2012 Fiscal Year Research-status Report
高性能なスペクトル拡散型電子透かしを防災サイレンに応用した防災無線システムの開発
Project/Area Number |
24510240
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo National College of Technology |
Principal Investigator |
小嶋 徹也 東京工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20293136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉本 定伸 東京工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00321406)
松元 隆博 山口大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10304495)
田中 晶 東京工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20578132)
土居 信数 東京工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80547836)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 防災 / 情報ハイディング / 情報通信工学 / 信号処理 / 系列生成 |
Research Abstract |
研究を開始するにあたり,東日本大震災で被災した自治体である仙台市や岩手県矢巾町,および所属機関が位置する八王子市を訪問し,防災担当者から現行の防災無線システムについてヒアリングを行ない,本研究で開発を行なうシステムの方向性を確認した。 完全相補系列を用いた電子透かし方式を音声信号に応用し,その特性を計算機実験により評価した。具体的には,サイレン音に対して,電子透かし技術により災害の規模や内容に対応した固有のID番号を埋め込む方法と,ステガノグラフィ技術により,災害に関する詳細な情報を文字データとして埋め込む方法について特性を評価し,比較を行なった。また,埋め込み方式については,電子透かしとステガノグラフィの双方において,高速フーリエ変換などを用いて周波数領域へ埋め込む方式と,音圧データに直接埋め込む方式の両方を実装し,評価した。計算機による数値実験の結果,電子透かし,ステガノグラフィの双方において,高速フーリエ変換により周波数領域へ埋め込む方式の優位性が確かめられた。また,ステガノグラフィで大量のデータを埋め込む場合でも,埋め込んだ情報の抽出特性において大きな問題が検出されなかったため,本研究においては,ステガノグラフィ技術を用いて,音声信号の周波数領域へ災害情報を埋め込む方式を最優先で採択することとした。 実環境でスピーカから出力した透かし音声をマイクで採取し,情報の抽出を行う実験もについては,準備にとどまり.詳細な特性検証までは至らなかった。また,携帯端末上で情報を抽出し表示する機能の開発も準備段階に終わった。この2点については,次年度以降の最優先課題として取り組む予定である。実音声での実験を踏まえ,提案方式と相性の良いサイレン音に関する調査も行なう予定であったが,これも今後の課題とする。 計算機実験の特性評価結果については,研究会での口頭発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自治体などへの調査と,提案した方式の計算機実験による特性評価及び比較については,計画通りに達成することができた。また,災害情報を抽出したうえでテレビのスイッチを入れることができるよう,リモコンを改良する方式については,調査を行ない,次年度以降の開発につなげる準備を行なうことができた。また,当初の研究計画では,ステガノグラフィを用いた場合の特性評価については2年目以降の研究課題としていたが,計算機上の特性評価がすでに終了しており,これについては計画よりも前倒しで進めることができている。 一方,実環境でスピーカから出力した透かし音声から災害情報を抽出した場合の特性評価,およびそれを踏まえての最適なサイレン音に関する調査は,実験環境の構築を行ない,実験の準備を整えるにとどまり,詳細な実験や特性評価は行なうことができなかった。この点については,次年度以降最優先で取り組む予定である。 また,アンドロイド端末等への電子透かし抽出プログラムの実装については,着手はしたが,いまだ開発途上にあり,特性評価には至っていない。これについては,次年度の早い時期に達成できると考えている。 以上のように,計画通りに進んでいる部分と計画よりも前倒しで進んでいる部分がある一方で,計画よりも遅れている要素もある。しかし,大きく研究計画を遅らせる必要があるほど,達成状況が遅れているわけではなく,おおむね順調に研究が遂行されているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の結果を受けて,平成25年度は,アンドロイド端末へのプログラムの実装と特性評価,および実環境でスピーカから出力した音声から災害情報を抽出する場合の特性評価を最優先課題として取り組む。必要に応じて,最適なパラメータを設定したり,ステガノグラフィではなく,電子透かしを用いた場合との比較を行ったうえで,実環境に適した方式を最終決定する。特に抽出誤りが生じる場合は,誤り訂正符号であるLDPC符号等を導入し,透かし情報の抽出誤り率がゼロになることを目指す。 また,ステガノグラフィを用いて文字情報をサイレン音に埋め込んだ場合,具体的にどのような情報を音声信号に埋め込むのか,その内容についても検討を行なう。例えば,災害ポータルサイトのようなものを作成して,そこへのリンク情報を埋め込んだり,高齢者などを対象に,よりわかりやすい情報を伝達できるようなコンテンツの考案も行なう。 災害情報を抽出してテレビのスイッチを入れるためのリモコンの改良については,上記の研究課題の達成状況を鑑みて,可能であれば平成25年度内に開発に着手する。これについては,平成26年度の前半までに開発を行ない,動作試験ができることも目標に当初の計画から若干遅らせることとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上で述べたとおり,提案方式の特性評価実験は,計算機上での数値実験にとどまり,実音声による特性評価実験は十分には行なえていない。実環境での実験を行う上では,数値実験では生じなかった問題が発生することも想定され,それに伴い,方式の改良や最適なパラメータの設定などを行なう必要がある。これに関して,新たに機器を購入するなどの必要はないが,調査のための旅費などが発生することが考えられる。次年度に使用する予定の研究費は,主にこのための調査研究旅費として使用し,平成25年度はこの分の旅費を増額する計画である。 平成25年度は,これに加え,当初の予定通り,リモコンを改良するためのマイコンキット等を物品として購入する。また,ソフトウェアの保守料金,論文投稿料,およびデータの整理補助の謝金などを予定通り請求する予定である。
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Research Products
(8 results)