,避難者以外の移動するオブジェクトとの安全な連携を考慮した避難動作モデルとそのシミュレーションへと発展させるとともに,これを空港における大規模避難シミュレーションとして統合した.この妥当性を確認するため,負傷者搬送含む混合避難および航空機からの集団避難動作について,多数の人間の参加による大規模な実証実験を実施し,これまでにない新たな知見を多数得るとともに,その主な結果は本研究で開発したシミュレーション結果とよく一致することを確認した. 意義および重要性: 東日本大震災以後,首都直下地震,南海トラフ地震とそれに伴う東海および西日本沿岸への津波襲来からの避難など,災害避難に関する研究および技術の重要性はますます大きくなっている.しかし精密な人間モデルを用いた精緻なシミュレーション手法は国内外でも未だ十分に活用されてはいない.ここで開発した避難者モデル,統合シミュレーションおよび実験的検証結果は,頻発する火災,地震のほか,今期課題であった航空機事故,さらには大津波からの避難など,今後もっとも重要な課題である減災に大きな効果を発揮すると確信している.実際,原子炉安全を対象とする海外の研究者からも本研究は注目されている.以上のように本研究の意義は極めて大であり,今後より一層発展させていくべきものと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
評価の理由: 本研究では大規模災害時における集団避難行動の高精度な3次元シミュレーション手法,具体的には健常者,高齢者,子供などに加え,身体不自由者とその介護者・搬送者を含む精密なデジタル人間による動作および避難行動モデルを開発し,これを人,機械,施設などが混合する空港での航空機火災からの集団避難行動シミュレーションにより検証することで,今後想定される大規模災害の高精度な避難シミュレーションに広くかつ簡便に提供可能な技術の開発を目的とした.上記の目的はこれまでにほぼ達成された.さらにこの過程で,3.11で浮上した減災の考え方に基づく津波避難タワーの建設が進んだことから,このための避難シミュレーションと実験的検証を重視して,近い将来に必須となるこの課題も本研究期間に新たに織り込むことができた.以上のことから,研究の目的の達成度としては,当初計画以上の進捗と判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策: 災害避難時におけるパニックないしは類似現象を伴う群衆行動のシミュレーションについて高精度化する.この問題は避難シミュレーションにおいて常に問われる命題であるが,現在まで確実な手法は開発されてない.しかしパニック要因を限定的に特定し,シミュレーションに導入することは可能と考えている. 課題解決へのアプローチ: 集団行動の変化に及ぼす因子は数多いそこでまず因子それぞれについて過去の災害データを参考とした信頼度を付与し,シミュレーションの各プロセスで考慮する信頼度付シミュレーション法を開発することが有効である.なお,これまで開発した方法は一程度の統制を前提としており,避難訓練の代替として有効性は明らかである.換言すれば災害避難における最良値を与えるもので,実際の避難ではシミュレーションより厳しい結果となる可能性,すなわち警告を与える意味で重要である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際会議だけでなく,国内で関連する研究者との情報交換のための会議参加も幾つか予定していたが,公務等と重なり,そのすべてを実現することが不可能であった.加えて,連携する研究者を招聘し,実験上の詳細なプロセス点検も実施する予定であったが,関係者の体調や都合などにより,予定していた分を実施することができなかった.このほか,避難実験では時間計測の高精度化のため,より精度の高い計時機器の購入を検討したが,予算規模からすると難しいことが判明したことから,断念した.以上の事由により,結果として次年度使用額が生じることになった. まず,関連研究者を招聘しての残課題への対応を議論する場を設ける.また,再度予算を精査したうえで,必要な計時機器の購入を検討する.適当なものがない場合は代替手段をとることとする.国内における災害,防災,減災関連の会議へ積極的に参加し,これまでの成果を発表するとともに,異分野からの意見を頂戴し,次期研究計画の充実へと反映させることとする.このほか,震災データベースに関連するドキュメントなどで入手可能なものがあれば,予算の範囲内で調達し,研究の参照価値を高めることに資することとする.以上により,残額を遺漏なく活用することとする.
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Research Products
(7 results)