2012 Fiscal Year Research-status Report
液状化と流体移動:その多様性を実験と無次元数を用いて理解する
Project/Area Number |
24510246
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
隅田 育郎 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (90334747)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 液状化 / 噴砂 / 振動 / 室内実験 / 無次元数 / パラメータ依存性 |
Research Abstract |
水で飽和した地盤は地震等に起因する振動が十分大きくなると液状化し、間隙水圧が上昇した結果、噴砂の形で水が噴出することが知られている。また大規模な噴砂の形として、ある特徴的な間隔を持った泥火山が形成されることも知られている。このような液状化とその帰結の多様性は何が支配しているのだろうか。泥火山のような地形は、火星表面においても見つかっている。重力の異なる惑星において液状化する条件は異なるだろうか。マグマだまりのように結晶とメルトが混在している場においても地震波により液状化が起き、誘発噴火につながる可能性が指摘されている。しかし水と粘性の異なる液体の系の液状化の条件は十分に分かっていない。液状化の模擬実験は、土木工学の分野で多く行われてきた。しかし、実際の土壌を使った実験が多く、振動の加速度、周波数、また構成する土壌の粒径を変えた時に、どのような現象が起きるかについては十分に調べられていない。そこで私達は物理学の視点に立ち、液状化の多様性を無次元パラメータを用いて整理することを目的に研究を行っている。そのために、液体で飽和した浸透率の異なる2層からなる系を鉛直方向に振動させ、加速度、周波数を変えた時の振る舞いを調べることを行った。その結果、加速度・周波数のパラメータスペースで3通りの異なった振る舞いが見られること、また加速度が負の浮力を超過すると噴砂を引き起こす液状化が起きること、その時の特徴的な間隔と線形安定論の結果を組み合わせることにより粉粒体層全部ではなく、一部のみが流動していることが示唆されること、が分かった。これらは、私達の知る限り、過去により実験により実証されたことはなく、新しい知見といえ、液状化現象に新しい視点をもたらすことにつながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私達は上記の問題に答えるために、鉛直振動下における液状化と流体輸送を室内実験により調べる装置を作成した。実験セル(高さ108 mm、幅99 mm、奥行き 22 mm)は水で飽和したガラスビーズ層(上層は粒径0.05 mmの厚さ9.5 mmの層、下層は粒径0.2 mmの厚さ24 mmの層)からなり、ガラスビーズ層の上部も水で満たされている。セルを加速度(振幅、周波数)が可変で鉛直振動する台の上で一定時間振動させ、その振る舞いを高速度カメラで撮影する。セルを加速度1-100 m/s^2、周波数10-40 Hzの範囲で5秒間、振動させた結果、加速度が大きくなるに従い(I) 変化なし、(II) 浸透流のみで間隙流体が上昇する、(III) 火炎構造(レイリー・テイラー型不安定)、の3通りのパターンの現象が起き、これらの場合を加速度-周波数のパラメータスペースで整理した。また最終的に(III)のパターンをとる場合も(I)-(II)のパターンを経過していくことが分かった。またIIIのパターンが起きるためには、慣性力/負の浮力 > 5、かつ振動時間が2秒以上継続することが必要であることが分かった。火炎構造は浸透率の異なる2つの層の境界面に水がたまり、密度不安定が起きる現象である。画像解析により境界不安定の波長、成長速度を求めた。そして、レイリー・テイラー型不安定の線形安定論を適用して、液状化した下層の実効的な厚さを求めたところ、1-10 mm程度と求まった。これは実際の厚さ(24 mm)よりも小さく、下層の一部のみが、液状化して流動化していることを意味する。以上の結果は日本惑星科学会で発表した。本年度は、新しい実験装置をセットアップし、実験、解析を行い、成果を学会で発表できたので、概ね順調に進展していると自己判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
液体の粘性率は液状化現象にどのような影響を与えるであろうか。これはマグマだまりの液状化に関わる重要な問題である。浸透流の速度は液体粘性率に反比例するので不安定の特徴的なタイムスケールが長くなることが予想される。もし、慣性力/粘性力の比も液状化に関与しているのであれば、液状化するために必要な臨界加速度も変わることは予想される。上記が組み合わさった結果は不明である。そこで粘性率の異なる流体として、グリセリン水溶液(最大粘性率が水の1000倍程度)を用いて実験を行う準備を進めているが、密度差が最大20%水よりも大きくなるため、密度差をなるべく一定に保つために、増粘材水溶液を用いることも想定している。実験のタイムスケールが長くなることが予想されるため、インターバル撮影によりカメラ撮影を行うことも想定している。昨年度行った同じ振動条件下で、異なった粘性率の系で実験を行い、結果を無次元数で整理する予定である。粘性率依存性の途中経過は4つの学会(地球惑星科学連合5月、火山学の国際会議IAVCEI:7月、流体力学会9月、アメリカ地球物理学連合大会12月)で発表する予定であり、研究を主体的に進めている大学院生の修士論文としてまとめる。また、修士論文の内容は、査読つき雑誌に投稿するために秋から執筆を開始する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、主として実験用の消耗品(グリセリン、増粘材、ガラスビーズ、ハードディスク)の購入、学会参加経費、主体的に研究を進めている大学院生が本研究に基づき、修士論文をまとめるための、謝金のために研究費を使用する。
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Research Products
(4 results)