2012 Fiscal Year Research-status Report
写実的災害イメージ生成のための実測モデリングによる対話的シミュレーション
Project/Area Number |
24510239
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
安室 喜弘 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (50335478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井村 誠孝 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50343273)
檀 寛成 関西大学, 環境都市工学部, 助教 (30434822)
石垣 泰輔 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (70144392)
西形 達明 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (40121892)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会の防災力 |
Research Abstract |
今年度は,実在の屋外環境の3次元形状を効率的に計測し,物理的な浸水シミュレーションを行うためのオブジェクトとしての地物モデルを生成する手法の開発に取り組んだ.計画に沿って,次の2点について,それぞれ成果が得られた. (i)広域3Dスキャンの数理的プランニング技術:地上用レーザスキャナを効率的に運用して地上構造物の形状計測を行うために,平面図をベースにした従来の計画立案手法の改善と発展を検討した.写真測量によって地物の外形を予めモデル化することで対象構造物と周囲との位置関係を把握し,数理計画法による定式化によって,レーザスキャナで計測を遂行するために必要な,最小・最適視点配置を算出する手法を開発した.比較的小さな規模の地物や狭小部における形状計測については,小型のRGB-Dカメラの利用を検討し,ノートPCやバッテリ,ディスプレイやマウスなどを全て身に着けられる形にまとめ,可搬型システムを開発した.これにより屋内や小型オブジェクトの形状スキャンとポリゴンモデルの生成が可能であることを確認した.また,Web上で利用可能な既存の地図サービスや付随する景観・航空写真を情報ソースとした写真測量によって,得られる建物の簡易モデリングについても,その利用可能性を検討した. (ii) 浸水シミュレーションのための形状モデル生成手法:本研究にて積極的に採用している粒子法による浸水のシミュレーションにおいて,水と干渉するオブジェクトの実測データからのモデル化が重要な事前プロセスとなる.まず,CPUでの実行が可能な粒子流体シミュレーションのプラットフォームを構築した.次に,レーザスキャナによる3次元点群形状データをボリゴンに変換した形状モデルに対し,表面に固定粒子を分布させる処理を行った.乗用車の形状データを用いて,この固定粒子モデルがシミュレーション用粒子との干渉計算が容易になることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の主眼は,粒子法による浸水シミュレーションの枠組みにおいて,実測形状データに基づいて実在する地物のオブジェクトを生成する手法を開発することである.これは,大規模な地物の形状計測を実施するための計測計画の立案手法の開発と,得られた形状データを粒子法による物理的な浸水挙動シミュレーションに適したモデルへ変換する手法の開発の2点が大きな課題となる.平面図に基づいた従来の計測立案手法では,構造物の高さや計測器(屋外レーザスキャナ)の視野角などを考慮することができないという制約があったが,写真測量による簡易3Dモデルに基づいた枠組みに発展させて問題を解決し,広域構造物を計測する際に手戻りの少ない計画立案方法を開発した.既設の屋外レーザスキャナにより,大学構内の構造物を対象として立案と実測の実験を行い,その効果を確認した.また,形状計測により得られる3次元形状モデルは通常ポリゴン表現によるものであるが,この表面形状を再サンプルし,粒子による形状表現モデルに変換することで,粒子法による流体シミュレーションの枠組みに導入可能な地物モデルを生成した.自動車の形状モデルを例として,この方法を適用し,約4000粒子規模の流体粒子との干渉シミュレーションをCPUによるオフライン処理で実行し,生成したモデルとシミュレーションの計算方法との整合性が高いことを確認した.以上のことから,当初の研究計画における目標を概ね順調に達成しているものと判断する.これらの成果は次年度以降,逐次学会等で報告のよていである. また,当初の計画には特記していなかったが,写真測量をベースとした地物のモデル化方法や,Google社が提供する豊富な地図情報,景観写真をテクスチャとして積極的に利用する方法が,今年度検討できたことも,シミュレーションの外観を高める上で,今後,本研究課題において,大きく寄与するものと期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,前年度の成果で得られた実環境の3次元形状計測とモデル化の技術に基づき,浸水災害シミュレーションをリアルタイムに実施する技術を確立する予定である.当初の予定通り,粒子モデルによる流体シミュレーションの陽解法モジュールをベースとして対話的な浸水被災シミュレーション実時間で実行可能な浸水被災状況のシミュレーションを実現し,その結果を写実的なCGとして表現するアルゴリズムを開発する.昨年度は,CPUによる実装により,自動車1台を対象として試験的に小規模のシミュレーションでモデルの検証を行ったが,今年度はGPU(graphical processing unit)を使った並列化処理の利用により,粒子法シミュレーション規模の拡大を図る.その中で,大域的な浸水予測情報や,個別要素モデルによる地盤変位の予測状況を,当該シミュレーションでの局所境界条件・初期条件として利用する系統的な処理スキームを開発する予定である.これにより,対話的に災害予測の程度を変化させることを可能とし,さらに,もたらされる影響を即時的に可視化するシステムとする筋道を検討する.また,模型による物理実験との比較を行い,シミュレーションの妥当性についても検証する予定である. 初年度の成果については,今年度内にて,複数の国際会議にて数本の論文(投稿2本は採択済み)として報告するほか,国内の学会においても発表する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度構築した計測システム基盤にもとづき,シミュレーションに用いるモデル生成技術の開発と,粒子ベースのシミュレーションシステムの開発を行う.これに必要なプログラム開発環境および,ハードウェア構成を整える.並列計算のプログラミングが可能なnVidia 社製のGPU(graphics processing unit)を搭載したPCやGPUそのものの増設と,多くの3Dデータおよびシミュレーションデータを蓄積・共有する為のPCやストレージ機材を購入する予定である.初年度からの成果として,計測計画手法のアルゴリズムについては,一部前倒しにして成果報告を行ったが,最新の成果と,その他,地物のモデル化手法,シミュレーションとの整合モデルについての国際(欧州・日本)・国内学会(東京など)での発表を行うための旅費等の支出を予定である.
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