2013 Fiscal Year Research-status Report
液状化と流体移動:その多様性を実験と無次元数を用いて理解する
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24510246
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
隅田 育郎 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (90334747)
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Keywords | 液状化 / 噴砂 / 火炎構造 / 地震 / 室内実験 / 粉粒体 / 浸透流 |
Research Abstract |
本年は昨年度構築した鉛直加振による液状化実験装置を駆使して、パラメータを系統的に変えた実験と解析を大学院生が主体的になって進めた。実験は液体に浸された粉粒体の層を鉛直に加振する、というものである。粉粒体の層は上層が細粒、下層が粗粒となっており、上層は上方向に流れる液体にとって浸透率のバリアーとなっている。昨年度の研究から、この系を鉛直加振した時、臨界加速度以上になると、粒サイズの異なる2層の間に水が十分に貯留されて重力不安定が生じ、火炎構造が形成されることが分かっている。今年度は実験をさらに進めて、加振の加速度を2桁、周波数を3桁変え、合計100以上の場合について実験データを得た。そして高解像の画像解析によって液状化に伴って形成される振幅を定量化し、振幅の大きさに応じてレジーム分けを行い、レジームダイアグラムを作成した。その結果、特に振幅が大きい火炎構造が形成されるためには臨界加速度が存在すること、またその加速度が周波数に依存し、100Hz程度において臨界加速度が最小となることを示した。そしてこの臨界加速度とその周波数依存性を加速度、エネルギー、ジャーク(加速度の微分)の3つの物理量が臨界値以上になることで良く説明できることを示した。さらに間隙流体の粘性率が水の15倍の場合について実験を行い、その結果、水の場合に比較してより低周波数の振動下においても火炎構造が出来ることを示した。これは粘性の高い流体の中では、粒子の沈降速度が遅くなるため、液状化状態を維持しやすいためと理解できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は大学院生が1年間、継続して実験、解析を進め、研究は高い達成度に到達した。昨年度は主として周波数100Hz程度で加速度の依存性を調べた。本年度は周波数を変えることにより、特定の周波数帯で液状化に伴う火炎構造の形成が最も効率的に起きることを明確に示した。このように、火炎構造が出来るための振動条件を制約したのは初めてであり、地層に残されている火炎構造から古地震の振動を制約できる可能性を示唆している。さらに粘性率が15倍の場合についてもレジームダイアグラムを作成し、火炎構造が出来る周波数範囲が間隙流体が水の場合よりも広いことを示した。マグマだまりが地震波によって液状化し、誘発噴火を引き起こす可能性は指摘されてきたが、その理解への一助となる結果である。本研究は実験に加えて0.1mmまで分解できる高解像度の画像解析が鍵である。画像解析によりレジームダイアグラムに用いた不安定の振幅ばかりでなく、その成長率、圧密量も測定することが出来ている。以上の結果は国内外の学会で6件発表を行い、高く評価された。発表を行った大学院生は地球惑星科学連合大会固体地球科学セクションで優秀発表賞を受賞した。本成果の一部は国際誌(Progress in Earth and Planetary Science)に投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は2本目の論文を執筆し、物理学の分野の学術雑誌に投稿する。その際に不安定の成長率、圧密量を用いたレジームダイアグラムも作成する。これらの測定量に加えて波長とその時間変化も測定し、粘性流体について構築された線形安定論を適用して理解することを試みる。また流体粘性率が水の15倍の場合の結果の解釈も与える。さらに粒子・液体系の振動応力下におけるレオロジーはレオメータを用いて調べることが可能であり、羽根型スピンドルを用いて測定を行い、鉛直振動下における振る舞いの理解の一助とする。以上の研究成果は、7月末の国際会議(AOGS2014)において発表予定である。また日本語の招待論文(混相流学会誌)も執筆、投稿予定である。本研究では、液状化が100Hzで最も効率的に起きることが分かった。粉粒体の関わる他の現象として地すべりがある。そこで地すべりについても同じく特定の周波数で効率的に起きるかどうかを調べる実験を学生の卒業研究として行う。その際に粒径、流体粘性率(空気、水の場合)を変えた時に、現象がどのように変わるかも系統的に調べる。流体粘性率に対する依存性は地上と海底における地すべりの違いに応用することを想定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は実験、解析の遂行する大学院生のための謝金、米国における学会発表の旅費経費が主な使用用途であった。実験セットアップは昨年度にほぼ完成していたため、備品、消耗品の購入経費が少なくなった。 本年度は、同じ実験装置を使って鉛直振動下における地すべりの実験を進める。新規に実験セルを作成するために物品費(スチロールケース、ガラスビーズ、ビーズ着色費、ハードディスク)を使用する。また研究成果発表のための旅費、実験、解析を行う学生のための謝金を使用する。
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Research Products
(16 results)